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 第2回 保団連代議員会
   本会発言通告 及び 保団連執行部答弁要旨                                                                    


  小笠原俊一会長発言  


患者負担増計画阻止の運動拡充を
 社会保障制度審議会医療保険部会が昨年末に発出した「議論の整理」では「70歳以上の高額療養費の負担限度額の引き上げ」「後期高齢者の保険料軽減特例措置の廃止」など高齢者に負担を強いる項目のほか、「かかりつけ医以外の受診時の定額負担導入」「市販類似薬の保険外し」など全ての世代に新たな負担を求めることを明らかにしている。また、将来的にはマイナンバーを活用し、介護保険と同様に個人の保有資産の応じた負担のあり方を検討する方針にまで言及した。

 世代間・世代内の負担の公平等の観点から見直しを検討したとしているが、世代間の健康リスクは当然ながら格差があり、単に収入のみで公平性を判断するのは不適切である。今年の通常国会から上程されるこれらの改悪法案の成立阻止に向け、「ストップ!負担増」の運動をさらに拡大、推進していく必要があるのではないか。

保団連 武村副会長 
 高齢者負担増、ひいてはすべての年代の負担増につながる政策であることは間違いない。これらの負担増計画を広く国民に知らせ、医療・介護の負担増を阻止すべく運動していく必要がある。他医療団体との協同と署名活動の強化をしていきたい。


医師偏在解消に向けた解決策を
 医師偏在対策について、昨年6月、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」で出された中間とりまとめでは、医療計画による専門医数の調整や保険医の配置・定数の設定、自由開業・自由標榜制の見直しなどが打開策として提案されている。今後新専門医制度による研修期間の長期化や地域医療構想に伴う医療機能の集約化等が進めば、医師偏在はさらに深刻化されることが想定される。加えて、医師の勤務時間等、働き方も含めた検討が必要との指摘もあり、課題は山積している。

 こうした状況を改善するには、医師の自主性が確実に保障され、地方における研修の充実化、地域医療に関する医学教育の取組み、労働環境の整備等に国が政策・財政の両面で積極的に支援していくことが望まれると考えるが、保団連としての方針及び解消案を示していただきたい。

保団連 聞間理事
 保険医の配置・定数の設定、自由開業制の見直しなどは医師の自発性、自主性の障害となるものである。研修における問題、医師の勤務時間の問題など、多岐にわたる課題については、国の財政支援が不可欠であり、国に対して強力に求めていく。


  加藤康夫副会長発言  


「かかりつけ医」制度の阻止を

 厚労省は「かかりつけ医の普及を図り、かかりつけ医が患者の状態や価値観も踏まえ医療をサポートする『ゲートオープナー』機能を確立する」として、かかりつけ医の制度化に向け動いている。昨年の社会保障審議会では、普及促進を目的に、かかりつけ医以外を受診した場合には定額負担を求める制度を打ち出した。フリーアクセスに制限を掛けることで、重複受診の抑制や残薬管理を徹底し医療費の削減を図るのが狙いとされている。

 一方、医師に関してもイギリス型のかかりつけ医制度(GP)が導入されれば、登録制、人頭払い制への糸口となり、ゲートオープナー機能を要求されることで医師(登録医)の資格問題に発展することも懸念される。また、「患者の価値観」にも触れており、リビングウィルなどセンシティブな問題にも介入しなければならない可能性もある。

 患者の人権を考える上で、医療を受ける選択権は重要な権利であり、医療費の削減を目的にフリーアクセスを侵害することは許されないと考えるが、保団連の考えを示していただきたい。

保団連 三浦副会長 
 国は「かかりつけ医」制度によって、フリーアクセスを阻害しようとしている。特に受診時定額負担は、受診抑制と保険医定数制につながるものであり、断固反対していく。


介護療養病床廃止再延長と慎重な議論を望む
 平成29年度末に廃止の介護療養病床の転換先として、厚労省より新たな施設となる医療機能を内包した施設系サービスを設けることが示され、現行の介護療養病床の機能を維持し、さらに生活施設としての機能を兼ね備えたサービスを提供するとしている。しかし、利用者像を療養機能強化型AB相当と一定の重度患者を見込む(機砲了楡澆砲いては、人員基準は現行より緩和され、充分サービス提供が可能な体制といえるのか疑問が残る。また、日常生活サービス部分が患者負担として切り離されないか、さらには逼迫する介護保険財政の中で十分な報酬が担保されるのかなど不透明な部分が多い。

 近い将来、多死の時代を迎えるにあたり、見取りの場所の確保は喫緊の課題であることは論を待たないが、拙速な対策は患者の療養環境の悪化を招くばかりでなく、医療者に人員面、財政面で負担を強いることになりかねない。まずは現行の介護療養病床の廃止を再延長し、必要な介護保険財源を充分に確保した上で、あるべき療養病床の形を慎重に検討するよう国会はじめ関係各機関に積極的に働きかけてほしい。

保団連 安藤理事 
 中医協でも1月25日から次回改定に向けた議論が開始され、「療養病床のあり方に関する審議会」等で取りまとめた論点を基に、25対1療養病棟の厳格化を狙っており、今後は医療区分割合など診療報酬での抑制が加速される恐れがある。

 しかし、介護療養病床や25対1看護の医療療養病床は、現在も地域で重要な役割を果たしている。保団連ではこれまでも廃止の再延長と診療報酬、介護報酬の引き上げを要望してきたが、今後さらに運動を強める。


  野川哲義副会長発言  


技工士問題の今後
 保団連は昨年、「2016年歯科技工所アンケート」を行い、12月には国会内で開催された「第3回歯科技工問題を考える懇談会」で、アンケートの結果を報告し歯科補綴存続の危機を訴えた。

 「技工士問題」の改善・解決に関する保団連の見解として「歯科診療報酬の大幅なアップなくして、歯科技工問題の解決はない」に留まっており、専門部署における十分な協議を経ての具体的な対案の提示や全国的な運動の方向性が定まっていないように思われる。

 10年程前の国民の理解を得た「保険で良い入れ歯を」の運動においても同様の見解が示されたが、この運動の成果として、歯科診療報酬において義歯の点数が大幅に増加したものの、それに関する歯科技工料のアップが全国的に行われたということはなかった。

 保団連は、今回の問題解決に関し同様のスタンスを取っているが、歯科診療報酬がアップすることにより歯科技工料が連動してアップするという具体的な根拠について、改めてご説明いただきたい。それが明確でなければ、過去の過ちを繰り返すことにならないか危惧している。

保団連 馬場副会長
 今回行ったアンケートから様々な問題が浮き彫りになった。各県の技工士会に送付したところ、多くの反響があった。歯科医師と歯科技工士の協同が不可欠であり、ぜひ各協会でも懇談等、運動を強めていただきたい。


歯科医療保険への予防概念の導入
 厚労省の保険者による健診・保健指導等に関する検討会での取りまとめ資料(H28年1月6日)の中の、予防・健康づくりに係る指標に「がん検診や歯科健診など」と、初めて「歯科健診」という文言が出てきた。

 現在、事業所検診でも歯科健診があり、後期高齢者の歯周疾患検診も補助金の下で始まっている。このように国は、予防・健康づくりを保健事業として進めていく構えだが、がん検診や歯科健診及び特定健診・特定保健指導などは、全体として市町村の実施率や受診率が低調であること、医科、歯科医師会の委託事業ということもあり、なかなか進んでいないのが現状である。

 現行の健康保険法における療養の給付は、疾病の治療のみに限られている。疾病を早期に予見し早期治療を間断なく行うことは、病気の重篤化や再発防止とともに医療費の軽減に繋がることは明らかである。国が推し進めようとしている保健事業での検診・健診だけではなく、疾病は起こり得るものとして早期発見を含めた予防概念を疾病の前段階として捉え、医療保険に検査(各唾液検査、細菌検査など)やオーラルフレイルの啓発・指導などを導入するなど、新たに療養の給付に予防概念に基づく処置等を導入し、国民の予防・健康づくりを促進させていくべき時期に来ているのではないか。

保団連 新井理事
 この間の改定では、周術期口腔機能管理や初期う蝕治療をはじめ、「疾病の重症化予防」との観点で新規保険導入がされてきたことは評価できる点であり、保団連として推進したい。

 観点は変わるが、2016年改定で新設された「有床義歯咀嚼機能検査」では、「咀嚼能力測定」として一種の唾液検査が保険導入された。ご指摘の疾病の早期発見・重症化予防を目的とした各唾液検査も技術的には保険導入の条件が整っているとも捉えられ、保団連改善要求案にも記載し、要請していきたい。
 


      患者負担増に歯止めを!                                                       
           保団連 第2回代議員会を開催―

 全国保険医団体連合会(保団連)は1月29日、第2回代議員会を開催し、全国から代議員、事務局など総勢284名が参加した。代議員会では活動報告・方針をまとめた会務報告案、2017年度予算案等を審議し全会一致で採択。本会からは小笠原俊一会長、加藤康夫、野川哲義両副会長が代議員として参加し、執行部に発言を行った。

 


 


 冒頭の会長挨拶で住江憲勇保団連会長は、安倍政権下の国民生活について「公的給付の削減、患者負担増により医療提供側と患者・国民ともに困難に直面しており、貧困と経済格差が拡大している」と批判。「国民の健康、命、安全、安心を守り改善させる政治に向かわせることが喫緊の課題」と訴え、本代議員会での取り組みの前進に期待を述べた。

 会務報告案では2016年度の活動報告と2017年度に向けた活動方針が示された。医療運動での成果として、第1に全国展開した「ストップ!患者負担増」署名運動が高い会員参加率を得たこと。また、こうした運動により負担増計画の一部見送り、当初予定の引き上げ幅を縮小させた等の成果を強調。保団連が実施した「受診実態調査」や「歯科技工士アンケート」などの調査活動は、マスメディアにも大きく取り上げられ、社会的影響力の拡大を示すものと評した。2017年度へ向けた取り組みとしては、まずは診療報酬・介護報酬同時改定で引き上げを勝ち取ること。さらに、「医療・社会保障総がかり行動」として、医療界だけではなく、国会・地方議会、マスメディア、国民など広い層に働きかける活動を提起。その中で、患者負担増の阻止、医療費抑制策への対策などを具体化する方針が述べられた。

 討論では全国の保険医協会・医会から120の発言が行われ、執行部が答弁した。本会からも3名の代議員から、患者負担増計画、医師偏在対策、歯科技工料問題等、6題の発言が行われた(詳細は本会発言及び保団連答弁要旨参照)。討論終了後、会務報告案、2017年度予算案の両議案ともに採択された。

 また、9月から開始された「クイズで考える私たちの医療」のクイズハガキの景品抽選が行われた。ハガキは全国から約4万枚もの応募があり、住江会長など役員が抽選し当選者が確定。ハガキに添えられたメッセージが紹介された。

 最後に、患者負担の大幅引き下げなど14の要求項目を盛り込んだ「格差と貧困を是正し、医療・社会保障の充実・発展を求める決議」と、診療報酬の10%引き上げ等を求める「診療報酬引き上げを求める特別決議」が提案され、拍手により満場一致で承認された。


「亡霊」のように甦る給付に抑制策にノー


 先月25日の社保審医療保険部会(以下、部会)は、かかりつけ医以外を受診した患者に定額負担を求める仕組みの導入について、政府の方針を受け、検討を継続する意向を示した。

 これは、政府の「経済・財政再生計画改革工程表」に盛り込まれ、昨年1月20日の部会で方向性が確認された。また、5月26日の部会では経団連の委員から検討要望が出され、参院選後の7月27日の自民党の小委員会では受診時定額負担を「制度化すべき」とした。

 周知の通り、「定額負担」の議論は、今に始まったものではない。2005年に小泉政権下の経済財政諮問会議で「保険免責制」として、難病公費医療の対象拡大の財源の名目で提案された。さらに、2011年には「社会保障改革に関する集中検討会議」で高額療養費の財源確保を理由に「受診時定額負担」が持ち上がった。この際には、本会をはじめとした医療関係団体が一丸となって、国民を巻き込んだ議論を巻き起こし、廃案に追い込んだ。

 このように、これまで何度も「定額負担」が取り沙汰されてきたが、その理由は一貫していない。というのも、これらの本質は一貫して「給付抑制」そのものに他ならないからだ。さらに、「保険給付は将来にわたる7割給付を維持する」と明記されている法律附則を無視した給付抑制であり断じて容認できない。

 今回の定額負担導入の目的は、「かかりつけ医の普及」であるとしている。しかし、我が国の保険医は、以前からかかりつけ医としての機能を果たしてきた。今回厚労省は「かかりつけ医」の定義を示していない上、今後ゲートキーパー機能導入への足がかりになる懸念もある。今後の議論の経過を厳重に注視する必要がある。

 「定額負担」に限らず、社会保障の給付抑制策は、「亡霊」のように何度も甦ってきた。我々は、これらの政策に、その都度粘り強くノーを突きつけ、我が国の医療の根幹である国民皆保険制度を守っていく必要がある。本会活動への積極的参加をお願いする。


     2017年 差し迫る負担増                                                                
           政府の真の狙いとは――

 政府は、財政健全化という名目で医療費を削減するための更なる策を次々と発案している。その口実として「負担の公平性」を掲げ新たな負担増を求めているが、政府の狙いは負担の重いほうに水準を合わせ、すべての国民に負担を押し付けることにある。『2017年 医療・介護の大改悪がやってくる』に引き続き、差し迫る負担増計画について解説する。

 


 


 昨年12月20日、社会保障審議会医療保険部会は「議論の整理」を公表し、29年度予算審議に向けて、高額療養費制度の見直し等の患者負担増計画を打ち出した。

 今回の負担増を求める根拠として、政府は 崘齢でなく負担能力に応じた公平な負担」という世代間・世代内での負担の公平化と◆岼緡邸Σ雜遏丙濛陲汎院)の負担の公平」といった費用負担の公平化を挙げている。



世代間・世代内での負担の公平
 「議論の整理」では「年齢でなく負担能力に応じた公平な負担」を理由に、具体化を進める検討項目として高額療養費制度や後期高齢者の保険料軽減特例の見直しが提案された。

 高額療養費制度については70歳以上の患者負担上限額を引き上げる案を示した。更に、外来受診頻度等を勘案して70歳以上にのみ設けられている外来上限特例を現役並み所得者は廃止し、一般区分については制度を維持した上での上限額引き上げが提示された。このまま実施されると大幅な負担増が予想される(図1)。

▲図1 70歳以上の高額療養費制度の見直し案



 また、後期高齢者の保険料軽減特例は所得に応じ均等割部分を7割・5割・2割軽減する措置が設けられているところ、更に軽減措置を追加し、7割軽減を受ける者には9割あるいは8・5割軽減する等の措置をとっているが、その特例廃止を29年度から段階的に実施すべきとした。対象者は916万人と75歳以上の6割に上る。廃止されると保険料が3〜10倍に跳ね上がり、高齢者の生活に影響を及ぼすことは必至だ(表)。


▼表 後期高齢者医療保険料の負担増の実例

 

費用負担の公平
 27年に成立した医療保険制度改革関連法に伴い、「入院医療と在宅医療の公平」を口実に、28年4月より低所得者・難病等患者を除く患者の入院時の食事代の自己負担が引き上げられた。

 「議論の整理」でも65歳以上の医療療養病床に入院する患者の居住費負担を引き上げる提案が行われている。今回の見直しによって、医療区分気聾醜圓裡影320円から370円に、医療区分供Ν靴鷲蘆瓦覆靴ら1日200円に引き上げられ、最終的には370円の光熱水費相当額の負担増となる(図2)。このまま居住費負担が課せられた場合、28年からの入院時の食事代の引き上げと合わせると、27年時に比べ、2倍以上の負担増となる。




▲図2 入院時の居住費(光熱水費相当額)の見直し案 



更なる負担増

 政府のいう「負担の公平」とは負担の重いほうに水準を合わせ、すべての国民に負担増を押し付けるものであり、看過できない。国民が経済的負担を理由に受診抑制することなく、良質な医療を受けられることが重要であり、今後も動向を注視していく必要がある。

 厚労省は今回、結論を見送ったが引き続きの検討課題として、「負担の公平性」を根拠に「金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方」を打ち出すなど、更なる負担増の計画を目論んでいる。


「見送り」という罠  


 厚労省社会保障審議会医療保険部会は昨年12月20日に「議論の整理」を発出した。その内容は、医療必要性の高い患者や高齢者を対象に負担を増やすという、決して看過できない内容であった。一方で、受診時定額負担の導入、75歳以上の患者負担原則2割化、市販品類似薬の保険外し、介護保険における金融資産等の保有状況を反映させた負担制度の医療保険への導入等は、「引き続き検討をすすめる」として具体的な提案を見送りにしている。しかし、これらの提案のいくつかは過去に何度も俎上に載せられてきた。

 受診時定額負担は、「高額療養費の負担上限を引き下げるための財源」約1400億円を捻出するためとして、2011年に「ワンコイン(100円)」を前提に検討されたものの、医療界や多くの国民の反対で導入を断念させた制度である。今回は「かかりつけ医普及」が理由というが、財務省の財政制度等審議会が11月に公表した「建議2016」からは、登録医制度の導入との抱き合わせの意図が容易に見て取れる。

 市販品類似薬の保険外しについて「経済・財政再生アクション・プログラム2015」では、スイッチOTC化する医療用医薬品を増やすとともに、それらに係る保険償還率の在り方については今後関係審議会等で検討し、法改正を要するものは2017年通常国会への法案提出を進めるとしている。

 いずれの企ても、医療保険部会では「反対」「慎重」「時期尚早」の意見が多数を占めたものの財務省財政審、経済財政諮問会議、日本経団連等が執拗に導入を求めている項目である。この改悪を阻止するためには、医療関係者は元より国民にも、これらの制度についてどのような議論がされているのかを知らせ、自分のこととして理解を求める取り組みが重要となってくる。

 今後は、法案が審議される4月から6月に向けて世論を高めるとともに、医療・介護をはじめとする多くの団体と共同し、改悪阻止に向けた取り組みを強めていく必要がある。


     2017年 医療・介護の大改悪がやってくる                                                                                                                                                 


 2015年6月に公表された「骨太方針2015」は、医療をはじめとした社会保障費の削減を重点課題とした「経済・財政再生計画」を掲げたが、社会保障についての44の「改革項目」のうち、医療・介護分野は38項目にのぼる。これに基づき、「患者負担増計画」について検討してきた厚労省社会保障審議会医療保険部会は、昨年12月8日に「議論の整理(案)」を示した。2017年が焦点となる大改悪計画である。主なものは以下のとおりである。 

 


 

入院時の居住費負担の拡大
 「医療・介護を通じた居住に係る費用負担の公平化」の視点から、入院時の居住費(光熱水費相当)は、65歳以上の療養病床について、医療区分気錬影320円から370円に引き上げる。さらにこれまで負担のなかった医療区分供↓掘米馼卒擬圓鮟く)の患者に対しても、居住費負担を拡大し、2017年10月から200円、さらに2018年4月からは370円に引き上げる。医療療養病床の入院患者20万人が影響を受ける。なお、一般病床や精神病床等への拡大は見送られた。


70歳以上の患者負担上限額の引き上げ

 70歳以上の高額療養費制度の限度額は、「現役並み」「一般所得」について引き上げ。方向性として、段階的に引き上げて2018年までに「現役並み所得者」は、現行の4万4400円を所得に応じて限度額を引き上げる。「一般所得者」についても、外来では2万4600円まで引き上げる案と据え置きを求める意見があり、今後さらに検討される。医療保険加入者比率でみると、70歳以上の少なくとも60%近くが引き上げの対象となる。


後期高齢者医療制度の保険料軽減特例措置の廃止
 「経済・財政再生計画」の改革項目ではないものの、これまで低所得者を対象としてきた後期高齢者医療制度の保険料軽減特例措置を廃止する。2020年までに段階的に引き上げていく。これにより、約943万人が影響を受けるとされている。


具体化を見送られた項目
 一方で、「引き続き具体的な検討をすすめる」として、具体化が見送られた項目もある。「かかりつけ医普及を理由とした受診時定額負担の導入」では、病院の外来受診時の定額負担に関し、現行の選定療養による定額負担の対象の見直し(対象拡大)を提案。財務省財政制度等審議会は、登録医制度導入と絡めて患者負担増を提案している。

 市販品類似薬の保険外しについて、スイッチOTC化する医療用医薬品の患者負担率の引き上げについては、積極的な意見は出なかった。75歳以上の窓口負担原則2割化は、2018年までに導入について結論を出すとしていて、財務省や経団連などが積極的に導入を提言している。また、参照価格制度の導入については、関係審議会等において、2017年を目処に結論を得るとしている。


今後に向けて
 今回出された「議論の整理(案)」の方向性はあくまでも(案)であり、これらの負担増が決まったわけではない。今回の提案は18年度予算審議から反映される。あわせて、医療保険部会、財務省財政制度等審議会、経済財政諮問会議などでも患者負担増の議論が続く。今回、具体化された負担増計画の根拠は、「負担の公平」であるが、結局すべての世代が負担増になる乱暴な議論が繰り返されている。

 本会は、負担増計画を許さない取り組みにさらに力を入れる。会員諸氏のご協力をお願いしたい。

 


 

 

  新春のごあいさつ

 

 一般社団法人 北海道保険医会

         会長 小笠原 俊一

 
 
 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 会員の皆様のご理解とご支援をいただき、北海道保険医会は地域医療の充実と地域住民の皆様の健康を守る力強い味方として着実な歩みを続けています。そして、地域の行政や医師会や歯科医師会に対しても、北海道の医療の現状や様々な医療政策の分析や意見・批判を発信し、参考や検討をいただいています。

 政府与党は自らアベノミクスと称して円安と株高を演出して景気回復を図ろうとしましたが、雫のようにトリクルダウンをもたらすはずの税収は今期2兆円も減少、その原因は安倍経済政策の失敗ではなく円高のせいだと言い訳する始末です。

 この3年間の社会保障費の増加を毎年5000億円程度に抑えるため、6400億円の今年の自然増を1400億円抑制しようとしています。17年度は診療報酬改定がないため、後期高齢者の高額療養費負担を現役水準にしたり保険料軽減特例を廃止する、国保安定化財源を見送る、窓口負担に定額負担の導入などが検討されています。これらが実行に移されれば、今でさえ貧困の只中にいて受診を抑制されている高齢者がどうなるかは火を見るより明らかです。私たちは、常に警戒の目を注ぎ反対の声を広げていきます。

 海外では、中東の悲惨なテロや戦闘が泥沼化し、英国はEUを離脱、ヨーロッパ各国ではポピュリズム反対を隠れ蓑にした右翼・国家主義政党が力を伸ばしています。北朝鮮の核武装化、アジア各地で覇権を狙う中国との様々な摩擦が増えています。米国ではトランプ氏が大統領になり保護主義や右傾化が懸念され、安倍政権が固執するTPPは反故にされ窮地に陥る可能性すらあります。

 我が国の社会保障費の国庫負担率が低くても医療水準は世界一なのです。高齢者の医療費増は当然のことであり、それを保険制度で賄う仕組みは自然なことです。今の日本は、一部の大企業だけが恩恵をうけ、多くの国民が格差と貧困の渦中にあります。医療・社会保障制度の立て直しをという願いとともに、年齢や貧富に関わらず国民の生命と健康を守るという使命達成のため、保険医療の充実と国民皆保険制度の堅持、保険医の生活と権利を守る活動をより活発化していきます。

 本年が会員の皆様方にとって新たな飛躍の年になりますようご祈念申し上げ、新年のご挨拶といたします。

 


 

   介護保険制度                                                            
       総報酬割の導入―

 社会保障審議会介護保険部会(以下、部会)では現在、次期介護保険制度改定に向けて、利用者負担や費用負担のあり方について議論が進められている。利用者負担では高額介護サービス費について議論され、費用負担では介護納付金への総報酬割の導入が検討されている。その中で、今回は総報酬割について解説する。

 


 


総報酬割とは

 介護納付金は現在、各保険者の加入者の人数で負担を配分する加入者割が導入されている。厚労省は部会の中で、現在の加入者割では一人当たりの報酬額が最小の保険者(平均年収234万円)と最大の保険者(930万円)を比較すると、介護納付金の割合はそれぞれ2・6%と0・7%になり、4倍近い格差が生じていることを指摘し、総報酬割の導入を提案している。

 総報酬割とは加入者の所得に応じて保険者に負担を配分する手法であり、能力のあるところには多く支払ってもらうという発想がベースになっている。もし総報酬割が導入されると、総じて所得レベルの高い健保組合や共済組合の負担は増え、逆に中小企業のサラリーマンなどが多く入っている協会けんぽは負担が軽くなる。厚労省の試算では、健保組合の加入者は労使合計で保険料が月平均727円増の5852円、共済組合も1972円増の7097円となり、その一方で協会けんぽ加入の中小企業等は241円減の4043円になるとしている(図)。

図 介護給付金に総報酬割を導入した場合の負担の変化 (社会保障審議会介護保険部会資料より)


 
導入に賛否両論

 部会の中で、佐野雅宏委員(健保連副会長)は「総報酬割は絶対に反対」と言及し、医療保険制度の後期高齢者支援金にも総報酬割が導入されたことを挙げて、「現役世代の負担が増大する」と訴えた。

 一方、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「保険者ごとに報酬額に大きな違いがあるにもかかわらず、同額の負担をしているのは不合理な仕組み」と指摘し、「後期高齢者支援金への総報酬割の導入と同様に段階的に導入すべき」と提言した。また、土居丈朗委員(慶応大教授)は、「社会保険料の負担は逆進性があり、介護納付金の加入者割も逆進性を助長している」と説明し、「加入者割のまま維持し続けてよいのか」と現行制度を批判した。

 

抜本的な改革を!

 後期高齢者医療制度は創設当初、現役世代が支払う後期高齢者支援金には加入者割が導入されていたが、2010年度より3分の1を総報酬割、残りを加入者割とする負担方法に変更された。その後、社会保障制度改革国民会議等で全面導入が協議され、来年度からは全面的に総報酬割が導入される。その結果、大企業社員や教員など6割以上の健保組合で負担が増える見込みである。その一方で、協会けんぽは2400万円の負担減となるが、その分は公費から減額するため保険料は下がらない予定だ。さらに、厚労省は協会けんぽの負担が減る分、投入している公費を削減して、それを国保の赤字に充当したいと説明している。

 今回の介護納付金への総報酬割導入においても、厚労省は全面的に導入した場合には協会けんぽへの国の負担が約1600億円、2分の1導入で約700億円、3分の1導入では約500億円が削減できると説明している。

 介護保険制度を維持していくためには財源問題は避けては通れないものの、長期的視野に立った抜本的な改革が必要であり、公費を削減して国民のみに負担を押し付け合う一時的な政策は看過できない。今後の動向を注視していくことが重要である。


 

 

 


 


   社会保障改悪阻止の大運動を                                                           

 2017年度予算編成作業が進んでいる。医療・社会保障分野では財務省主導で、自然増を大きく削り込み、国民に負担を押し付ける案が目白押しだ。   


 政府は16年から18年の3年間を集中改革期間と位置づけ、社会保障の自然増を年間5000億円程度に抑えるために、あらゆる世代に負担増を押し付けようとしている。図のように医療・介護などの改悪案が山のように出されているが、特に17年度が焦点になっている。
 

<中・低所得者にも大きな影響>
 厚労省の70歳以上の高額療養費見直し案は表のようになっている。1200万人を超える、年収370万円以下の課税世帯に大きな影響を与える。

<75歳以上の保険料>
 元扶養家族だった人は軽減措置により月380円だったものが、17年から1890円、18年からは3770円プラス所得割となる。また、年金収入が153万円から211万円の人を対象とした所得比例部分の5割軽減も廃止される。


<その他の負担増>
 医療療養病床の入院患者21万人の光熱水費を一律370円に引き上げる。介護保険では「要介護1、2」の人に対する生活援助サービスや福祉用具貸与を保険給付から外す案は見送られたものの、65歳から74歳の利用料を原則2割とし、年収383万円以上は3割にするとしている。


<今後の運動>

 こうした負担増計画に対し、社保審医療部会でも反対や慎重な対応を求める声が出されている。様々な医療団体や全国老人クラブ連合会なども反対の声を上げている。本会や保団連では来年の通常国会に向けて大規模な署名運動を予定している。会員諸氏のご協力をお願いしたい。

 



「公平」を口実にした大改悪は止めよ

 
 公平とは、おおやけに見てかたよらず同じように扱うことである。公正にもつながる。今この言葉を逆手に取り、社会保障の改悪が進められている。

 政府は来年度の予算編成に向け、社会保障の切り捨てを露骨に打ち出している。高齢者の負担上限、入院時の居住費負担、介護保険利用料や保険料などの引き上げ、年金支給年齢の引き上げ・給付制限など、枚挙にいとまがないほどだ。

 これらの口実に使われるのが公平である。高齢者の高額療養費制度の見直しでは、「高齢者と現役世代の負担の公平化」、入院時の居住費負担については「入院医療と在宅医療の公平性の確保」等々。改悪の歴史は、まず一部で負担引き上げや給付制限を行い、次に、公平化のため、改悪したその基準に合わせることを常套手段にしてきた。

 今回の改悪案では70歳以上の窓口負担は、年収370万円以下の一般所得家庭で1万2000円が最大5万7600円となる、この影響を受ける人は1200万人を超え、中・低所得者にも大きな影響を与える。年収が370万円以上の現役並み所得者の場合、4万4400円が所得水準に応じて最大25万7600円と急増する。入院時の入居費負担では2015年の2万3400円から2倍以上に負担が増える。

 「高齢者は既に弱者ではない」「高齢者は裕福である」という言葉が流布されている。しかし、最近の様々な調査では、高齢者の4分の1は生活保護基準以下の貧困層と言われている。また、高齢者は現役世代よりも受診回数が多く、一回の窓口負担を同じにすれば総額として大きな負担を強いられる。厚労省の年齢階級別調査でも、64歳以下とそれ以上の医療費自己負担額を比較すると、前者は平均3・62万円、後者は8・04万円となっている。高齢者はすでに倍以上の自己負担を払っている。今回の改悪が公平から外れているのは明らかだ。

 世代間の対立をあおり、公平化を口実にしたこれ以上の負担の押し付けは許されない。



 「TPP協定」発効は困難に―
  世論不在の承認、批准は許されない                                                              
                                          

 環太平洋連携協定(TPP)は、米国の次期大統領選挙で「TPP離脱」を訴えた共和党トランプ氏の当選で発効が困難な状況となった。政府・与党が早期の批准に向けて、多くの問題を放置したまま承認案と関連法案の審議で強行突破をはかる姿勢は国会軽視の横暴であり、国民から疑問と批判の声が高まっている。

 


 

 
 TPP承認案・関連法案の審議に関しては、10月26日、衆議院特別委員会が地方公聴会を札幌市と宮崎県で開催。「十分な審議を」「強行採決には断固反対」「国民への説明責任を果たすのが多数派の責務」など意見が相次いだが、与党は11月4日、同委員会で採決を強行し可決。翌週8日の米国大統領選挙の結果「TPP発効は困難」との報道にもかかわらず、10日には衆議院本会議で不適切発言の続いた山本農水相の不信任決議案を否決し、自民、公明、日本維新の会など賛成多数で可決した。さらに翌11日からは審議の場を参議院に移し、会期延長も視野に承認を確実にする構えを示した。共同通信社の10月末の全国世論調査では、66・5%が今国会にこだわらず「慎重審議」を求めたが、審議に関する一連の流れは「数の力」による強権的な議事運営との批判を免れない。

 TPPが医療分野に及ぼす影響について、本会ではこれまで「混合診療の解禁」「営利企業の医療参入」「民間保険の拡大」「医薬品・医療機器の流入自由化による価格高騰」など、多くの問題点を指摘するとともに、街頭宣伝行動や医療フォーラムなどで患者・道民に危険性をわかりやすく訴え続けてきた。

 中でも医薬品に関しては、TPPは参加国の公衆衛生の保証条項を骨抜きにして、外国籍製薬企業の利益のために知的財産権の保護措置を盛り込む形で制度改正を強いることにつながり、薬価高騰による患者負担や医療保険財政への影響で国民皆保険制度の形骸化が危惧されている。

 トランプ次期大統領は来年1月の新政権発足へ向け、移民政策を中心に医療保険制度改革(オバマケア)、環太平洋連携協定(TPP)などオバマ民主党政権がレガシー(政治的遺産)とする政策を根本から見直す構えだ。安倍首相は「我が国がTPP協定を承認し、自由で公正な貿易・投資ルールを牽引する意志を示せば保護主義を食い止める力になる」と述べ、11月18日、渡米しトランプ氏と初の会談を行なった。しかし、同盟国としてトランプ氏が強硬な発言を控え現実路線への軌道修正を促せるかは全くの未知数だ。

 TPPは農業をはじめ国内産業と国民生活に幅広い影響を及ぼす協定である。政府・与党は参加12カ国の国内総生産(GDP)が世界の4割を占める巨大貿易圏が誕生する経済的メリットを強調するが、成長戦略の切り札も米国の承認がなければ協定は発効しない。

 政府・与党には国民の疑問や不安に対する説明責任がある。世論不在のTPP承認、批准には断固反対する。

 

 


薬剤費高騰をもたらすTPP批准を断固阻止


 環太平洋連携協定(TPP)の批准・発効に向けた動きが本格化している。本協定は法律的観点からも問題点が多く、基本的人権や生存権など国民の権利が侵害される恐れが指摘されている。我が国の医療制度への影響について、政府は国会審議などでしっかり説明する責務がある。

 厚生労働省が公表した2015年度の概算医療費は41・5兆円、対前年度比は+3・8%であり、薬剤料(院外処方のみ)の寄与が1・5%と推計された。診療種目別でも薬剤料が11・3%の高い伸びを示し、医療機関の費用構造での医薬品比率も上昇している。日本医師会は「医療費に占める薬剤料の比率が上昇する一方、限りある財源の中で人件費の割合が縮小している」と危機感を表明している。

 そもそも総薬剤費の半分を占める新薬の薬価決定は極めて不透明である。新薬の薬価は厚労省の薬価算定組織が決定しているが、公文書としての議事録もなく、厚労大臣でさえ決定過程の検証ができないとされる。新薬の薬価算定は、類似薬がない場合は「原価計算方式」、ある場合は「類似薬効比較方式」が採用される。新規性がある場合には多種の加算が行われ、その中の有用性加算の場合、その評価判断により5〜60%の幅があり、メーカーの介入や担当者の裁量で決まる構図とされ、日本の高薬価の一因とされる。

 この薬価に更なる影響を与える問題として、TPPでの特許権を強化する知的財産権の条項がある。巨大製薬会社が保険適応や薬価決定プロセスに影響力を強め、高薬価を独占的に維持し、保険財政を圧迫し皆保険制度の維持を困難にする恐れがある。多国籍企業の利潤確保を最優先するアメリカ基準が国民生活に持ち込まれた時、我々の生活に及ぼす影響は計り知れない。

 日本の皆保険制度は誰もが低価格で高品質な医療サービスを享受でき、国民の安全や安心を支え、日本の経済成長の源泉であった。本会は、薬剤費の高騰や医療制度に悪影響を及ぼすTPPの批准に断固反対する。


   道内市町村の子ども医療費助成制度                                                                 

地域格差のない充実した制度の実現を―


 本会は9月に道内の全市町村を対象に子ども医療費助成制度の実施状況についての調査を行った。本調査は全国保険医団体連合会(保団連)が「子ども医療費無料制度創設」に向けた運動の一環として、全国の自治体における助成制度の実施状況を把握する目的で実施したもの。調査の結果では、ほとんどの自治体で独自の助成制度を実施しており、今年4月以降に、さらに制度の拡充を行ったのが23市町村あることが分かった。保団連では、全国での調査結果をもとに、厚生労働省への要請やマスコミ発表などを通じ運動を進めたい考えだ。

 

各市町村の助成制度の実状
 調査では各自治体の実施内容及び今年4月以降の改正の有無等について回答を求めた。調査結果では136の自治体において、道の助成基準を拡大した独自の助成制度を実施しており、4月以降にさらに拡充を図った自治体が23に上ることが分かった(下表)。現在実施されている独自助成の主な内容としては、「給付対象年齢の引き上げ(136市町村)」、「全額助成(同129)」「月額上限額の緩和(同19)」などが主で、各自治体では少子化対策や若年人口の流入による過疎化解消に向けた看板施策として前向きな自治体も多い。一方、各市では助成対象を大半が義務教育年齢までとしているのに対し、町村では高校生まで拡充する自治体も多く、人口規模に伴う財政負担への影響等から制度内容にも大きな隔たりが見られた。


引き上げが続く入院時食事代こそ助成を

 4月から、入院時食事療養の標準患者負担額が一食260円から360円へと引き上られ(住民税非課税を除く)、さらなる患者負担増となっている。入院医療にかかる一部負担金は月額上限が4万4,400円で、これに加え30日間の入院では食事負担額が3万2,400円となり、合計では約8万円にも上る。さらに、平成30年4月からは一食460円への引き上げも予定され、家計への負担が重くのしかかる。入院時食事療養への助成は、現在でも38自治体しか対象としておらず、今後は入院時食事療養への対象拡大も要求項目として重視されよう。


子ども本位の制度を目指して

 本調査では、助成制度の内容が、各自治体間で大きな格差があることが明らかになった。乳児・学童期に十分な受診機会を与えることは、子の健全な育成に寄与するだけではなく、地域の発展や将来の社会保障の在り方にも影響を与える。自治体の財政に左右されることなく、地域格差の無い充実した制度の実現が望まれる。

 また、長年医療費助成拡充の足かせとなっていたのが、助成制度を実施する自治体に対する国保補助金減額のペナルティー措置である。助成制度を設けて医療費を増加させた分はその自治体において負担するとの考えによるものだ。11月18日、厚労省の社会保障審議会医療保険部会ではこの制度の廃止を求める声が相次ぎ、医療費助成制度拡充への展望は開きつつある。

 保団連及び全国の保険医協会・医会では、この結果をもとに、助成制度の拡大、さらには子ども医療費無料化の実現に向けて国や関係機関等に働きかける方針だ。 

 


 



魅力あふれる実地教育で医師偏在解消を

 
 多くの医療機関から医師不足の訴えが続いている。

 医師不足・医師偏在問題を是正する対策として平成20・21年度から医学部定員を暫定的に増員した。平成28年度には過去最高の定員に達し、医師需給推計では平成34年に医師数は需要を上回るとされ、暫定措置は平成30年に終了予定である。

 日医は、平成27年12月、医師不足は医師の地域偏在、診療科間の偏在が本質であり、この対策として医師キャリア支援センター構想を示し、医学部入学定員の削減、新たな医学部設置認可の差し止めを求めた。

 一方、医療従事者の需給に関する検討会(以下、検討会)は、医師偏在対策の年内とりまとめを予定している。

 かかりつけ医、女性医師、医師の高齢化による医師需給への影響は不明であり慎重な判断が必要だ。また、医師確保が必要な地域や診療科への従事を要件とする「地域枠」等の措置でも偏在は解消されていない。

 平成28年10月JCHO理事長 尾身氏は「『専門医のあり方に関する検討会報告』は医師偏在への配慮が不足していた。『診療科偏在』対策として専攻医の各診療科別医師数と『研修枠』の設定。『地理的偏在』対策として、地域ごとの医師確保の目標数、保険医登録時に一定期間医師不足地域での勤務を課す管理者要件の設定が必要だ」と述べた。

 厚労省は、都道府県の調整等に関する権限を強化し、診療領域ごとに地域人口、症例数等に応じた地域枠の設定、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めた検討等の構想を示し、医師管理統制の思惑が見え隠れしている。

 我国の医学部卒業生は世界的に見ても非常に少ない。10年後には重症化した高齢者が今以上に増加する。若い医師が育たなければ高齢医師が重症の高齢者を診療することになる。医師偏在の解決は管理統制ではなく、医学生が地方に出向き、地域医療の必要性や魅力に触れる実地教育や適切な支援そしてインセンティブが必要だ。


 2017年度予算編成が本格化―
   負担増・給付減の政策を斬る!                                                                 
                            


 財務省は10月4日の財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=吉川洋・立正大教授)で、16年度からの3年間で社会保障費の伸びを1兆5000億円程度とする「骨太方針2015」の達成を確実にするため、経済・財政再生計画改革工程表で示した検討項目をできる限り前倒しして改革を実現すべきと提言した。

 


 

 財務省は日本の医療・介護制度に関して、フリーアクセス・自由開業制・出来高払い等の特徴のため、患者側からは低負担でコストを明確に認識できない、また医療機関側からは過剰なサービス提供が行われやすく、「医療や介護費の増大を招きやすい構造」と指摘している。

 国民皆保険を維持し、制度を持続可能なものとするため、以下の4つの視点で改革を進めるべきと提言された。々睥隹修凌陛犬鯑Г泙┐唇緡邸Σ雜酊鷆‖寮の確保、大きなリスクは共助・小さなリスクは自助、G齢ではなく負担能力に応じた公平な負担、じ定価格の適正化・包括化等を通じた効率的な医療・介護、が挙げられている。

視点
・外来の機能分化を進めていくため、一定の要件を満たす「かかりつけ医」以外を受診した場合の受診時定額負担(診療所は低額、病院は規模に応じ高額に設定)を導入すべき。

・地域医療構想や医療費適正化計画に沿った医療提供体制や診療報酬の特例の活用を検討すべき。

視点
・入院時生活療養費については、在宅療養等との公平性を確保する観点から、難病患者・小児慢性特定疾患患者等を除く全ての病床について、居住費(光熱水費相当)の負担を求めるべき。

・長らく市販品として定着しているOTC医薬品に類似する医薬品は、保険給付から外すか、保険給付として残すのであれば、一定の追加的な自己負担を求めるべき。併せて、医療用医薬品のうち安全性等一定の要件を満たすものは自動的に市販品となるようなルールを明確にすべき。

・軽度者に対する生活援助については、介護保険の適用事業者に限らず、多様な主体が、利用者のニーズに柔軟に対応してサービスを提供していくことも可能と考えられ、地域支援事業に移行すべき。

視点
・高齢者の高額療養費について、速やかに外来特例を廃止するとともに、自己負担上限について、所得区分を現役と同水準とすべき。

・後期高齢者の保険料は、均等割の軽減特例については、速やかに本則の水準に戻すべき。また、所得割・元被扶養者の軽減特例についても廃止すべき。

・医療保険・介護保険における負担のあり方全般について、マイナンバーを活用して、所得のみならず、金融資産の保有状況を勘案して負担能力を判定するための具体的な制度設計について検討すべき。

視点
・高額薬剤(オプジーボ)については速やかに適正水準まで薬価改定を行うとともに、適正な使用に係るガイドラインの順守を保険償還の条件とすべき。

・高額薬剤の創出や大幅な適応拡大に対応するため、(1)保険償還の対象とすることの可否の判断、保険償還額の決定および薬価改定に際し、費用対効果を本格的に導入する(2)適応拡大等による大幅な医療費増加に適切に対応できるよう、薬価制度の見直しを検討すべき。

・日本では、高血圧治療に高価なARB系が多く処方されており、薬剤の適正使用の観点から、生活習慣病治療薬等については処方ルールを設定すべき。

今後の展開
 分科会委員の意見として、医療分野では「高額な医療については、負担能力が高い人の自己負担限度額を上げ、民間の医療保険でカバーする道を考えるべき」「かかりつけ医を持たない場合、自己負担割合を3割から4割に上げる方法もある」、また介護分野では「福祉用具の貸与額の地域差が大きすぎる」「事業者の利益も確保できるよう、混合介護の可能性を考える必要がある」等が出されている。

 今後、2017年度予算編成に向けた議論が本格化する。17年度概算要求では社会保障費の自然増は6400億円となっており、「伸びの目安」である5000億円を達成するための厳しい歳出抑制策が予想されており注視が必要である。

 


 第6回歯科市民集会 口から幸せになろう!
  保険で良い歯科医療の実現を訴え  

           技工士会・衛生士会も参加  

 10月29日、「口から幸せになろう!」をテーマに、第6回歯科市民集会を札幌市で開催し、一般市民・医療関係者など100人が参加した。基調講演にはモンゴル健康科学大学歯学部客員教授の岡崎好秀氏を招き、札幌歯科技工士会、北海道歯科衛生士会の協力のもと、体の健康と歯の健康の関係、歯科技工の実際と口腔ケアの重要性を伝えるとともに、保険で良い歯科医療を求める本会の活動を紹介した。


 はじめに野川哲義副会長は主催者代表として「本日は、口から食事をとることの大切さや口と歯の健康が長寿につながることを学び、日常生活の中で生かして頂きたい」と挨拶した。

 基調講演では、岡崎好秀氏が「おもしろ歯学〜口の中はふしぎがいっぱい」と題し、唾液と健康の関係や口から栄養を摂取すること・食べる意欲の大切さについて講演した。その中で、江戸時代の学者、貝原益軒(かいばら えきけん)の江戸時代を通じて大ベストセラーとなった健康図書『養生訓』(ようじょうくん)の紹介や、入れ歯をして元気になったロバの話、総入れ歯で長寿を全うした老人の話などを通じ、参加した一般市民にわかりやすく「笑顔で口からおいしく食べること」の意義・大切さについて述べた。



  続いて、札幌歯科技工士会の道垣内(どがいと)茂樹会長が「歯科技工士の仕事〜差し歯、入れ歯ができるまで」をテーマに、歯科技工士の業種と現状の説明をした。技工物の種類や実際の製作手順に関して写真を交え詳しく紹介し、歯科技工士の仕事への理解を求めた。また、別室では技工士会役員による歯科技工物の展示も行われ、説明に熱心に耳を傾ける一般市民が多く見られた。


▲札幌歯科技工士会の展示ブース

 集会の後半では、北海道歯科衛生士会札幌支部の松岡 円氏が、「お口の健康を守ろう!〜セルフケアのポイントと健口体操」をテーマに講演した。健康な口や歯の役割などの基礎から、口腔内の健康を保つために重要な「唾液腺マッサージ体操」、高齢者の誤嚥性肺炎を予防する食べ飲み機能の鍛え方「舌出しゴックン体操」を紹介し、ブラッシングの効能や磨き方のポイントを解説した。講演の最後には、歯科衛生士会マスコットの「歯ットくん」人形も加わり、参加者全員で「むすんでひらいて・健口体操」を行った。


▲参加者全員で行った健口体操

 

 引き続き本会の今上岳彦歯科部員が、保険医の立場から「保険で良い歯科医療を」をテーマに講演した。我国の国民皆保険制度に関して、医療保険制度の歴史的経緯、医科と異なる歯科の「保険と自費」の問題、国民医療費に占める歯科医療費の割合の推移、政府の医療費抑制政策により歯科医療が置かれる厳しい現状や問題点を説明した。その後、保険で良い歯科医療を求める本会の活動を紹介し、窓口負担の軽減、保険の効く範囲の拡充を求める署名活動への協力を呼びかけた。

 最後に、三浦 豊歯科部長が「歯や口の健康が全身の健康や生活にいかに大切か、そのために保険で良い歯科医療の実現を目指し今後も皆さんに情報を発信していきたい」と挨拶し、集会を終了した。

 


医療保険制度を歪める保険外併用療養の拡大

 
 保険外併用療養の拡大策として「患者申出療養制度」が始まった。厚生労働省の評価会議は、1例目となる胃がん患者への抗がん剤治療「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与並びにS‐1内服併用療法」の実施を承認し、10月に治療が始まった。

 承認されたのは、既に実施している先進医療の一種で、一定のエビデンスのある中での実施。適格基準から外れた患者が治療を希望した。しかし、対象患者が広がることで安全性の面で懸念が高まる。

 パクリタキセルの腹部への直接投与は、治療効果が高まると期待されるが、保険が適用されない。全額自己負担なら170万円程度。患者申出療養制度の適用でも患者負担は90万円ほどにもなる。経済的に余裕のある患者しか治療を受けることができない。

 政府内では保険外併用療養費の拡大をめぐる議論が広がりを見せている。「日本再生戦略」ではアメニティの向上を目指す医療機関のニーズに応え、産業の活性化を狙い、選定療養の拡大の方針を示している。最終的に成長戦略に資する視点がある。

 選定療養を拡大していくと、先進医療などが選定療養に組み込まれ、保険収載の可能性は失われる。結果的に公的保険給付範囲の縮小につながる。さらに、高い自己負担によらなければ、その恩恵を受けることができない。経済的な理由により選定療養が受けられない国民が生じ、不公平、格差が助長され社会的な問題が生じる。

 TPPの承認が審議されている折、米国が混合診療解禁を要求しないとの報道もある。しかし、これまでも日本の医療を営利市場として開放することを求め続けてきている。ISD条項の下、公正な競争が阻害されるとして提訴される可能性もある。保険外併用療養の拡大、混合診療の解禁への動きは、米国からの要求、国内規制改革が相まって、加速していく懸念がある。

 公的保険給付範囲の縮小に直結する保険外併用療養の拡大は、医療保険制度の歪曲の拡散につながりかねず、断じて容認できない。

 


政府は3割負担を堅持せよ

 
 財務省は財政制度等審議会に向けて、社会保障費の抑制に向けた独自の制度改正案をまとめた。厚労省が自然増6400億円と見積もっていた社会保障費の増加を、制度改正で約5000億円まで圧縮させようとしている。年末までに結論を目指していたが、参院選が終わり次々と負担増の政策が出されてきた。

 ここで気を付けなければならないのは、外来患者がかかりつけ医以外を利用する場合に、医療費に定額負担を上乗せする制度の導入である。政府は、定期的に健康管理の相談を受けたり、薬の必要以上の処方を防ぐため、かかりつけ医での受診を推奨している。2011年には、すべての病院の受診時に100円程度の負担増を求める案が政府内で議論されたことがある。

 今回はかかりつけ医以外の病院の受診に限定するとしているが、かかりつけ医へ誘導する対策と素直に受け取ることはできない。政府・厚労省が言うかかりつけ医とは、地域包括診療料、地域包括支援加算を算定する医療機関のことである。これは算定要件のハードルが高いため、結局全国の医療機関の95%はかかりつけ医以外になる。つまり、ほとんどの場合受診時定額負担が定率負担に上乗せになるため、患者負担が増加して実質3割を超える。たとえ100円の上乗せでも医療給付費削減額は千数百億円に達するという試算もある。

 これは受診抑制につながる恐れがある上に、健保法附則違反につながる。大幅な医療制度改革が行われた2006年の改正健康保険法の条文には、次のような付帯決議がつけられている。第1に、将来にわたり国民皆保険制度を堅持すること。第2に、医療に係る給付の割合は将来にわたり100分の70を維持するものとし、安易に公的医療保険の範囲の縮小を行わず公的医療保険の範囲の堅持に努めること。

 かかりつけ医以外に定額負担を課すと言う詭弁を用いた、政府・財務相・厚労省によるなし崩し的な3割負担のルール破りを絶対に許してはならない。


北海道の実情・地域特性に根ざした医療改革となるのか―

   北海道地域医療構想                                                                


 道は平成28年9月15日『北海道地域医療構想』(素案)を発表し、パブリックコメントを募集した。「医療ニーズが変化し、『病院完結型』の医療から『地域完結型』の医療に変わっていく必要性を踏まえ、それぞれの地域において、『競争』よりも『協調』により話し合いを進め、その地域の実情に合った高度急性期、急性期、回復期、慢性期、在宅療養や介護等に至るまで、切れ目のないサービスが提供される体制の構築を目指す」と謳われている。 
 


患者・医療資源は一極集中
 構想区域は、広域だが人口が分散する北海道の特性もあり、第二次医療圏及び高齢者福祉圏域と同じ21区域とされた。

 現状では、二次医療圏どころか、高度で専門的な医療サービスを提供する単位の三次医療圏さえも飛び越しての患者の流出入が入院・外来ともに認められ、ハード・ソフトともに医療資源の札幌一極集中が明らかになっている(図)。




急性期病床の大幅削減
 2014年より病床機能報告制度が実施されており、各医療機関は病棟が担っている医療機能を自主的に選択し報告。2015年病床機能調査(許可病床数)では高度急性期7778床、急性期3万6806床、回復期5868床、慢性期2万6653床、その他合計で7万9585床、今回の推計では7万3190床と10年間で6000床強が削減される見込みとなる(表1)。


 現状との大きな違いは急性期と回復期病床数にある。急性期病床は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて医療を提供する機能」とされ、厚労省の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会では入院基本料を除いた診療報酬が3000点・600点・225点での区分や、診療報酬の特定入院料の算定状況等から基準を設ける検討がされている。 

 入口の急性期病床数を絞り込めば、受け皿となる回復期病床に対する医療需要は予測困難となり、入院料の単価も抑えられるため経営的な不安が危惧される。さらに、回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟の施設基準は高く、慢性的な人員不足が解消されない中で、リハビリスタッフを増員し、施設設備を整えることは高いハードルとなってこよう。



療養病床患者の行く先は 
  
   国は、療養病床について、医療区分1の患者の70%を在宅移行させ、入院患者数の減少を目指すとしている。道は病床削減の受け皿として在宅医療の整備を進め、2013年の在宅医療(相当)患者5万4700人(表2注参照)を2025年には約8万9000人に拡げる構想だ(表2)。核家族化し、共働き家庭が増え、独居老人世帯が多い現状で、今後、在宅医療・介護を進めるには、訪問診療・看護・介護サービスの充実整備や介護施設の増設が求められる。
 

 現在、道内の在宅療養支援診療所は340件程度で、年々増加はしているものの、各医療圏においての在宅担当医の確保は厳しい事が予想される。民間介護サービス・施設は人員確保や収益の面から、過疎地域への進出に積極的に取り組めない。道は今までも医療・介護従事者の確保養成・離職防止・復職支援等を講じてきたが、今後更に具体的で有効な施策が求められる。先に病床削減ありきではなく、患者・住民を支える地域包括ケアシステムの構築が急務と言えよう。
 


今後の動き
 地域の関係者が現状や医療機関間の連携状況等を分析しつつ、個別医療機関の具体的役割や医療機関相互の役割分担・連携体制等について議論し、調整を行う。道は議論の場、データ等の提供、地域医療介護総合確保基金を活用した支援を行うこととなっている。一方、医療法改正等により、知事は地域医療構想の実現に向けて、病院・診療所の開設、増床、機能転換等の際に命令・要請等を行うことが可能とされている。

 構想の中では再三、「地域の実情に合った」というフレーズが繰り返されているが、今後の地域医療調整会議での議論の行方、道の施策に注視し、まさに地域からの声を上げていかなくてはならない。



  
 
北海道 地域医療構想示す                                  
                                                                                                                       



 国はいわゆる「団塊の世代」が75歳以上となり、高齢化が進行する2025年に向けて地域医療構想と地域包括ケアシステムを柱とした、医療提供体制の再編を導入しようとしている―。



 都道府県は2015年4月から、2次医療圏ごとの医療需要の将来推計や病床機能報告制度等をもとに、医療供給体制の必要量を試算の上必要病床数を提示し、医療機能の分化を計る地域医療構想の策定を進めてきた。

 地域医療構想では、2025年の医療需要を踏まえ、高度急性期、急性期、回復期、慢性期という機能別の「病床の必要量」を規定する。医療需要の推計には DPC・NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のレセプトデータ と人口動態等が用いられた(図を参照)。

 

            ▼2025年の医療機能別必要病床数の推計結果(全国ベースの積上げ) 

             (平成27年6月15日内閣官房「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」発表から抜粋)


 北海道においても『北海道地域医療構想』(素案)が示され、9月15日から10月14日までパブリックコメント募集が行われた(素案については「北海道地域医療構想〜北海道の実情・地域特性に根ざした医療改革となるのか〜」参照)。

 今後は、地域医療構想調整会議において、毎年の病床機能報告と構想の必要病床とを比較し「医療機関が担うべき病床機能」「病床機能報告制度による情報の共有」「都道府県計画に盛り込む事業」等の協議が進む。

 医療保障・介護保障のあり方を変えるための「川上の改革」=医療提供体制の再編と「川下の改革」=地域ケアシステムの構築が進められようとしている今、それぞれの地域の、住民・医療・介護を真に巻き込んだ議論が求められる。また、2018年度からの国民健康保険の都道府県単位化は地域医療構想とリンクして、行政が費用抑制策に応じて供給量を調節し、供給量に応じて需要を調節する事が可能となる事にも注視しなければならない。

 この改革が単に医療費抑制のみを目的とし、医療・介護難民を増加させ、質の低下に陥らないよう、国は国民の社会保障に対する責を担うべきである。
 


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