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在宅医療における本格的な議論が始まる

 4月12日、中医協総会が開催され、部会・小委員会に属する公益委員の指名等、最適使用推進ガイドラインについて、在宅医療を議題として行われた。その中で在宅医療において出された課題提起と議論を概説する。

 



 これまで厚労省は約6割が「自宅で療養したい」と回答しているなどと、自宅療養を強調するような資料を出していたが、今回は、終末期の療養場所に関する希望として、「自宅で最期まで療養したい」との回答は約1割であり、「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」等回答は様々、「60%以上の国民が、最期まで自宅での療養は困難と考えている」と実態に沿って報告が行われた。

 

在宅医療に係るニーズの特徴

 支援診や支援病の数は近年微減・横ばいだが、一方、支援診以外で訪問診療や往診を行う一般診療所の数は多い。支援診を届出ていない理由は、24時間往診体制が困難との回答が最も多く、負担感が大きいこと、一方、在宅専門医療機関は、わずかに減少していると報告された。参考として、訪問診療料の通知が示され「1人の患者に対して1つの保険医療機関の保険医の指導管理の下に継続的に行われる訪問診療」と規定されているため、連携先の医療機関の医師が訪問診療を行っても、在宅患者訪問診療料は算定できない取扱いとなっていることが指摘された。
 また医療機関での看取り状況資料(H26・10月分)が示され、療養病棟入院基本料の死亡退院割合は約35%であること、緩和ケア病棟入院料の届出医療機関数は年々増加していることなどが報告された。

在宅医療を担う医療機関

 主な原因疾患は、循環器疾患、脳血管疾患、認知症、糖尿病が多く、複数疾患を有する患者が一定程度いた。また、耳鼻科や眼科の疾患に対する訪問診療も行われていた。
 これらを踏まえ、厚労省は、在宅医療を確保・推進するために〇抉膺念奮阿魎泙瓩拭△かりつけ医による在宅医療提供体制△かりつけ医の夜間・時間外の負担軽減に資する、地域の医療機関の連携による救急応需体制かかりつけ医機能を補完するため、複数の診療科の医師が協働して行う訪問診療ご擬圓両態や診療内容、居住形態に応じた効果的・効率的なサービス提供に資する評価のあり方について提起した。

在宅医療を必要とする患者とその内容

 診療側の松原委員は、機能強化型支援診の連携型では、看取り実績をクリアするのは困難とした上で、連携先医療機関は、往診料を算定出来るように要望した。また「24時間体制は1人では無理。いくつかタイアップするとうまくいく」や「支援診以外の診療所は、頑張っているが届出できない現状がある。今以上の評価が必要」と現状の不合理が訴えられた。支払側から「負担感は事実と思うが24時間体制確保は重要」と述べ、要因分析を求めた。また、「高齢化が進んでいるから負担が大きいのは事実だが、チーム対応、グループ診療が重要だ」とし、医師以外を中心に考えることを優先すべきだと反論した。
 来年は医療・介護の同時改定であり、財源ありきの在宅医療には、断固反対する。

診療側意見に支払側が反論

 今回は、在宅医療に関する主な視点(案)が提案された。その中でも在宅医療提供体制の確保として|楼茲亮他陲鯑Г泙┐芯鷆‖寮の確保救急応需体制の確保。また、看取りを含めた在宅医療の充実としてヾ擬圓両態・特性に応じた在宅医療の推進多様な住まい方に応じた在宅医療の推進についてとりあげられた。

 



なりふり構わぬ給付抑制

介護保険法改正案

 

 介護保険関連法等一部改正案(正式名称;地域包括ケアシステムの強化のための介護保険等の一部を改正する法律)が4月18日、衆院本会議で可決された。15年8月からの2割負担導入による介護サービスの利用抑制に関する十分な影響調査もされないまま、来年8月から3割負担が導入される。安倍政権は将来的な利用者負担の拡大を否定しておらず、国民不在の制度改悪による社会保障の後退はこれ以上許されない。

 

1 保険者機能の強化
 厚労省は現在、地域間比較を行うことのできる「地域包括ケア」見える化システムを展開している。全市町村が保険者機能を発揮しやすくなるよう、自立支援・重度化防止に向け取り組む仕組みを制度化する。 
 まず市町村に介護給付費や要介護認定等に関するデータ提供を義務付ける。国は市町村から提供されるデータを集計・分析し、地域間比較が行いやすいように加工する。
 市町村は国から提供されたデータに基づき地域の課題を分析し、介護保険事業計画を策定する。計画には介護予防・重度化防止等の取組と目標を記載する、市町村はリハビリ職と連携して効果的な介護予防を実施するとともに、「要介護状態の維持・改善の度合い」などのアウトカム指標と「地域ケア会議の開催状況」などのプロセス指標の組み合わせによる実績評価を行う。
 国は結果を集約して評価・公表するとともに交付金などの財政的インセンティブを付与する。指標とインセンティブ付与の詳細は平成30年度の予算編成過程で検討される。

2 「介護医療院」の創設
 介護療養病床等の受け皿となる新たな介護保険施設として「介護医療院」を創設する。「日常的な医学管理が必要な重介護者の受け入れ」「看取り・ターミナル」などの機能を受け継ぎ、また「生活施設」としての機能を兼ね備えており、長期療養のために医療と介護を一体的に提供する。
介護保険法上の介護保険施設だが、医療法上は病院ではなく、介護老人保健施設と同様に医療提供施設として位置付けされる。管理者は都道府県の承認を受けた医師。病院または診療所から転換した場合は転換前の名称を継続して使用できる。

 具体的な介護報酬・基準・転換支援策は、社会保障審議会介護給付費分科会等で検討する予定である。なお介護療養病床の経過措置も6年間延長され35年度末までとなる(表1)。(医療療養病床は未定)
 
3 地域共生型サービスの導入
 高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉制度に加え新たに「共生型サービス」を位置づける。介護保険法、社会福祉法、障害者支援法、児童福祉法を改正し、障害福祉サービス事業所や介護保険事業所がそれぞれ別の制度の指定を受けやすくする特例を設ける。対象サービスとしては、ホームヘルプやデイサービス、ショートステイが想定されている。
 これに対して、障害者団体は「複合的なニーズに安上がりな人員体制で対応するもの」との危惧を示し、兼務に伴う過重労働が憂慮されるとしている。
 
4 利用者負担3割の導入
 介護保険の自己負担2割の人のうち、特に収入が高い層の負担が3割になる。導入は平成30年8月の予定。具体的な基準は政令事項であるが、医療保険の「現役並み所得者」の基準を踏襲する。
 対象は 峭膩彌蠧清盂曄糞詬深入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額)が220万円以上」、かつ◆崘金収入及び年金収入以外の合計所得金額が単身世帯の場合で340万円以上、夫婦世帯の場合で463万円以上」が対象になる。対象者は3%に当たる12万人と推定されている(表2)。

 厚労省は、一昨年の2割負担導入前後で、1割と2割負担者間で受給者数の伸び率に「顕著な差はない」としている。しかし、2割負担になった約40万3000人のうち、40%以上がサービス利用を減らしており、また特養などの介護施設からの退所者は1600人以上と報告されており、現場の実態を軽視した厚労省の姿勢は看過できない。

5 介護納付金への総報酬割の導入
 現在、介護保険の2号保険者の保険料は、介護納付金として医療保険者に賦課している。現行制度では「加入者数に応じて負担(加入者割)」しているが、被用者保険では段階的に「報酬額に比例した負担(総報酬割)」となる。具体的には、平成29年8月分から2分の1、31年度から4分の3、32年度から全面的に導入される。負担増となる被保険者は約1300万人、一方負担減となる被保険者は1700万人(平成26年度実績ベース)。比較的報酬の高い共済組合や多くの健保組合は負担増になる見通しで、全体では320億円の負担増となる。
 また、特に負担増が大きい被用者保険者への財政支援が31年度末まで予定されている。なお、市町村国保や国保組合では加入者割を継続する。

6 その他
 ’知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の基本的な考え方を介護保険法に位置付ける。地域包括支援センターの事業の自己評価と質の向上を図るよう義務付ける。市町村が居住サービス等の供給量を調節できるよう、指定拒否や条件付加の仕組みを導入する。ぐ質な事業を続ける有料老人ホームへの指導監督の仕組みを強化するため、事業停止命令措置を新設する。ゾ祿下垰抉膸楡濺を退所して介護保険施設等に入所した場合、市町村の給付費が過度に増えないよう、前施設に入所前の市町村を保険者にする、などが盛り込まれている。

 本法案は4月12日、衆院厚生労働委員会において、民進党が安倍首相への質疑で森友学園問題を取り上げたことに反発し、当初の予定を繰り上げて強行採決された。野党は3割負担の対象が拡大しないよう法律に明記することを求めたが、安倍首相は将来的な拡大を否定していない。
国会では、重要な法案が充分な審議がなされないまま、数の論理だけで決まる状況が続いている。本会は社会保障をめぐる諸問題を会員に周知するとともに、改善に向けた活動を強化していく。

 



介護難民増加は必至

 

 全都道府県の地域医療構想(以下「構想」)が出揃った。2025年の医療提供体制構築に向けて各構想区域に設置する地域医療構想調整会議において具体的な議論が本格化する。 厚労省は調整会議を年4回開催する案を示し、第3回(10〜12月)には、機能ごとに具体的な医療機関名をあげた上で、削減・転換する病床を決定するよう求めている。定期的に都道府県に進捗を確認し、18年度の本格実施前に、病床削減先を決めるよう促す構えだ。

 「構想」では、2025年に向けて全都道府県の病床が、約15・6万床と1割強減少する見通しとなり、これは政府専門調査会が推計した削減値に沿った結果となった。「構想」に基づいて病床削減を進めた場合、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療等で新たに30万人程度の対応が必要と見込まれている。

 厚労省は、在宅医療の整備量の推計にあたって一般病床からの患者(概ね1日175点未満の患者)は基本的には外来医療で対応し、療養病床からの患者(医療区分1の70%等)は、介護療養病床の新たな転換先とする「介護医療院」等への転換見込量を除いた上で、外来、在宅医療、介護サービスで対応する考えを示している。

 しかし、推計の方法や臨床現場との乖離に対しての疑問や異論は少なくない。2017年度下期に具体名を挙げるとするスケジュールに、拙速ではないのかとの懸念もある。更に、 レセプト情報・特定健診等情報データベースを活用したデータブックについても、 使いこなせていない、診療圏分析ができない、不完全なデーターを全てとする危険性等が指摘されている。

 厚労省の計画・誘導は、患者家族のニーズに対応する施策ではなく、病床削減ありきの感は否めない。患者の療養環境はさらに悪化し、介護難民の増加が懸念される。

 北海道は広域だが人口が分散するという地域特性、医療資源が札幌に一極集中するという現状がある。どのように「地域完結型」の医療を実現するのか、これからの各地域医療構想調整会議の議論の行方を注視したい。


 
第5回代議員総会にご参加を


 北海道保険医会は、医科歯科の保険医が一体となり医療制度改善のために活動してきたが、更なる活動の強化と公益性を求めて4年前、一般社団法人となった。法人の責任を果たしつつ、創設以来の目的である「保険医療の改善を推進し、もって国民の健康を守ることを目的にし、会員の団結をはかり保険医の生活安定を実現する」活動に邁進する。

 デフレは、バブル崩壊と緊縮財政で始まる。1990年代半ばバブル崩壊で、巨額の不良債権を抱えた銀行が、自己資金比率の確保で「貸し渋り・貸し剥がし」を行ったため、資金繰り悪化で企業倒産が相次ぎ、金融不況に陥った。阪神・淡路大震災の復興への政府支出と携帯電話の爆発的ブームで景気回復軌道にあった1997年に橋本政権は、財務省主導の緊縮財政を行ってしまった。国民は、消費税増税、特別所得減税打ち切り、医療費自己負担増などで9兆円の負担増になった。その翌年、名目GDP(総需要)は、マイナス成長になり、当然、税収も4兆円減少した。いわゆる失われた20年が始まり、本来の供給能力より、名目GDPが低くなり、デフレギャップが広がった。引き続き歴代政権も、公共投資削減、診療報酬削減、医療費窓口負担増などの緊縮財政を続け、名目GDPは横ばい状態で推移した。名目GDPが増えない時期の緊縮財政は、同じパイの中で政府の取り分を増やし、国民の取り分を少なくし国民を貧乏にする。デフレ脱却には、名目GDPの増加と緊縮財政の廃止が必要である。

 依然として、デフレが脱却されず緊縮財政が続けられているため、医療経営は益々厳しさを増している。だからこそ、多くの保険医を本会に迎えて組織拡大を図り、社会インフラの一つである「医療」の制度改善のため活動を行い、頼りにされる北海道保険医会を目指し邁進している。

 来る27日午後5時より札幌ビューホテル大通公園で「第5回代議員総会」が開催される。一般会員も傍聴できるので、是非、参加して頂きたい。
 

 


      第7次医療計画 厚労省が通知                
              
           医科歯科連携の重要性を明記―



 厚労省は、平成30年度からの第7次医療計画に伴う「医政局長通知」と疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制の「医政局地域医療計画課長通知」を3月31日付で都道府県知事に発出した。同通知は今後の医療計画策定の指針となるもので、医科歯科連携等の重要性が明記された。

 


5疾病・5事業について
 がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患と糖尿病及び精神疾患の5疾病について、ロコモティブシンドローム、フレイル、肺炎、大腿骨頚部骨折等は5疾病に加えないとしたものの、その対策については、他の関連施策と調和を図りつつ疾病・介護予防等を中心に医療・介護が連携した総合的な対策を講じるとした。

 また、救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療(小児救急医療を含む)の5事業及び在宅医療については、施策や事業の結果のみならず住民の健康状態や患者の状態にどれだけ影響を与えたかという観点からの評価と改善を行う仕組みを提起した。


歯科医療機関の役割について
 地域包括ケアシステムを進める上で、歯科医療機関が地域の医療機関等と連携体制を構築することが重要とした上で、各医療連携体制の構築に歯科医療が果たす役割を明示し、入院や在宅等の患者に対する医科歯科連携の更なる推進が必要と指摘した。


がん、脳卒中の医療提供体制について
 がん治療では周術期口腔機能管理への取組みの把握が必要とし、脳卒中では誤嚥性肺炎の予防に関して、口腔管理を実施する病院内の歯科や歯科医療機関等を含め多職種で連携して対策を図るとした。


糖尿病の医療提供体制について
 糖尿病の予防・治療には、患者自身による生活習慣の自己管理に加え、内科、眼科、小児科、産科、歯科等の各診療科が糖尿病の知識を有する管理栄養士、薬剤師、保健師、看護師等の専門職種と連携して実施する医療サービスの必要性を明記。糖尿病患者は生涯を通じての治療継続が必要であり、これらの医療サービスが連携、継続して実施されることが重要とした。


訪問歯科診療関連について
 厚労省のデータでは、在宅歯科医療を受けた患者数は4万600人/日(歯科外来患者総数の3・0%)で、そのうち78%が65歳以上。また全歯科診療所6万8592か所のうち訪問歯科診療を提供している診療所は1万4069か所(20・5%)で、在宅又は介護施設等における療養を支援する在宅療養支援歯科診療所は6443か所(9%)とした。近年、口腔ケアと全身疾患との関係性が広く認識され、医療機関等との連携推進が求められるとした上で、在宅医療の体制構築に当たり現状の把握が重要としている。


◇  ◇  ◇


 今回の通知に関し、本会としても医科歯科一体の活動の充実を図り、医科歯科連携の更なる推進に積極的に取り組んでいく。

 

 

 



     遠隔診療の現状と議論の推移         


 中医協総会は、先月8日に来年度の診療報酬改定に向けて外来医療についての議論をスタートさせた。外来医療についての大きな論点の一つが「遠隔診療」だ。遠隔診療の現状と、それを巡る議論の推移について概説する。

 



「遠隔診療」の現状
 診療は対面診療が基本とされているが、「患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合は、対面診療の補完として遠隔診療を行うこと」は無診察診療を禁じた医師法第20条に直ちに抵触しないと解釈されている。厚労省は、離島・へき地などの場所、在宅酸素や難病、がんなどの9種類の患者の状態に該当した場合、遠隔診療ができると例示している。これらの場合は再診料等の診療報酬を算定できるが、初診料に関しては遠隔診療のみで診療を完結させることは医師法第20条に抵触するとの判断から算定することができない。

 それに対し、一昨年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改定2015」には、「初診であっても直接の対面診療を行うことが困難である場合についても、医師の判断により、遠隔診療が可能であることを明確化するため、速やかに通知を発出する」と明記され、議論が続いている。

 しかし、厚労省としては遠隔診療はあくまで補完的な役割であり、初診料は対象外という立場を崩していない。また、診療報酬上の評価のためには、対面診療に比べて医療サービスの質が上がるという科学的なデータが必要であるとしており、この点も今後の論点となる。


診療側と支払い側は対立
 政府は昨年末の未来投資会議において、今後の目指すべきあり方として、「AIを用いた最新のエビデンスや診療データの解析により、患者が最適な診療を受けられるシステムを構築すること」「AIやIoT等のICTを活用した診療支援や遠隔医療等を診療報酬の中に組み込むこと」を挙げた。そして、遠隔診療およびAIを用いた診療支援の来年度改定における対応を検討するとした。

 これを受け、先月8日の中医協総会で診療側の中川俊男委員は「遠隔診療、AIを用いた診療支援に対して、18年度診療報酬改定での対応を検討するという方向は拙速ではないか」と述べた。それに対し、支払側は「患者や医師などの負担軽減、医療費の節減になるのではないか」と意見は真っ向から対立した。さらに、中川委員は「通常の診療の場でICTの技術が活用されるのは当然だが、遠隔診療とICTを活用した診療は別に考えるべきだ」と主張した。


加速する遠隔診療を巡る議論

 規制改革会議の「健康・医療ワーキンググループ」の議論では、「遠隔診療にかかるコストは(中略)患者の利便性・快適性向上に寄与するものであり、保険外併用療養制度の範囲を拡大してコストを回収する考え方もあり得る」とし、閣議決定に盛り込まれた。また、厚労省は、遠隔診療について「在宅における療養指導・助言に加え、慢性疾患の重症化予防や健康指導・管理といった多様なサービス提供モデルが検討されている」と述べるなど、診療報酬上の評価の要件とされる「サービスの質」の向上につながるとの主張も出されてきている。

 次期改定に向けた遠隔診療を巡る議論は、混合診療拡大の動きを含め、今後急速に進む可能性がある。その中で、患者の利便性とニーズに真にかなうものか、保険医の医療提供体制へ悪影響がないのか等を検証しつつ今後の議論を注視していく必要がある。

 


   徹底した医療費抑制を誘導する国保都道府県化   

 18年度、多額の赤字が続く国民健康保険(国保)の都道府県化が施行され、徹底した医療費抑制策と国保保険料の引上げなど深刻な影響が懸念される。

 

 

はじめに
 15年度、国保は2853億円の巨額な赤字を抱える。15年5月医療保険改革関連法が成立し、18年度から国保は都道府県化され「都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営に中心的な役割を担い、制度を安定化する」ことを目指すとしている。しかし、国保都道府県化により、療養給付抑制と保険料引上げ、医療費「適正化」を誘導する市町村のインセンティブ改革、周到な医療費抑制策が始まろうとしている。


都道府県の権限強化
 都道府県は市町村に対し徹底した保険料徴収を強要させる等の「保険者努力支援制度」を新設し、新たに国保特別会計を設け、財政運営の責任を負う。医療給付見込み、所得を加味した1年分の「事業費納付金」を決定し、市町村に割り振り、100%納付が義務付けられる。

 都道府県は、「骨太方針2015」が掲げる(1) 療養病床・外来医療費・医療介護費用の都道府県別の地域差是正、(2) 国保の医療費の地域差が反映されるよう国保財政の仕組みを見直す方針を盛り込んだ「医療費適正化計画18〜23年」を策定する。都道府県別の診療報酬点数単価設定見直しや民間病院病床削減を命令する権限が検討される。


インセンティブ改革としての「保険者努力支援制度」
 保険者に対する「インセンティブ改革」としての「保険者努力支援制度」とは、「被保険者の健康の保持増進や医療費適正化等に向けた保険者の努力を促」し、都道府県が、市町村に対し保険者として徹底したの保険料徴収や特定健診・特定保健指導の実施率、糖尿病等の重症化予防、後発医薬品の使用促進の達成率等を評価する医療費「適正化」政策である。客観的な指標を評価し、一定基準以上改善できれば支援金が交付される。その財源は「医療費適正化」を達成できない市町村から徴収するペナルティからなる。応能負担と社会保の倫理性に矛盾した政策であり、保険者による健診・保健指導等に関する検討会でも異論がでた。


医療費削減に向けた個人のインセンティブ強化
 「個人については、健康づくりの取組等に応じたヘルスケアポイント付与や保険料への支援になる仕組み等の個人に対するインセンティブ付与を行うことにより、国民一人ひとりによる疾病予防、健康づくり、後発医薬品の使用、適切な受療行動をさらに促進する。また、個人の健康管理に係る自発的な取組を促す観点から、セルフメディケーションを推進する」とされている。16年の医療保険制度改革第150条で既に規定されている。しかし、ヘルスケアポイント付与に現金給付、保険料の傾斜設定を行う考えであり到底容認できない。安易なセルフメディケーションは健康被害や必要な受診を妨げ重症化を招く懸念がある。


都道府県と市町村との役割分担

 都道府県は、財政運営責任の主体となり、市町村ごとの納付金を決定し、標準保険料率設定、保険給付の点検、事後調整を担当する。

 一方、市町村は、被保険者の資格管理、保険料率の決定、賦課・徴収、保険給付、保険事業などを行う。保険料を被保険者から徴収し、都道府県に上納する。保険料の収納率目標が下回り、都道府県に収める分賦金が不足する部分は、市町村が一般会計から繰り入れし賄う。分賦金方式では、都道府県は市町村に対する上納額を決めるだけにすぎず、国保の財政問題の解決には至らない。国の責任が、地方自治体に転嫁され、国保事業の後退を招き、地域間格差が一層拡大することが危惧される。


国保料引上げ 最大2倍
 国保制度改正は、市町村間で差が大きい保険料の平準化が最大の目的であり、持続可能な制度にすると説明されている。都道府県は市町村との協議を通じ保険料の市町村間格差を高い方に均して行くため、保険料は引き上げられる。都道府県全体で保険料算定方式を統一すると保険料は更に高騰する。

 道の試算によると、所得200万円、夫婦2人のモデル世帯で、市町村ごとの保険料が大きく増加するのは93市町村で最大2・26倍、最も下がるのは82市町村で33%減であり、激変緩和の措置が講じられる。


国民健康保険をめぐる問題

・職業構成
 被用者保険に加入できない非正規雇用労働者や無職者が増加しつづけ、国保は生活保護を受ける直前までの国民を支える役割と日本国憲法第25条における生存権保障を担っている。

 「保険料の納付」は、保険料を納付できない人々が多数いるという視点が北海道国民健康保険運営方針原案(以下、方針案)には欠けている。国保被保険者のうち65〜74歳の構成比が年々増加し、平成26年で38・3%を占めている。国保被保険者の職業は退職者も含めた無職者が47%であり、非正規雇用者などが31%を占め78%は低所得者と考えられ、更に被保険者の所得は減少する傾向にある。最も平均所得の低い国保加入者が、最も高い保険料を支払っており、国は国保の運営に対し国庫負担を削減しつづけているため国保料は他の被用者保険に比して相対的に高額になっている。

・保険料徴収の強化
 「収納率向上対策」として、現在市町村は以下に述べる制裁措置の強化策を取っている。財産調査の徹底、財産差し押さえの強化等の滞納処分の強化、短期被保険者証発行と納付誓約などである。財産調査による滞納処分は全保険者の93・4%の保険者に及んでいる。また、給与、売掛金、年金、生命保険や学資保険の解約返戻金等も対象とし、全保険者の91・6%で行なわれている。

 高い保険料が生み出される構造、保険料を滞納せざるを得ない状況、国庫負担の削減の結果、被保険者に負担と責任が転嫁されており、早急に改めるべきである。

・経済的理由による受診抑制
 無職者や非正規労働者などの被用者は保険料の納付ができずに、受診抑制が誘導されている。17年度までは市町村が保険者として保険料の強制的徴収などの保険者機能強化が図られ、保険料の納付ができずに実質的に無保険者となり、受診抑制のため重症化を招いている。
 
・医療機関への適正な受診
 必要な医療に安心してアクセスできる国保制度改革が必要である。支払いが可能な保険料設定が重要であり、保険料を支払えない人々から懲罰的に徴収することなく、国庫負担を増やすことが求められる。必要な医療を受けることで、健康確保を通し地域社会の活性化に繋げるべきである。


おわりに
 国保は国民にとって最後の重要なセーフティーネットである。国保加入者は約3500万人と最大の公的医療保険である。被用者保険に加入できない非正規雇用労働者や無職者が増加しつづけ国保は生活保護を受ける直前までの国民を支える重要な役割を担っている。
 

 国保の都道府県化は、都道府県の権限強化による徹底した医療費抑制をもたらし、国民皆保険制度崩壊が懸念され注視が必要である。




医師自身のメンタルヘルス対策を

  
 平成27年12月からストレスチェック健診制度がはじまり、高ストレス者には、産業医が面接して必要な措置を事業者に勧告できるようになった。しかし、これに伴い、医療法人理事長、病院や診療所の院長が自分の職場の産業医を兼務している場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する恐れがあるとして是正が求められることにもなった。罰則規定はまだないものの、平成29年4月までに是正を求められており、対策は急務である。

 国会質問を機にこの通達がなされたようであるが、これまで産業医資格を苦労して取得し、医師の良心にもとづいて、自らの職場従業員の健康管理にも尽力してきた院長、理事長の先生方にとっては、納得いかないところであろう。何より、産業医資格を持つ他の先生をすぐに確保できないのではないだろうか。これから産業医資格の取得を誰かにお願いするにしても、研修実績が必要であり、少なくとも2年程度の猶予が欲しいところであったかと思う。

 さて一方、政府は働き方改革として、残業時間の上限規制を罰則付きに厳格化する方針を示している。残業時間と職場のメンタルヘルス(うつや自殺)との関連に関する医学的な検証を踏まえて、上限は単月で100時間未満とし、特例を含め年720時間以内に収めようとするものである。これに対し、日本医師会や病院団体から医師を適用除外とするよう要望がなされ、適用は5年遅らせる予定とのことである。医療法の医師の応召義務、救急患者や緊急手術対応、山間部の一人診療所などの状況、また研修と労働の切り分けも難しいというのが理由らしい。今後、オールジャパンで医師の働き方等について議論されるとのことだが、この5年後というのは少し間延びしている感じがある。

 このように国がすすめるメンタルヘルス対策については、医師の負担増となる。今まで置き去りにしてきた医師自身の職場のストレス対策については制度上の改善を強く望む



国民皆保険を堅持し 歯科医療の充実を

 歯科会員集会は、歯科医療の成立ち、過去の差額徴収問題、臨調行革、健保改悪、特定療養費制度、補綴物維持管理、「か初診」導入、そして、現在に至る長期維持管理、「か強診」導入、地域医療構想と地域包括ケアへの歯科の位置づけ、さらなる医療費抑制の構想に認識を深める場となった。

 昨年の歯科診療報酬改定では、診療現場の実態に則した算定用件の緩和や具体的項目の引上げがされたが、本会歯科部が実施した「歯科保険診療に関する会員アンケート」では、人件費や福利厚生費、消耗品など経費削減に努める一方で、患者数(45%)、保険収入(46%)、保険外収入(37%)いずれも「減少した」との回答があり、保団連の「開業医の実態・意識基礎調査」では、歯科医院経営に「見通しが立たない」との回答が2割あった。依然として厳しい医院経営と医療環境が続いており、診療報酬の大幅な引上げが求められる。

 また、近年、医療、介護の現場を中心に口腔ケアの重要性が強く認識されるようになり、厚労省は歯科医療によってADL、QOLの向上が図られるとして歯科保健医療の充実を確約した。次期の医療・介護の同時改定でどのように反映されるか注視が必要である。

 歯科では予てより保険適用外の治療も多く、保険診療の拡大に影を落としてきた。厳しい医療環境のもと「歯科技工問題」では、診療報酬の公定価格と技工物の市場価格の間で具体的な解決策を見いだせないまま今日に至っている。歯科医師の多くが将来の補綴物の供給に不安を抱いており、歯科医療を支える重要な課題解決のためには、歯科医師と歯科技工士が一体となり医療保険制度の改善、医療法改正も視野に検討を進めるべき時に来ている。

 本会歯科部では、今後も医院経営に有用な医療・保険情報の迅速な発信に努める。さらに関連する医療団体と情報交換や連携を深め、患者・道民に口腔管理の重要性を訴える各種啓発活動を通じ、より良い歯科医療の充実を目指し積極的に活動を進めていく。

 

 


平成28年度 歯科会員集会
    歯科医療の過去から現在を見つめ   
           未来に向け確かな運動の継続を   


 本会歯科部は、3月18日、平成28年度歯科会員集会を開催した。「歯科医療の過去・現在・未来」をテーマに、全国保険医団体連合会(保団連)より宇佐美宏歯科代表を講師にお迎えし講演会を開催。道内各地より会員、関係団体が多数参加した。


 会員集会では、はじめに野川哲義副会長より「歯科医療を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いている。本日は歯科医療の過去から現在までを検証し、未来について我々が進むべき方向を見出すための集会としたい」との挨拶があった。

 講演では、宇佐美歯科代表が冒頭「様々な場所で講演させて頂いているが、私の話を聞くと皆が暗くなると言われる。その理由は国による歯科医療軽視の歴史をどうしても語らざるを得ないからだ」と前置きがあった。

 1.「歯科医療の苦難の道のり-今に至る歯科軽視の流れ」では、歯科医療の成り立ちから健康保険法発足、国民健康保険法施行について説明があった。

 2.「国の歯科診療報酬政策-厚労省はいかにして歯科医療費を抑制してきたのか」では、社会問題化した差額徴収問題と51年通知による混合診療の固定化、臨調行革による診療報酬改定財源を薬価差益から捻出、健保法改悪・自己負担増による歯科受診の低迷、特定療養費制度導入と混合診療解禁への布石、補綴物維持管理や「かかりつけ歯科医初診料」導入での長期維持管理路線の定着、2006年度診療報酬改定は日歯の汚職事件への報復改定と審査、指導の強化、2016年度改定での「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」新設の思惑と今後の影響について解説した。

 3.「歯科医療供給体制再編の流れ-歯科医院総体の平等化を阻止」では、「か強診」の届出、在宅医療への対応、診療所の人員・規模、IT化などを基準とする医療機関の区分けと差別化、地域医療構想と地域包括ケアシステムのリンクで「定数制」「定年制」導入へなど、様々な医療費抑制策の構想について述べた。

 4.「国民皆保険制度を守り、更に発展、拡大させるための医療運動」では、「保険で良い入れ歯を運動」などの成功例を挙げ、「国・官僚が恐れるのは世論の盛り上がりとマスメディアである」として、医師・歯科医師・パラメディカルスタッフが一致団結し、患者・国民を巻き込んだ運動やきめ細かなマスメディア、議員、ネット対策が必要と指摘。「歯科医療の明るい未来ビジョンは容易には描けないが、医療団体としての使命を忘れることなく、国民や関連団体と共に医療改善運動を続けることが大切」と結び、講演を終了した。

 今回の歯科会員集会には、会員はもとより北海道歯科医師会、札幌歯科技工士会から多数の役員の参加があり、講演会後の懇親会では藤田一雄道歯会会長、道垣内茂樹札技会会長から挨拶を頂き、今後の歯科医療の進むべき方向に関し意見交換を行い、会員との懇親を深めた。
 


  社会保障の切り捨てを直ちに中止せよ



 安倍政権は平成28年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定した。その目的はアベノミクスによって子育て支援や社会保障の基盤を強化し、経済を強くするという新たな経済社会システムの構築である。プランが実現するか否かはともかく、この時点ではあたかも安倍首相が社会保障の充実に本腰を入れる決意を表明したかのように見えた。しかし昨年の参院選後、国民が目の当たりにした現実は社会保障の充実どころか、安倍政権のあからさまな医療と介護の切り捨てへの方向転換である。

 ちなみに17年度厚生労働省の予算要求は概算で過去最高の31・1兆円、その伸びは前年度比6400億円増に上る。社会保障費のうち最も額が大きいのが医療で、前年予算に比べて2・6%増の11・5兆円。また介護では同3・8%増の2・9兆円を計上、年金は1・4%増の11・4兆円を求めている。これに対し政府は財政健全化計画により、社会保障費の伸びを16年から18年まで年5000億円に抑えなければならない。年金は給付額の伸びを物価や賃金の伸びより抑制する仕組みが作用し増加幅は比較的小さい。当然ながら医療費と介護の増加が問題となる。とりわけ介護は額こそ医療と比べ少ないがその伸びは著しい。

 このような状況下で財務省と厚労省が社会保障費の増加分を、国民の負担増で賄おうとしている。具体的には医療においては後期高齢者の自己負担引き上げや、所得の高い高齢者の高額療養費月額負担の引き上げ等を検討している。さらに介護においても2割負担の対象者の拡大、要介護度の低い人向けサービスの保険外し、高額介護費自己負担の月額上限引き上げなどが予定されている。一方、医療機関側にとっても受診抑制は言うまでもなく社会保障費の絞り込みが十分でない場合、18年の診療報酬と介護報酬改定が重なる同時改定時に大幅なマイナス改定が予測される。

 政府は医療機関や国民に負担を強いる社会保障切り捨てを直ちに中止すべきである。


 公開医政講演会開催! 

   地域住民のための「地域医療構想」の推進を!   




 公開医政講演会を2月18日、津市立三重短期大学生活科学科教授の長友薫輝(ながともまさてる)氏を講師に迎え、「北海道の地域医療構想を考える〜地域医療の崩壊を招かないために〜」をテーマに開催し、道内各地より多数が参加した。



  立花政策部長の司会のもと、はじめに小笠原俊一会長より「医療費抑制策の中、現在進められている地域医療構想には、様々な問題がある。本日の講演を通じ、より知識を深め問題点等について検証したい」と挨拶があった。

  引き続き講演が行われ、長友教授は、日本の医療保障は、公的医療保障による皆保険制度と医療供給体制で成り立っている。この両者を一体的に変えるのが医療保険制度改革関連法であり、この中で医療費適正化計画である地域医療構想は新たな医療費抑制策の一環であるとし、その問題点を解説した。

 当初、地域医療構想の策定にあたっては、「地域の客観的受診データをもとに議論し、合意形成を経て病床数や構成割合等を決めていく」としているが、実際には多くの都道府県で病床数の削減決定が先行している。また、地域の受診記録や人口推計などをもとに国の定めた計算方式で医療需要を推計し、在宅医療・介護の推進を前提にした区域ごとの必要病床数を定める方法にも問題がある。特に、北海道のように広域で冬期間など医療アクセスが悪い地域を、全国一律の基準により算出されたデータを使用して医療需要の推計を行うことには無理があると説明した。

 さらに、地域医療構想は、国民健康保険の都道府県単位化や地域包括ケアシステムとそれぞれセットで連動し、医療費抑制策(医療費・供給体制の管理)として機能していることも注視する必要があると言及した。

 最後に、地域医療の崩壊を招かないためには問題点の改善はもとより、この「地域医療構想」を、患者・住民の実態を把握し、必要な医療提供体制と皆保険体制の底上げを図る好機と捉え、住民本位の地域包括ケア構築をイメージし地域で医療保障の水準を高める取り組みを続けることである。今必要とされるのは、政策方針として提示されている「地域包括ケアシステム」づくりに積極的に関わり、住民、医師・歯科医師や医療・介護関係の専門職、そして自治体とともに地域で独自の住民本位の地域包括ケアを構築するという視点であると述べた。

 参加者からは、「このまま進められた場合、医療難民・介護難民はどの程度発生するのか」「地域医療構想の他の政策との関連性・連動性が良くわかった」などの質問・意見が寄せられ、大変好評だった。



     改正道路交通法             
        認知症対策強化で現場は混乱か―



 改正道路交通法が3月12日に施行され、75歳以上のドライバーの認知症対策が強化される。

 現行では75歳以上のドライバーは3年ごとの免許更新時に「認知機能検査」を受け、「認知症のおそれ」「認知機能低下のおそれ」「認知機能低下のおそれなし」の3分類に判別される。「認知症のおそれ」に分類されたとしても、一定期間内に信号無視等の交通違反を犯していなければ、医師の診断を受ける必要はなく、該当した人の多くが医師の診断を経ることなく運転を継続できる状況にある。

 しかし、今回の改正法では同検査で「認知症のおそれ」と判定された場合、交通違反の有無にかかわらず医師の診断を義務付ける。このほか、免許更新時以外に、認知機能の低下が引き起こしやすいとされる信号無視や一時不停止等の18項目の交通違反を犯した場合にも「臨時認知機能検査」が実施され、「認知症のおそれ」と判定されれば、医師の診断を受けることとなる。

 医師の診断とはかかりつけ医による診断書の提出、または日本認知症学会等の専門医による「臨時適性検査」の実施である。警察庁によると2015年度の「認知機能検査」で「認知症のおそれ」と判定された人数は5万4千人となっているが、今回の改正に伴い、かかりつけ医に認知症の診断書作成を求めるケースは今後それ以上に増加することが予想され、現場に混乱が生じる恐れがある。

 その対策として、日本医師会では、認知症の診断書作成マニュアルを作成し、配布していく方針を明らかにしている。会員諸氏にもぜひ一度マニュアルをご確認いただきたい。

 


   行政機関による指導・監査・適時調査とその特徴   


 医療機関に対しては、地方厚生局による個別指導をはじめ、各種の法令に基づいた行政指導や調査などが実施されている。これらは行政処分には該当しないが、調査等の結果により改善指導や診療報酬の自主返還等を求められるケースもある。本稿では、各々の指導や調査について種別ごとに特徴や調査内容等について解説する。

 


 


指導・監査の現状

 平成27年度の保険医療機関等の指導・監査の実施状況が発表された。個別指導は対前年比63件減の4403件、新規個別指導は23件減の6495件、適時調査は215件増2562件であり監査は3件増の90件であった。

 本道の医科と歯科の実施は、平成26年度の個別指導57件、新規個別指導59件、適時調査184件に対し、平成27年度はそれぞれ60件、80件、189件と増加している。全国的には指定取り消しは、医療機関、保険医ともに歯科は増加しているが、返還金は全体で8・8億円減の124億円となっている。

 レセプトのコンピューター審査や患者への医療費通知書などのほか、保険者・被保険者からの情報提供により、今後も指導・監査の件数増加が見込まれ、さらに医療費の適正化・削減目標などを目的に返還金の増加も危惧される。悪意の無いミスであっても指導・監査・調査等を受ける場合があり、これらを避けるためにもその仕組みを知ることが重要である。


健保法、国保法、高齢者医療確保法による指導
 保険医療機関(以下医療機関)は保険診療に関して、厚生労働大臣または都道府県知事の指導を受けなければならないとされており、不正または不当行為を前提とした「監査」とは異なる。本来の指導はすべての医療機関が対象であり行政処分ではないが、請求過分については自主返還(原則1年分、最大5年分)を求められる。

 指導の種類は、―乎鳥愼貝⊇乎津個別指導8鎚婿愼魁平卦指定個別指導、既指定医療機関個別指導)に分けられる。

 本道では、平成28年度より医科と歯科に若干の違いはあるが、ともに集団的個別指導の高点数により選定された医療機関に対する指導が行われている。集団および集団的個別指導に正当な理由なく欠席した場合は、個別指導の対象となるので注意が必要である。

 新規個別指導は新規指定から概ね1年を経過した医療機関を対象に実施される。指導対象となるレセプトは診療所10件程度、病院20件程度だが、その中で保険診療の適正を欠くものは診療報酬の返還対象となる。

 その他にも、保険者や審査機関、従業員、被保険者等から通報(いわゆる情報提供)があり、指導が必要と認められた医療機関に対しては、速やかに個別指導が実施される。

 新規個別指導を含む個別指導は、指導の数日前に指定された対象患者のカルテ、検査所見、レントゲン写真、その他の関係書類を持参し、提出済みのレセプト(おおよそ2カ月分)と突合しながら、「診療が医学的に妥当適切に行われているか」「診療報酬請求の根拠となる内容がカルテに記載されているか」「保険診療のルールに則った請求が行われているか」等を面接懇談方式で実施される。


その他の行政による指導、調査、検査

 健保法などによらない指導等は、■生活保護法指定医療機関に対するもの■届出医療に関する適時調査■医療法に基づく立入検査■介護保険の指導・監査■会計検査院検査に伴う調査などがある。


■生活保護法による指導
 生活保護指定医療機関は都道府県および政令市の指導を受けるが、その選定基準は、ー茲螳靴し鐃瑤泙燭鷲儔鷦診者の多い医療機関∧〇禹務所などからの連絡D拘入院患者が多い医療機関などである。さらに電子レセプトの分析を活用し請求全体に占める被保護者の割合が多い、被保護者のレセプト点数が他の被保険者より高点数であるなどが挙げられている。

 生活保護の医療扶助は他法優先の原則に基づき、自立支援医療での給付対象者は自立支援医療での請求が優先する。なお、健康保険にある保険外併用療養費は医療扶助には適用されない。


■届出医療に関する適時調査
 届出医療は、各医療機関において施設基準や人員要件を満たした上で届け出ることにより、算定可能となる診療報酬点数である。ゆえに、定例報告を行う必要があり、さらに届出要件を満たさなくなった場合は速やかに変更届、取り下げを行う必要がある。院内に入院は元より、外来においても届出を行った施設基準(小児科外来診察料、在宅療養支援診療所など)の項目、内容等の必要事項を掲示しなくてはならない。

 適時調査は、主に病院に対して届出内容に関して地方厚生局および都道府県が行うが、無床診療所も対象とする場合がある。原則年1回とされているが、現実的には数年に1回程度である。

 調査の内容は全般的事項から入院料(入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理など)、看護要員(看護師数、勤務表、勤務時間など)、看護業務(病棟管理日誌、看護計画、外泊許可証、リネン庫、診療録管理体制など)、入院外(リハビリテーション、薬剤指導、入院時食事療養など)など多岐にわたる。

 本来、届出項目に対する調査であり、不備が有る場合は届出に対する指導および、それらに関する診療報酬の自主返還が求められる。また、カルテ等を閲覧されることにより後日、届出以外の内容に関して個別指導が行われることもある。


■医療法に基づく立入検査
 以前は、医療監視と呼ばれていた保健所による調査である。調査要綱は毎年6月に一部改正されるが、基本的には清潔保持、構造設備、カルテ記載、帳簿書類、資格外診療行為などが調査される。最近は、感染性廃棄物の処理やマニフェスト、放射線管理、医療安全管理対策(医療安全管理、院内感染対策、医薬品安全管理、医療機器安全管理)など指針の策定、研修などを実施することが求められる。


■介護保険の指導・監査

 介護保険の指導は講習会などによる「集団指導」と事業所で行う「実地指導」がある。

 実地指導は各自治体において効率的かつ効果的に実施するとされており、実地指導で不備が判明した場合は直ちに「監査」が行われる可能性もある。監査の結果により、勧告、命令、指定取り消しなどが行使され、行政上の強い権限を伴うものである。

 指導の内容は、運営規定、院内掲示、説明文書、同意書、利用料の徴収(医療と介護の区分経理と領収書の交付)、人員基準、設備基準などである。

 医療機関で行う介護保険での訪問看護、訪問リハビリなども実地指導の対象となりうるので、留意されたい。


■会計検査院の調査
 会計検査院の調査は、予算執行上の観点から予算、法律、政令に従って適正に処理されているか、経済性・効率性・有効性の観点から調査を行うものであり、直接医療機関に対するものではなく、地方厚生局や都道府県に行う調査である。

 北海道において、ここ数年は実施されていないが、会計検査院が指摘した医療機関は地方厚生局の個別指導の対象となり、会計検査院の指摘項目に留まらず通常の個別指導と同様に実施されるので注意が必要である。


◇ ◇ ◇


 以上、指導に関する概要を解説した。算定要件に従い通常の診療を行っていれば指導・調査などを恐れる必要はないが、最近の指導・監査の実施状況は確実に件数が増えている。多忙な診療業務に追われ、時としてカルテの記載漏れやレセプトチェック忘れ、電子カルテのコピー&ペースト、傾向的診療・検査、レセコンの画一的コメント等、見落としがちになる。日常的に留意事項を再確認することが必要である。

 最後に、個別指導や適時調査などの連絡があり、疑問点や不安等があれば本会に相談していただきたい。

 


    社会保障を取り巻く激動の時代     
             医療を守るため会員の力の結集を

 
 北海道保険医会は道内の医師・歯科医師の会員で組織され、道民のための医療を守り改善を目指す一般社団法人である。本会は、保険医が安心して必要な医療を提供できるよう、様々な活動を行ってきた。優れた日本の国民皆保険制度を守るため、これからも会員みなさまのお力が必要である。

 

  国は、国家財政悪化の原因は医療・介護などの社会保障費の増大であり、国家存亡の危機であるが如く喧伝している。「骨太方針2015」で示された社会保障費抑制の方針により、毎年の自然増加分を5000億円に抑制するため、来年度も1400億円を圧縮しようとしている。我々医療界を取り巻く状況は厳しさを増しており、医師・歯科医師を含めた医療者全体で社会保障改悪に立ち向かわなければならない。


診療報酬改定に向けて
 18年度診療報酬改定に向けた実質的な議論が始まっている。18年度は6年に1度の介護保険との同時改定のみならず、第7次医療計画・第7期介護保険事業(支援)計画・第3期医療費適正化計画がスタートする。2025年の医療提供体制構築に向け、今年度は医療・介護施策において、極めて重要な意味をもつ1年になる。

 中医協では医療介護の連携に向け、(1)療養病床・施設系サービスにおける医療、(2)居宅等における医療、(3)維持期のリハビリテーションの3項目が検討課題とされた。

 2017年末に設置期限を迎える療養病床については、新類型として創設される「介護医療院(仮称)」への対応が迫られる。


北海道の地域医療構想
 2025年の医療需要を踏まえた機能別の病床必要量が規定される。北海道においても、昨年構想案が示され、今後調整会議等において具体的な協議が始まる。

 本会は2月18日、講師として三重短期大学の長友薫輝教授をお招きし、公開医政講演会を開催した。会員は地域医療構想に関する理解を深め、北海道での問題点について認識を新たにすることができた(詳細は次号)。この改革が単に病床削減と医療費抑制の道具とされることなく、医療難民を出さないよう注視が必要である。



 北海道保険医会は特定の支持政党を持たない一般社団法人である。政治的しがらみのない医療団体として、国民の健康を守るため、そして健全な医療体制の堅持や医療従事者の生活や経営を支えるため、国民ファースト・保険医ファーストの活動を続けている。今後も多くの医療者にご賛同いただくよう、本紙などを通じ医療情勢の分析と本会活動の周知を行い、さらに多くの会員にご支援とご協力を願う所存である。

 

 




 

 第2回 保団連代議員会
   本会発言通告 及び 保団連執行部答弁要旨   


  小笠原俊一会長発言  


患者負担増計画阻止の運動拡充を
 社会保障制度審議会医療保険部会が昨年末に発出した「議論の整理」では「70歳以上の高額療養費の負担限度額の引き上げ」「後期高齢者の保険料軽減特例措置の廃止」など高齢者に負担を強いる項目のほか、「かかりつけ医以外の受診時の定額負担導入」「市販類似薬の保険外し」など全ての世代に新たな負担を求めることを明らかにしている。また、将来的にはマイナンバーを活用し、介護保険と同様に個人の保有資産の応じた負担のあり方を検討する方針にまで言及した。

 世代間・世代内の負担の公平等の観点から見直しを検討したとしているが、世代間の健康リスクは当然ながら格差があり、単に収入のみで公平性を判断するのは不適切である。今年の通常国会から上程されるこれらの改悪法案の成立阻止に向け、「ストップ!負担増」の運動をさらに拡大、推進していく必要があるのではないか。

保団連 武村副会長 
 高齢者負担増、ひいてはすべての年代の負担増につながる政策であることは間違いない。これらの負担増計画を広く国民に知らせ、医療・介護の負担増を阻止すべく運動していく必要がある。他医療団体との協同と署名活動の強化をしていきたい。


医師偏在解消に向けた解決策を
 医師偏在対策について、昨年6月、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」で出された中間とりまとめでは、医療計画による専門医数の調整や保険医の配置・定数の設定、自由開業・自由標榜制の見直しなどが打開策として提案されている。今後新専門医制度による研修期間の長期化や地域医療構想に伴う医療機能の集約化等が進めば、医師偏在はさらに深刻化されることが想定される。加えて、医師の勤務時間等、働き方も含めた検討が必要との指摘もあり、課題は山積している。

 こうした状況を改善するには、医師の自主性が確実に保障され、地方における研修の充実化、地域医療に関する医学教育の取組み、労働環境の整備等に国が政策・財政の両面で積極的に支援していくことが望まれると考えるが、保団連としての方針及び解消案を示していただきたい。

保団連 聞間理事
 保険医の配置・定数の設定、自由開業制の見直しなどは医師の自発性、自主性の障害となるものである。研修における問題、医師の勤務時間の問題など、多岐にわたる課題については、国の財政支援が不可欠であり、国に対して強力に求めていく。


  加藤康夫副会長発言  


「かかりつけ医」制度の阻止を

 厚労省は「かかりつけ医の普及を図り、かかりつけ医が患者の状態や価値観も踏まえ医療をサポートする『ゲートオープナー』機能を確立する」として、かかりつけ医の制度化に向け動いている。昨年の社会保障審議会では、普及促進を目的に、かかりつけ医以外を受診した場合には定額負担を求める制度を打ち出した。フリーアクセスに制限を掛けることで、重複受診の抑制や残薬管理を徹底し医療費の削減を図るのが狙いとされている。

 一方、医師に関してもイギリス型のかかりつけ医制度(GP)が導入されれば、登録制、人頭払い制への糸口となり、ゲートオープナー機能を要求されることで医師(登録医)の資格問題に発展することも懸念される。また、「患者の価値観」にも触れており、リビングウィルなどセンシティブな問題にも介入しなければならない可能性もある。

 患者の人権を考える上で、医療を受ける選択権は重要な権利であり、医療費の削減を目的にフリーアクセスを侵害することは許されないと考えるが、保団連の考えを示していただきたい。

保団連 三浦副会長 
 国は「かかりつけ医」制度によって、フリーアクセスを阻害しようとしている。特に受診時定額負担は、受診抑制と保険医定数制につながるものであり、断固反対していく。


介護療養病床廃止再延長と慎重な議論を望む
 平成29年度末に廃止の介護療養病床の転換先として、厚労省より新たな施設となる医療機能を内包した施設系サービスを設けることが示され、現行の介護療養病床の機能を維持し、さらに生活施設としての機能を兼ね備えたサービスを提供するとしている。しかし、利用者像を療養機能強化型AB相当と一定の重度患者を見込む(機砲了楡澆砲いては、人員基準は現行より緩和され、充分サービス提供が可能な体制といえるのか疑問が残る。また、日常生活サービス部分が患者負担として切り離されないか、さらには逼迫する介護保険財政の中で十分な報酬が担保されるのかなど不透明な部分が多い。

 近い将来、多死の時代を迎えるにあたり、見取りの場所の確保は喫緊の課題であることは論を待たないが、拙速な対策は患者の療養環境の悪化を招くばかりでなく、医療者に人員面、財政面で負担を強いることになりかねない。まずは現行の介護療養病床の廃止を再延長し、必要な介護保険財源を充分に確保した上で、あるべき療養病床の形を慎重に検討するよう国会はじめ関係各機関に積極的に働きかけてほしい。

保団連 安藤理事 
 中医協でも1月25日から次回改定に向けた議論が開始され、「療養病床のあり方に関する審議会」等で取りまとめた論点を基に、25対1療養病棟の厳格化を狙っており、今後は医療区分割合など診療報酬での抑制が加速される恐れがある。

 しかし、介護療養病床や25対1看護の医療療養病床は、現在も地域で重要な役割を果たしている。保団連ではこれまでも廃止の再延長と診療報酬、介護報酬の引き上げを要望してきたが、今後さらに運動を強める。


  野川哲義副会長発言  


技工士問題の今後
 保団連は昨年、「2016年歯科技工所アンケート」を行い、12月には国会内で開催された「第3回歯科技工問題を考える懇談会」で、アンケートの結果を報告し歯科補綴存続の危機を訴えた。

 「技工士問題」の改善・解決に関する保団連の見解として「歯科診療報酬の大幅なアップなくして、歯科技工問題の解決はない」に留まっており、専門部署における十分な協議を経ての具体的な対案の提示や全国的な運動の方向性が定まっていないように思われる。

 10年程前の国民の理解を得た「保険で良い入れ歯を」の運動においても同様の見解が示されたが、この運動の成果として、歯科診療報酬において義歯の点数が大幅に増加したものの、それに関する歯科技工料のアップが全国的に行われたということはなかった。

 保団連は、今回の問題解決に関し同様のスタンスを取っているが、歯科診療報酬がアップすることにより歯科技工料が連動してアップするという具体的な根拠について、改めてご説明いただきたい。それが明確でなければ、過去の過ちを繰り返すことにならないか危惧している。

保団連 馬場副会長
 今回行ったアンケートから様々な問題が浮き彫りになった。各県の技工士会に送付したところ、多くの反響があった。歯科医師と歯科技工士の協同が不可欠であり、ぜひ各協会でも懇談等、運動を強めていただきたい。


歯科医療保険への予防概念の導入
 厚労省の保険者による健診・保健指導等に関する検討会での取りまとめ資料(H28年1月6日)の中の、予防・健康づくりに係る指標に「がん検診や歯科健診など」と、初めて「歯科健診」という文言が出てきた。

 現在、事業所検診でも歯科健診があり、後期高齢者の歯周疾患検診も補助金の下で始まっている。このように国は、予防・健康づくりを保健事業として進めていく構えだが、がん検診や歯科健診及び特定健診・特定保健指導などは、全体として市町村の実施率や受診率が低調であること、医科、歯科医師会の委託事業ということもあり、なかなか進んでいないのが現状である。

 現行の健康保険法における療養の給付は、疾病の治療のみに限られている。疾病を早期に予見し早期治療を間断なく行うことは、病気の重篤化や再発防止とともに医療費の軽減に繋がることは明らかである。国が推し進めようとしている保健事業での検診・健診だけではなく、疾病は起こり得るものとして早期発見を含めた予防概念を疾病の前段階として捉え、医療保険に検査(各唾液検査、細菌検査など)やオーラルフレイルの啓発・指導などを導入するなど、新たに療養の給付に予防概念に基づく処置等を導入し、国民の予防・健康づくりを促進させていくべき時期に来ているのではないか。

保団連 新井理事
 この間の改定では、周術期口腔機能管理や初期う蝕治療をはじめ、「疾病の重症化予防」との観点で新規保険導入がされてきたことは評価できる点であり、保団連として推進したい。

 観点は変わるが、2016年改定で新設された「有床義歯咀嚼機能検査」では、「咀嚼能力測定」として一種の唾液検査が保険導入された。ご指摘の疾病の早期発見・重症化予防を目的とした各唾液検査も技術的には保険導入の条件が整っているとも捉えられ、保団連改善要求案にも記載し、要請していきたい。
 


  患者負担増に歯止めを!    
        
 保団連 第2回代議員会を開催―


 全国保険医団体連合会(保団連)は1月29日、第2回代議員会を開催し、全国から代議員、事務局など総勢284名が参加した。代議員会では活動報告・方針をまとめた会務報告案、2017年度予算案等を審議し全会一致で採択。本会からは小笠原俊一会長、加藤康夫、野川哲義両副会長が代議員として参加し、執行部に発言を行った。

 


 

 


 冒頭の会長挨拶で住江憲勇保団連会長は、安倍政権下の国民生活について「公的給付の削減、患者負担増により医療提供側と患者・国民ともに困難に直面しており、貧困と経済格差が拡大している」と批判。「国民の健康、命、安全、安心を守り改善させる政治に向かわせることが喫緊の課題」と訴え、本代議員会での取り組みの前進に期待を述べた。

 会務報告案では2016年度の活動報告と2017年度に向けた活動方針が示された。医療運動での成果として、第1に全国展開した「ストップ!患者負担増」署名運動が高い会員参加率を得たこと。また、こうした運動により負担増計画の一部見送り、当初予定の引き上げ幅を縮小させた等の成果を強調。保団連が実施した「受診実態調査」や「歯科技工士アンケート」などの調査活動は、マスメディアにも大きく取り上げられ、社会的影響力の拡大を示すものと評した。2017年度へ向けた取り組みとしては、まずは診療報酬・介護報酬同時改定で引き上げを勝ち取ること。さらに、「医療・社会保障総がかり行動」として、医療界だけではなく、国会・地方議会、マスメディア、国民など広い層に働きかける活動を提起。その中で、患者負担増の阻止、医療費抑制策への対策などを具体化する方針が述べられた。

 討論では全国の保険医協会・医会から120の発言が行われ、執行部が答弁した。本会からも3名の代議員から、患者負担増計画、医師偏在対策、歯科技工料問題等、6題の発言が行われた(詳細は本会発言及び保団連答弁要旨参照)。討論終了後、会務報告案、2017年度予算案の両議案ともに採択された。

 また、9月から開始された「クイズで考える私たちの医療」のクイズハガキの景品抽選が行われた。ハガキは全国から約4万枚もの応募があり、住江会長など役員が抽選し当選者が確定。ハガキに添えられたメッセージが紹介された。

 最後に、患者負担の大幅引き下げなど14の要求項目を盛り込んだ「格差と貧困を是正し、医療・社会保障の充実・発展を求める決議」と、診療報酬の10%引き上げ等を求める「診療報酬引き上げを求める特別決議」が提案され、拍手により満場一致で承認された。


「亡霊」のように甦る給付に抑制策にノー


 先月25日の社保審医療保険部会(以下、部会)は、かかりつけ医以外を受診した患者に定額負担を求める仕組みの導入について、政府の方針を受け、検討を継続する意向を示した。

 これは、政府の「経済・財政再生計画改革工程表」に盛り込まれ、昨年1月20日の部会で方向性が確認された。また、5月26日の部会では経団連の委員から検討要望が出され、参院選後の7月27日の自民党の小委員会では受診時定額負担を「制度化すべき」とした。

 周知の通り、「定額負担」の議論は、今に始まったものではない。2005年に小泉政権下の経済財政諮問会議で「保険免責制」として、難病公費医療の対象拡大の財源の名目で提案された。さらに、2011年には「社会保障改革に関する集中検討会議」で高額療養費の財源確保を理由に「受診時定額負担」が持ち上がった。この際には、本会をはじめとした医療関係団体が一丸となって、国民を巻き込んだ議論を巻き起こし、廃案に追い込んだ。

 このように、これまで何度も「定額負担」が取り沙汰されてきたが、その理由は一貫していない。というのも、これらの本質は一貫して「給付抑制」そのものに他ならないからだ。さらに、「保険給付は将来にわたる7割給付を維持する」と明記されている法律附則を無視した給付抑制であり断じて容認できない。

 今回の定額負担導入の目的は、「かかりつけ医の普及」であるとしている。しかし、我が国の保険医は、以前からかかりつけ医としての機能を果たしてきた。今回厚労省は「かかりつけ医」の定義を示していない上、今後ゲートキーパー機能導入への足がかりになる懸念もある。今後の議論の経過を厳重に注視する必要がある。

 「定額負担」に限らず、社会保障の給付抑制策は、「亡霊」のように何度も甦ってきた。我々は、これらの政策に、その都度粘り強くノーを突きつけ、我が国の医療の根幹である国民皆保険制度を守っていく必要がある。本会活動への積極的参加をお願いする。


     2017年 差し迫る負担増       
           政府の真の狙いとは――

 政府は、財政健全化という名目で医療費を削減するための更なる策を次々と発案している。その口実として「負担の公平性」を掲げ新たな負担増を求めているが、政府の狙いは負担の重いほうに水準を合わせ、すべての国民に負担を押し付けることにある。『2017年 医療・介護の大改悪がやってくる』に引き続き、差し迫る負担増計画について解説する。

 


 


 昨年12月20日、社会保障審議会医療保険部会は「議論の整理」を公表し、29年度予算審議に向けて、高額療養費制度の見直し等の患者負担増計画を打ち出した。

 今回の負担増を求める根拠として、政府は 崘齢でなく負担能力に応じた公平な負担」という世代間・世代内での負担の公平化と◆岼緡邸Σ雜遏丙濛陲汎院)の負担の公平」といった費用負担の公平化を挙げている。



世代間・世代内での負担の公平
 「議論の整理」では「年齢でなく負担能力に応じた公平な負担」を理由に、具体化を進める検討項目として高額療養費制度や後期高齢者の保険料軽減特例の見直しが提案された。

 高額療養費制度については70歳以上の患者負担上限額を引き上げる案を示した。更に、外来受診頻度等を勘案して70歳以上にのみ設けられている外来上限特例を現役並み所得者は廃止し、一般区分については制度を維持した上での上限額引き上げが提示された。このまま実施されると大幅な負担増が予想される(図1)。

▲図1 70歳以上の高額療養費制度の見直し案



 また、後期高齢者の保険料軽減特例は所得に応じ均等割部分を7割・5割・2割軽減する措置が設けられているところ、更に軽減措置を追加し、7割軽減を受ける者には9割あるいは8・5割軽減する等の措置をとっているが、その特例廃止を29年度から段階的に実施すべきとした。対象者は916万人と75歳以上の6割に上る。廃止されると保険料が3〜10倍に跳ね上がり、高齢者の生活に影響を及ぼすことは必至だ(表)。


▼表 後期高齢者医療保険料の負担増の実例

 

費用負担の公平
 27年に成立した医療保険制度改革関連法に伴い、「入院医療と在宅医療の公平」を口実に、28年4月より低所得者・難病等患者を除く患者の入院時の食事代の自己負担が引き上げられた。

 「議論の整理」でも65歳以上の医療療養病床に入院する患者の居住費負担を引き上げる提案が行われている。今回の見直しによって、医療区分気聾醜圓裡影320円から370円に、医療区分供Ν靴鷲蘆瓦覆靴ら1日200円に引き上げられ、最終的には370円の光熱水費相当額の負担増となる(図2)。このまま居住費負担が課せられた場合、28年からの入院時の食事代の引き上げと合わせると、27年時に比べ、2倍以上の負担増となる。




▲図2 入院時の居住費(光熱水費相当額)の見直し案 



更なる負担増

 政府のいう「負担の公平」とは負担の重いほうに水準を合わせ、すべての国民に負担増を押し付けるものであり、看過できない。国民が経済的負担を理由に受診抑制することなく、良質な医療を受けられることが重要であり、今後も動向を注視していく必要がある。

 厚労省は今回、結論を見送ったが引き続きの検討課題として、「負担の公平性」を根拠に「金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方」を打ち出すなど、更なる負担増の計画を目論んでいる。


「見送り」という罠  


 厚労省社会保障審議会医療保険部会は昨年12月20日に「議論の整理」を発出した。その内容は、医療必要性の高い患者や高齢者を対象に負担を増やすという、決して看過できない内容であった。一方で、受診時定額負担の導入、75歳以上の患者負担原則2割化、市販品類似薬の保険外し、介護保険における金融資産等の保有状況を反映させた負担制度の医療保険への導入等は、「引き続き検討をすすめる」として具体的な提案を見送りにしている。しかし、これらの提案のいくつかは過去に何度も俎上に載せられてきた。

 受診時定額負担は、「高額療養費の負担上限を引き下げるための財源」約1400億円を捻出するためとして、2011年に「ワンコイン(100円)」を前提に検討されたものの、医療界や多くの国民の反対で導入を断念させた制度である。今回は「かかりつけ医普及」が理由というが、財務省の財政制度等審議会が11月に公表した「建議2016」からは、登録医制度の導入との抱き合わせの意図が容易に見て取れる。

 市販品類似薬の保険外しについて「経済・財政再生アクション・プログラム2015」では、スイッチOTC化する医療用医薬品を増やすとともに、それらに係る保険償還率の在り方については今後関係審議会等で検討し、法改正を要するものは2017年通常国会への法案提出を進めるとしている。

 いずれの企ても、医療保険部会では「反対」「慎重」「時期尚早」の意見が多数を占めたものの財務省財政審、経済財政諮問会議、日本経団連等が執拗に導入を求めている項目である。この改悪を阻止するためには、医療関係者は元より国民にも、これらの制度についてどのような議論がされているのかを知らせ、自分のこととして理解を求める取り組みが重要となってくる。

 今後は、法案が審議される4月から6月に向けて世論を高めるとともに、医療・介護をはじめとする多くの団体と共同し、改悪阻止に向けた取り組みを強めていく必要がある。


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