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これ以上の診療報酬、介護報酬マイナス改定を許すな

 

 厚生労働省は2016年度の概算医療費が前年度比約2000億円少ない41・3兆円になったと公表した。昨年まで概算医療費は増加を続けていたが、14年ぶりに減少。厚労省は16年度の診療報酬改定のほか、高額のC型肝炎治療薬ソバルディ、ハーボニーの薬価引き下げの影響が大きいと説明している。
 実際にこれらの薬を含む薬剤費は前年度比1432億円減少している。
 福祉医療機構の16年度経営分析参考指標によると、一般病院の医業利益率は16年度には前年比0・7ポイント減の0・4%、療養型病院でも1ポイント減の4・6%と減少し、診療報酬のマイナス改定による病院の経営状態の厳しさが顕著となっていた。
 社会保障費の自然増抑制は13年度から5年間の累計が1兆4600億円に上り、16年度は診療報酬マイナス改定により1500億円圧縮された。さらに来年度も自然増6300億円を5000億円に抑制し、1300億円を削減する方針だ。
 財務省は社会保障費抑制のポイントとして、75歳以上の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる、低所得でも資産が豊富な高齢者は医療・介護の負担を増やす、18年度診療報酬2%以上のマイナス改定、かつ診療報酬本体の引き下げ、介護報酬のマイナス改定などを求めている。
 今回の衆議院選挙では自民党が大勝。安倍首相は「同じ総裁で3回連続勝利したのは結党以来初めて」と政権運営に自信を見せ、安倍一強時代が続くこととなった。そして消費税の使い道を子育て世代、子供たちに大胆に投資、変革することで「全世代型社会保障」へ大きく変革すると訴えている。来年度の社会保障費自然増の5000億円の中には「全世代型社会保障」への改革費用も含まれる可能性があり、そのしわ寄せが診療報酬、介護報酬の削減などに回れば、大幅なマイナス改定を強いられる可能性もある。
 医療、介護崩壊を招かないためには、これ以上の診療報酬、介護報酬のマイナス改定を許してはいけない。


介護医療院創設をめぐる議論大詰めを迎える

2018年度介護報酬改定に向け、社会保障審議会介護給付費分科会において「介護医療院創設」、17年度末で廃止予定の「介護療養病床再編計画等」の検討が進められている。介護医療院の要件厳格化等も議論されており、厳しい介護報酬改定が懸念される。

療養病床の現状

 16年4月時点で、介護療養型医療施設は1320事業所、約5万9千床で10年前と比して約50%に減少した。
 同医療施設は、医療必要度が低いとして18年3月末に廃止が決まっているが、15年度調査の結果、他の介護保険施設に比して、喀痰吸引、経管栄養等多くの医療処置や看取りが実施されており医療機能が評価され、その機能の存続が認められた。老人性認知症疾患療養病棟では、約70%の患者が医療保護入院である。また、約49%がBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)に対応している。
 15年度介護報酬改定において、介護療養型医療施設は、喀痰吸引・経管栄養等の医療処置や看取り・ターミナルケアを中心とした長期療養を担う療養機能強化型A・Bが創設され46%の施設で算定されている。

新たな施設類型 介護医療院

 「療養病床の在り方等に関する特別部会の議論の整理」では、介護医療院の「医療を内包した新たな施設の基本設計」は、日常的な医学管理と重介護者の生活施設としての機能が求められる。利用者像は、介護医療院(機砲浪雜醂斗槁他価蠹で主として療養機能強化型A・B相当、介護医医療院(供砲蕨型擁欸鮖楡濮蠹以上で前者より容体が安定した者とし、現行の利用者を引き続き受け入れる。

転換支援策と再編

 介護療養病床及び医療療養病床からの転換に関し、必要入所定員総数は設定せず、またこれ以外の転換支援措置も継続予定である。現行の介護療養病床は経過措置があるが17年度末で廃止され、新たな類型として介護医療院を設置、地域医療構想に沿った療養病床の再編が行われる。また、介護療養病床は、現行の療養機能強化型と老健施設の二つの類型へ転換、又は25対1病床の一部を20対1病床へ転換する動きもある。
 独立行政法人福祉医療機構が行った療養病床の転換移行アンケートでは、転換先として療養機能強化型A・Bを運営する病院の50%が介護医療院(機砲髻14%が同(供砲魑鵑欧拭2雜邂緡撤^奮阿任蓮◆岼緡迭杏佞鰻拭糞鐔札好據璽垢醗緡典ヾ悗諒酸漾法廚眦彰浩荼補とされる。
 介護医療院への転換が予想される病床は約20万床に上る。介護医療院創設に伴い、介護療養病床転換の猶予期間は23年度末まで6年間延長され、第7期介護計画では療養病床から介護医療院への転換は総量規制対象外である。

むすび

 療養病床が介護医療院として存続することで、地域包括ケアシステムの拡充が期待される。一方、療養病床再編後も医療費・介護費増加が想定され、医療介護報酬抑制が懸念される。介護医療院は医療必要度の要件厳格化等により療養病床の医療必要度の低い患者は強制的に在宅へ押し出され、医療介護難民の増加が懸念される。
 介護の被保険者一人あたり給付費に地域差がある。これを縮減するため保険者機能を強化し、保険者による介護費用削減を目指すインセンティブが導入される。その結果、病床削減が加速する懸念がある。必要な医療介護提供体制が確保され、医療介護崩壊が生じないよう注視が必要だ。


保団連 医療研究フォーラム

 一人ひとりの尊厳を守る社会をめざして 

第 32 回保団連医療研究フォーラムが 10 月8〜9日に名古屋市で開催され、全国から約550名が参加した。

 初日は記念企画として、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英氏と諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏による対談が行われ「今をどう生きる〜子や孫が安心して暮らせる社会をどう残すか」のテーマで、科学者と医師の立場から子どもたちの未来、平和への思い等について語った。

 2日目は、8分科会とポスターセッションが行われ、本会からは、猫塚義夫先生(勤医協札幌病院)と堀元進先生(旭町医院)が発表した。

 猫塚先生は「パレスチナ、ヨルダン川西岸と『ガザ地区』における医療支援活動の報告」として、難民キャンプの実態と活動内容、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)や現地医療関係者との連携の重要性を述べた。堀元先生は「在宅医療現場から見た『地域包括ケアの行方﹄」とのタイトルで「機能強化型在宅支援診療所」の現状調査から国は何をすべきであるかを考察した。


 事務作業の効率化のためにレセプト様式等の変更を検討  

 

「診療報酬に係る事務の効率化・合理化」では 〇楡澳霆爐瞭禄亶猝椶篌蠡海等の合理化入院診療計画書等の各種様式の内容や必要性の精査 レセプト摘要欄への記載や添付資料の廃止・見直しの3点が検討項目として挙げられた。

 

請求事務の効率化に向けた見直し  

 ,砲弔い討六楡澳霆爐陵弖錣示されている告示・通知の記載に曖昧な部分があり、算定可否の判断に苦慮する場合があるとして、届出の省略や簡素化等を進めるとしている。これまでも、解釈が判然としない基準要件が示され、その後に発出請求事務の効率化に向けた見直しされる事務連絡(疑義解釈)で補足するということが続けられてきたのが実情だ。将来的には簡素化した上で、オンラインでの届出や報告・受理通知等を目指すことも検討するとした。

 △砲弔い討六楡澳霆爐涼罎能蠶蠅陵夕阿傍載し作成が要件となるものについて、内容や必要性を精査するとした。入院時に患者に交付する入院診療計画書では、治療計画や栄養管理計画、リハビリテーション計画等、多岐にわたる記載項目があり、さらに入院から7日以内に交付することが義務づけられている。

 こうした様式の作成が現場の負担となっていることを踏まえ、診療録等から既に得られる情報は簡略化する、一定期間で評価を行う様式は頻度を減らす等、負担軽減への対応が示されている。

 についてもレセプトの摘要欄にフリーテキスト形式で記載するものや、別途資料の添付が求められるものがあり、効率的な事務処理を阻害していると指摘。該当項目を選択制にする等の見直しが考えられている。具体的には 表1 にある通り、在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定要件には1月に2回以上実施した場合、現行の規定ではその理由を文章で記載する必要がある。これに対し見直し案では、該当する項目を選択して記載するとしている。現在までに128の見直し項目を抽出しており、これらは次回改定からの対応が見込まれている。

 同様にレセプトの添付資料についても、算定要件を満たすか否かを判断するために不必要なものは廃止するか摘要欄への記載に変えていくとした。同項目も11の見直し項目が抽出されており、次回改定で反映される見込みだ。さらにの検討内容は医科だけなく、歯科・調剤のレセプトについても同様に見直しを行うことが確認されている。

 

診療情報の利活用で分析・評価を推進

  「診療報酬にかかる情報の利活用」の推進では .譽札廛箸亡擬圓僚蚕蠑霾鵑ない⊃芭店坩戰魁璽匹実臨床に即したコード体系になっていない 傷病名や診療行為の選択が統一されていない た芭甜太咼如璽燭侶措阿様々で分析が容易でないといった観点から見直しが図られる。

 ,砲弔い討魯譽札廛箸亡擬圓僚蚕蠑霾鵑無いため、地域単位での医療提供体制や地域差に係る分析・評価等が困難との指摘に応えるものだ。またカタカナ表記が無いため介護保険との紐付けが出来ず、分析が出来ないことも問題視している。今後はレセプトに患者の住所地の郵便番号(7桁)及び氏名のカタカナ記載診療情報の利活用で分析・評価を推進を求め、導入に当っては医療機関やシステム等への影響を確認した上で、必要に応じて経過措置期間を設けるとしている。

 ↓については、手術の多様化・高度化によって多くの手術手技が生まれてきたものの、手術分類(Kコード)が様々な手術手技を分類するものとして十分な体系化がなされていないとして、国際的に標準化された用語や分類を参照したマスター等の整備・普及が重要と指摘している。今後は外保連手術試案の手術の基幹コード7桁(STEM7)をKコードに活用可能かどうか検討していく。

 次回改定ではデータ提出加算で提出されたデータにおいてKコードにSTEM7を併記する欄を設け( 表2 )データを収集する。その結果を踏まえ次々回以降の改定で導入・再編する方針だ。

 

 負担軽減には賛意も慎重な対応を 今回の提案について、中医協の診療側委員は、請求事務の効率化、簡素化に関し概ね賛同を示したものの、レセプトのカタカナ記載について「古いレセコンでは対応できず、買い替え等の費用負担が発生する」。また、レセプト様式の全体的な変更についても「小規模医療機関には事務・費用の双方の負担が大きい」と慎重な対応を求める意見も相次いで出された。フリーテキストに関しても、症状詳記をする上で必要との主張も見られた。

 書類作成に忙殺される医療現場において、負担軽減対策は必要な施策であるが急激な改編は医療現場を混乱させる可能性があり、費用負担や移行への経過措置等、医療機関への一定の配慮は必要とされる。また、診療報酬の情報に係る利活用に関しても、ビッグデータの活用、医療の標準化、不当な審査の厳格化等に繋がる懸念もある。次回改定以降も継続的な審議が予定されており、今後の動向を注視していく必要がある


 700万人時代 

 我が国の認知症の人は2012年で460万人、65歳以上高齢者の約7人に1人だという。これが2025年には700万人(同約5人に1人)に達すると推計されている。わずか10余年で1・5倍。 25年はいわゆる団塊の世代が75歳以上となる年、地域包括ケアシステム実現の目標元年である。「700万人時代」に向けて行政、医療・介護界を挙げての対応が始まっている。一方で、既に現実となったもう一つの「700万人時代」がある。発達障害だ。

 厚労省によると、発達障害の人は疑いを含め700万人。小中学生の約6・5%に発達障害の可能性があるとする文科省の調査報告もある。近年、芸能人のカミングアウトやメディアの啓発等により世間の認知度は上昇しているが、医療・福祉からのニーズに対応が追いついていない。

 総務省の調査では、発達障害の専門医療機関における初診待ち期間は平均3ヶ月以上、当事者・家族の生活や就労に関する支援を行う発達障害者支援センターの相談件数も昨年度は7万4千件を上回った。診療・支援を巡る体制はパンク状態だ。

 こうした状況に対し厚労省も、18年度概算要求で発達障害児・者の支援施策予算として今年度当初予算比3倍を計上し、専門医の養成・専門医療機関の確保・就労支援の強化に乗り出した。来年4月から、企業が障害者の法定雇用率の中に精神障害者を含めることが可能となり、精神障害の手帳を持つ発達障害者の雇用も増えるであろう。専門医に加えて非専門の産業医にも対応が求められる場面の増加が予想される。非専門医を支える医師や多職種の養成を含め、発達障害「700万人時代」への対応が急務である。

  17年度改定の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)には、認知症サポート医の養成に加え、予防・早期発見を含めた歯科医療機関の認知症対応力向上が盛り込まれている。認知症グループホーム協会は18年度介護報酬改定に「口腔衛生管理」関連加算2項目の新設を要望した。本会においても、医科歯科連動の対応が急務である。


費用対効果評価の思考的導入に向けて

 厚労省は 10 月4日、第362回総会を開催した。総会では、費用対効果評価の試行的導入にあたり、費用対効果評価専門部会での検討状況を踏まえながら、費用対効果評価専門部会、薬価専門部会及び保険医療材料専門部会を合同で開催し、価格調整方法について検討を開始した。

 費用対効果評価専門部会

 費用対効果評価の試行的導入に向けた「総合的評価」(アプレイザル)に係わる5項目の論点を提起した。⑴価格調整を見据えた評価結果の示し方では、各品目の複数の分析結果(ICER)及び倫理的・社会的考慮要素に基づく、連続的な価格調整を行うこと⑵基準値の設定では「1QALY獲得のために支払う金額調査結果」や具体的な評価基準が公開されている国のうち、日本と生活水準が近い英国の評価基準を参考に設定し、それらを活用した価格調整の具体的な方法については、薬価専門部会等の合同部会で検討する⑶ICERが得られる場合の対応では、複数の適応疾患等を持つこと等により、複数のICERが得られる場合の対応は、それらを使用患者割合等で加重平均し総合的評価に用いる⑷ICER算出不可品目の評価方法では「効果増大、費用削減」または「効果同等、費用削減」の旨や、当該品目の費用対効果評価に使用した比較対象品目(技術)との比較方法、比較結果等を記載する⑸倫理的、社会的考慮要素では、ヾ鏡症対策といった公衆衛生観点での有用性公的医療の立場からの分析には含まれない追加費用(中医協における費用対効果評価ガイドラインで認められたものに限る)重篤な疾患でQOLは大きく改善しないが生存期間が延長する治療、希少難病等ぢ綢惻N鼎十分に存在しない治療とする。

三部会合同部会

  費用対効果評価専門部会での論点提起について、評価結果が薬価(材料価格)に影響する範囲を「薬価・保健医療材料価格の全体」か「加算分のみ」とするかで意見が対立した。

 支払側の幸野委員は「改定毎に薬価(材料価格)が変動する中、加算分とそれ以外を分けることは不可能」と指摘、その上で「評価結果は、薬価(材料価格)全体に補正を掛けるべき」と主張し、診療側の今村委員も賛同した。

 対して、業界代表の加茂谷専門委員は、現行の薬価算定のルールとの整合性を強調「評価は加算の範囲内にとどめるべき」と主張した。

医療業界からの意見聴取

 医薬品業界及び医療機器業界から費用対効果評価に対する意見陳述があった。

 ・費用対効果評価に係わる検討は、試行対象企業に大きな負担がかかっていることを考慮し、我が国の薬価基準制度との整合性を踏まえた、慎重かつ丁寧な議論が必要・費用対効果評価は、薬価基準制度における新薬の価値評価のあくまで補足的な手法として限定的に位置づけられるべき

 ・アプレイザルについては、他国に同様の例がないICERによる評価基準の設定について慎重に検討を行うとともに、倫理的・社会的影響等に関する観点からの評価も十分に反映すべき

 ・薬価の調整範囲は、薬価算定における加算率の補整に限局すべきであり、加算前の価格を下回る調整については、断じて容認できない

 診療側の万代委員は、医薬品の価値評価の定義がない上、価値評価として様々な意味が含まれる中で費用対効果評価を考えるのであれば、加算率の補整に限局することに納得し難い。全体として費用対効果評価を考えていくべきと述べた。

その他の検討課題

 費用対効果評価の結果を償還の可否の判断に用いることについて、仮に償還しないとする場合、薬事承認されたものを保険適用とするという従来の原則を根本的に変えることになるが、その合意はまだ得られておらず、国民の目から見て医薬品等にアクセスの制限が加わるということは受け入れ難いのではないか。これまで、原則として有効性・安全性等が確立した医療は給付の対象とされてきたことを踏まえ、費用対効果評価の結果は、原則として保険償還の可否の判断には用いず、価格調整に用いる位置づけとすることとしてはどうか等の指摘がなされた。

 ノバルティスが、薬が効いた患者にのみ支払いを求める成功報酬型の薬を日本で販売できるように働きかけることを検討しているとの報道もあり、今後も注視していかなければならない。


さらなる患者負担増   

-18年度社会保障予算-

 

 厚労省は8月31日、2018年度予算の概算要求を財務省に提出した。総額は31兆4298億円、社会保障費は29兆4972億円で、前年度比6491億円の増加だ。社会保障費は高齢化等により年間8000億円から1兆円の自然増が見込まれているが、概算要求で減額、ここからさらなる圧縮が行われる。
 政府は財政赤字が累積する中で、2020年に基礎的財政収支の黒字化をめざしており、社会保障費を国債で補う状況を悪化の主因として社会保障費の抑制を行ってきた。「骨太の方針2015」では16〜18年度を財政健全化の集中改革期間と位置付け、高齢化に伴う自然増を3年間で1兆5000億円に圧縮することを掲げている。
 16年度は診療報酬マイナス1・31%改定などで1700億円の圧縮、17年度は患者負担増や薬価引き下げで1400億円の圧縮を行ってきた。集中改革期間最終年度の18年度は診療・介護報酬の改定年度でもあり、一層の患者負担増と診療報酬のマイナス改定が懸念される。
 患者負担増としては、今年4月から低所得者の後期高齢者保険料の軽減特例の縮小、8月から高額療養費制度の70歳以上の患者負担上限度額の引き上げ、高額介護サービス費制度の上限額の引き上げ、10月から入院居住費の負担増も開始される。来年8月から介護保険で現役並みの所得(単身で年金収入のみで344万円以上、2人以上世帯で463万円以上)の利用者は3割負担となる。来年以降では「かかりつけ医」普及を理由に外来受診時の定額負担拡大、市販薬類似品の保険外しなどが検討されている。
 経済の停滞が続き賃金・所得が増えない中、医療・介護費の国民負担は増加し続けており、経済的理由での受診抑制も起きている。公的保険で充分な健康の維持・管理がなされないのなら、国民の健康に対して国が責任を放棄しているといわざるを得ない。本会は「いつでも、どこでも、だれもが安心して保険で医療が受けられる」社会をめざして活動を行っていく。


ICT死亡診断等GL・・・
条件付きで死亡確認可能に

 厚労省は9月12日、各都道府県知事宛に「情報通信機器(ICT)を用いた死亡診断等の取扱いについて」の通達を発出し、併せて「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を示した。医師が死亡に立ち会えなかった場合、死亡後改めて対面での診察(死後診察)を行わずに死亡診断書を交付することを条件付で認めたもの。厚労省は規制の見直しについて患者が住み慣れた場所で最期を迎えやすくするほか、遺体を長時間保存・長距離搬送するなどの不都合を回避するのが狙いと説明している。


 同通知は日本看護協会の要望を受け、「スマホ等を用いて看護師による死亡確認報告」をもとに死亡診断書の交付を可能とした。患者の死亡時に生前診療にあたっていた医師が遠方にいるなどして、埋火葬を行うことができず、遺体の長時間保存や長距離搬送が問題になっていると指摘されたことを受け、規制改革推進会議ワーキンググループで議論された内容を具体化したものだ。
 
政府解釈の「診察」

 政府は平成9年に発出した通達で遠隔診療に関し、医師法における「診察」が「問診などの手段の如何を問わず、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のもの」であるとし、「情報通信機器を用いた診療であっても直接の対面診療による場合と同等ではないにしても、代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことはただちに医師法に抵触するものではない」との解釈を示した。
 政府はこの解釈を更に拡大し、医師が死亡に立ち会えず、生前に診療にあたっていた医師が死後診察を行う場合であっても、直接対面による死後診察に代替しうる程度の情報が得られる場合にはICTを用いた遠隔からの死亡診断を行うことは法令上可能であると明示した。

ICTを利用した死亡診断等の流れ

(表):ICTを利用した死亡診断等を行う際の要件

(a) 医師による直接対面での診療の経過から早晩死亡することが予測されていること
(b) 終末期の際の対応について事前に取決めがあるなど、医師と看護師の十分な連携がとれており、患者や家族の同意があること
(c) 医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること
(d) 法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め医師とあらかじめ取決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること
(e) 看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等のICTを活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること
 生体に対する診察と異なり、死後診察の場合にはどのような条件下であれば 「直接対面による死後診察に代替し得る程度の情報が得られるか」明らかになっていないことから、ガイドライン(GL)で次の5つの要件すべてに該当した場合は、ICTを利用した死亡診断を可能と定めた(表)。             遠隔で死亡診断を行うには、前提として事前に終末期の際に積極的な治療・延命措置を行わないことや、ICTを利用した死亡診断を行うことについて予め文書で同意を得ていること、死後診察を行うまでに12時間以上要する状況であることなどの条件が設けられた。  実際に直面した時の対応としては、一定の研修を受けた看護師が遺体を観察した上で死の三兆候(心停止、呼吸停止、瞳孔散大・対光反射停止)を確認する。心停止については看護師が心音消失を確認した上で、心電図(または心電図波形を撮影したデータ)を送信する。また、遺体に異状がないか判断できるように、遺体の様子を撮影・伝送してリアルタイムに報告する等の対応が行われる。これらの報告をもとに医師が死亡診断を行った場合、看護師は医師の指示の下で死亡診断書を代筆し作成後遺族に交付する。ただし、看護師の報告から医師が死亡の事実確認や異状がないと判断できない場合には、死亡診断等を中止することになる。

ガイドラインの問題点

 ICTを利用した死亡診断等GLについては、平成31年3月を目処に再検証するとしているが問題点は山積している。特に要件の(c)「(略)医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること」については想定されている状況を離島・へき地等に限定していない。要件の例示では日当直勤務中に患者が死亡し、その後の勤務時間が長時間であるなど、直接の対面診療まで12時間を越えると見込まれる場合には対象になるとしており、患者との信頼関係への影響も懸念される。
 また要件の(d)「法医学等に関する一定の教育(略)」について、現行の看護師の養成課程では「法医学」に関する教育課程はなく、看護師国家試験の科目にも組み込まれていないため、同GLを踏まえて、平成29年度「在宅看取りに関する研修事業」(厚労省委託事業)で実施する予定としている。数日の研修・講義演習を受講することで法医学に関する一定の教育を受けたことになると定められているが、死後診察の現場で求められる水準に到達できるのか疑問がある。
 さらに、医師が転送された情報から死亡診断を行うことにより、通常の死亡診断よりも異状死を見落とす可能性が高くなることも指摘されている。
 死亡診断に必要な情報についても適切な通信セキュリティ環境下で送受信することを求められおり、情報の保護、漏えい対策等、医療機関の責任も重くなる。死亡診断書は法律上、社会上の重要性が極めて高く、その記載内容が正確になされなかった場合、死因統計が不正確になる等の影響が懸念される。

◇   ◇   ◇

 多死社会を迎えICT技術の活用が今後の医療に大きく貢献していくことが期待されるものの十分な議論を尽くさず、効率・効果を最優先し、見切り発車しては国民や医療現場に混乱をもたらす。保団連や保険医協会も遠隔診療自体に慎重な対応を求めており、今後の動向を注視する必要がある。

 


弱いものいじめはもう止めろ!

 

  来年は、医療・介護・障害者報酬の「トリプル改定」の年だ。 新設される「共生型サービス」が問題となっている。内容の異なる介護保険と障害者福祉サービスを「一体化」し「共生型サービス事業者」として両者に対応させる。

 高齢障害者の障害者サービス利用では「介護保険優先の原則」により介護保険が適応され、自己負担の増額やサービス打切り・縮小が発生する。

 障害者が「軽度者」と介護認定されて「地域共生社会の重視」の名のもとで、サービスがボランティアや無資格者による「総合事業」に移行され、質の低下が懸念される。

 そもそも「一体化」は、強い批判を受けてこれまで何度も否定されてきた。

 一方、難病医療費助成の経過措置が本年 12 月に終了し、負担が重くなる。認定要件に「重症度分類」が加わり狭められ、入院時の食費自己負担額が2分の1から全額となり、毎月の自己負担上限額が2〜3倍に引き上げられる。

 高齢者医療では負担限度額引き上げ、後期高齢者医療保険料軽減特例の縮小・廃止、窓口負担2割が進められている。 弱者の自己負担は軒並み引き上げられ、サービスの低下・縮小・打切りを強いられている。

 しかし財源はある。

 まず、高額薬剤の是正だ。平成 28 年度医療費(厚労省速報値)で、C型肝炎薬剤の減額だけで前年比1432億円減少した。

 輸出大企業の消費税還付金(輸出戻し税)は、上位 10 社だけで約7300億円(平成 27 年度)と推計される。さらに、アップルなどの多国籍企業のタックスヘイブン(租税回避地)による日本の税収損失は468億ドル(5兆1000億円)と言われる。

 これらの是正だけで弱いものいじめ代は潤沢に賄われ、有り余るお釣りがくる。 これ以上弱者に負担を強いて格差を拡大する社会は、絶対に食い止めなければならない。

  10 月 22 日には総選挙が実施される。私達の意志をはっきりと示す時だ。


第6回歯科医師の資質向上等に関する検討会

「論点整理」「歯科保健医療ビジョン(素案)」を提出

 

 厚労省は、8月31日「第6回歯科医師の資質向上等に関する検討会」を開催し、「各ワーキンググループ(WG)における議論を踏まえた現時点での論点整理」と「歯科保健医療ビジョン(素案)」を提出した。同省は、秋ごろを目処に素案内容を中間報告として取りまとめ、ビジョンなどを基に歯科医師需給の更なる推計に向けて検討していく予定。

  検討会で提出された「各WGにおける議論を踏まえた現時点での論点整理」では、歯科医師の需給問題や女性歯科医師の活躍等に関する論点が示され「歯科保健医療ビジョン(素案)」では、地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関の役割やあるべき歯科医師像、かかりつけ歯科医の機能・役割、具体的な医科歯科連携方策および歯科疾患予防策が示された。

 現時点での論点整理

 歯科医師の需給問題について

  同項では、〇科医療の需要∋科医療の供給歯科医師の需要と供給せ科医師数の需給推計セ科医師のキャリアパスの5項目が示された。歯科医療ニーズの多様化に対応するため「歯科医療機関や歯科医師の経験、専門的能力」「高齢者患者の歯科治療の難度」「歯科治療の偶発的リスクへの対応能力」「医療安全対策の取り組み状況」等の情報が必要とした。また、人口動態を踏まえた入学定員数を設定し、早急に実行しなければならないとした。

 女性歯科意志の活躍について

 「女性歯科医師の活躍等をはじめとした歯科をめぐる課題解決」では、女性歯科医師の働きやすい環境づくりは男性歯科医師の働きやすい環境づくりにもつながるという意識を業界全体で共有することが重要とした。また「女性歯科医師の働き方やキャリアパスに関する対応」では、継続して就労するために必要な体制の整備等、歯科業界全体の「結婚や出産等のライフイベントに合わせてフレキシブルな勤務形態を認める」という思考の転換が必要とした。 

 歯科医療における専門性について

  各学会の専門医制度については、客観的評価を踏まえた根本的な見直しを行うことが必要で「国民が求めている専門性」と、歯科医師間で難症例等の患者紹介等に活用するための「歯科医師が求めている専門性」を分けて議論すべきで、日歯、学会、大学、第三者を交えた協議の場を設定し、1年を目処に結論を得るとした。

 歯科保健医療ビジョン(素案)

  素案では、高齢化の進行や歯科保健医療を取り巻く環境の変化に伴い、歯科保健医療の需要に変化が生じており、外来に加えて入院患者や居宅の療養者等に対する歯科医療提供体制を構築することが必要であり、今後、他職種や他分野との連携の動きに柔軟に対応していくことが求められると指摘した。

  そのため歯科医師の需給問題、女性歯科医師の活躍、歯科医療の専門性に加え、各職種で検討されている内容等も踏まえ、今後、本検討会で示す中間報告の一部として、あるべき歯科保健医療の提供体制等を「歯科保健医療ビジョン」として示すと説明があった。

 論点整理と素案を通じて提起された「多様化する国民や患者ニーズに対応できる診療形態」「地域医療連携推進法人制度の活用等、複数歯科診療所のグループ化」「これまで以上にかかりつけ歯科医機能が重要」「歯科医療の提供については歯科診療所以外にも考えられる」等については、歯科医師、歯科医療機関、歯科医療全般に関係する問題である。  今後の議論は、次回改定にも大きく影響を与えると思われる。引き続き、本検討会の情報収集や分析に努めていく必要がある。


不公正の極み 都道府県別診療報酬

 

  社保審医療保険部会で、都道府県別診療報酬が議論の俎上に挙がっている。4月26日の部会は医療費適正化に関する都道府県のガバナンス強化がテーマで、都道府県別診療報酬も議論された。引き続き今年度中に医療保険部会や中医協で検討を進めるとされている。
 都道府県別診療報酬設定の法的根拠は、平成20年施行の「高齢者の医療の確保に関する法律」13、14条にある。13条は「都道府県は(中略)必要があると認めるときは、厚労大臣に対し、診療報酬に関する意見を提出することができる」、14条は「厚労大臣は(中略)他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる」となっている。医療費抑制を都道府県ごとに競わせ、成果が不十分な場合には、都道府県から厚労大臣に低い診療報酬を申請させ、決定するものだ。
 人口一人当たりの都道府県別国民医療費は西高東低の傾向があり、平成26年度で埼玉県と高知県の間で1・52倍もの差がある。骨太の方針では医療費の地域差半減を目指すとしているが、それを当てはめれば診療報酬の格差は非常に大きいものになる。
 過去の医療保険部会では「診療報酬については、一物一価、全国統一にしないと国民の納得は得られない」「全国一律のメリットは大きく、都道府県別にすると現場が混乱」との意見が出されている。全国知事会も「その妥当性、医療費適正化への実効性に疑問がある」との意見を述べている。
 都道府県別診療報酬が持ち込まれたらどうなるだろうか。低く設定された地域の医療機関は軒並み経営困難に直面する。低い地域から医療機関と人材が移動する可能性があり、患者の受診行動の変化(診療報酬が低い地域への受診誘導)も起こりうる。何よりも同じ内容の療養の現物給付に地域価格差が付けられるということであり、不公正極まりない。
 ガバナンスの強化を口実に都道府県に医療費抑制の責任を押し付け、医療崩壊を促進させる都道府県別診療報酬は早急に断念させなければならない。


厚労省、平成30年度診療報酬改定

に向けた議論内容を提示

 平成30年度改定に向け、今年1月から6月までに議論してきた内容(第1ラウンド)が中医協総会に提示され、診療側、支払側よりそれぞれ意見が述べられた。7月から10月中旬までに第2ラウンド、10月中旬から来年1月中旬の第3ラウンドの審議をうけて改定となる。

 はじめに

 基本認識の共有で診療報酬が医療と介護の提供体制の確保に多大な影響を及ぼす仕組みであることから、次の点に留意して検討を進めることを確認した。2025年には、団塊の世代が75歳以上となることから、医療・介護ニーズが増大かつ多様化する一方で、限られた医療資源に配慮しつつ、医療・介護の現場におけるサービス提供体制をより効果的・効率的なものに転換していく必要があること。そして今後の生産年齢人口が減少していくことを考慮すれば、医療と介護のサービス提供体制の確保にあたっては、2025年から先の将来をも見据えた需要と支え手の変化にも対応可能なサービス提供体制の確保が求められること。

 さらに、平成30年度の診療報酬改定は介護報酬との同時改定となることから、医療と介護の連携の中で重要と考えられる、看取り・訪問看護・リハビリテーション等、介護給付費分科会の委員との意見交換を行い、その概要が中医協総会に報告された。

 各検討項目の主な議論と論点

(1)入院医療

 入院医療のニーズは、65歳以上の入院患者が70%を超えており、高齢者向けの医療ニーズが高まる事が予想される。一方、医療介護の支え手の減少が見込まれる中、より質の高い入院医療を提供でき、医療ニーズの変化にも対応しうるような効果的・効率的なサービス提供のあり方、地域において求められる医療機能や患者の状態に応じた入院医療の提供体制の推進の視点で議論した。

(2)在宅医療

 在宅医療におけるニーズの増加や、看取りを含めた課題の多様化を踏まえ、それぞれの地域において限られた医療資源も考慮した在宅医療を確保・推進するため、〆濟擔念奮阿魎泙瓩燭かりつけ医による在宅医療提供体制△かりつけ医の夜間・時間外の負担軽減につながる、地域の医療機関の連携による救急応需体制等の視点で議論した。

(3)外来医療

 今後、生活習慣病の増加が見込まれ、より質の高い医学管理や 効果的・効率的な重症化予防の取り組みが求められる中で、 ,かりつけ医機能と専門医療機関等との連携の推進△かりつけ医を中心とした多職種との連携による効果的・効率的な医学管理等の推進等で議論した。

(4)横断的事項

 今後、より質の高い医学管理の提供や重篤な合併症の予防を推進し、専門医療機関等との機能分化・連携により、早期の対応を可能とすること。高齢になり要介護状態になったとしても、安心して地域で療養できるような、地域包括ケアシステムを構築すること等が可能となるよう、より多くの患者がかかりつけ医機能のもと、安心して療養でき、また、かかりつけ医の負担軽減にもつながるような、医療提供体制の構築に資する視点で議論した。

(5)歯科医療

 地域包括ケアシステムの構築を推進するうえで、かかりつけ歯科医機能やチーム医療の推進等の観点から医科歯科連携等、また患者にとって安全で安心でき、患者像の変化や多様性も踏まえ、口腔機能の評価・管理や、口腔疾患の重症化予防や生活の質に配慮した歯科医療の提供のあり方等の視点で議論した。

 まとめを受けて議論

 診療側からは、医療と介護は点数設定が全く異なっているが、どのように議論を進めていくのか等の質問があったものの厚労省からは具体的な回答はなく、財源ありきの改定が主張される中、どれだけ患者・医療者にとってより良い改定が行われるか注視が必要である。


   医療費削減を貫く「骨太の方針2017」  

 「骨太の方針2017」の枠組みが診療報酬改定の議論に大きな制約を加え、マイナス改定に導くとともに、医療費削減を貫く根拠にされている。ここではその社会保障関係部分の概要を確認したい。

 「骨太の方針2017」は6月9日に閣議決定された。集中改革期間の最終年に当たる2018年度も、社会保障関係費の伸びを高齢化に伴う自然増内(5000億円)におさめるとしている。2016年度の診療報酬改定はネットでマイナス0・ 84%だったが、自然増内にはおさまらず、医薬品価格の適正化、湿布薬の一処方当たりの枚数制限、協会けんぽの国庫補助見直しなどが行われた。

  2018年度改定でも、厚労省予算概算要求の自然増を超える分について、「骨太の方針」の改革工程表( 図) の項目に沿って削減するものと思われる。

 

 社会保障部分の構成は ヾ靄榲な考え方医療・介護供給体制の適正化インセンティブ改革 じ的サービスの産業化 ド蘆看塾呂鳳じた公平な負担、給付の適正化 薬価、調剤等の診療報酬及び医薬品に係る改革 年金╂験菠欷遒箸覆辰討い襦B緝重ないくつかを取り上げる。

 

 基本的な考え方 

 「全ての団塊の世代が後期高齢者となる2025年度を見据え(中略)、 44の改革項目について改革工程表に沿って着実に改革を実行していく」と述べた上で「2018年度は診療報酬・介護報酬等の同時改定および国保の財政運営の都道府県単位化の施行、介護保険制度改正の施行など重要な施策の節目の年であることから(中略)、医療費・介護費の高齢化を上回る伸びを抑制しつつ、効果的なサービスを効率的に提供する」としている。医療費削減を推し進める方針を明確に示している。

 医療・介護提供体制の適正化 

 都道府県ごとの地域医療構想の策定により、病床の機能分化・連携を推進する。2年間程度で個別の病院名や転換する病床数などの具体的な対応方針を明らかにする。同時に介護施設や在宅医療の供給体制の整備の議論も速やかに進める。機能分化が進まない場合には、都道府県知事がその役割を適切に発揮できるよう、権限のあり方について検討を進める。このように病床削減を加速しようとしている。 医療費適正化計画については、都道府県別一人当たり医療費の差の半減を目指すとしている。取り組みの支援策として「地域医療介護総合確保基金」の配分にメリハリをつけるとし、医療費適正化計画の進捗状況を踏まえ、都道府県別の診療報酬のあり方を検討するとしている。今後地域差半減が進まない場合には、都道府県別診療報酬が導入される危険性がある。 かかりつけ医については、普及の観点から診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討するとしており、制度の普及の名のもとに受診抑制、医療費削減の狙いを捨てていない。

  インセンティブ改革 

 保険者の医療費適正化に向けた取り組みに対する一層のインセンティブ強化を図るとしている。国保では保険者努力支援制度を本格実施して、取り組みが進んでいない保険者に対してはペナルティを課すという、非倫理的な政策である。また、国保料軽減のために自治体が独自に行ってきた法定外一般会計繰り入れの計画的な削減・解消も求めている。健保組合等の後期高齢者支援金の加算・減算制度も運用が強化される。医療過疎や医師不足、交通事情などの根本的な問題を放置したまま、適正化という名の医療費の削減に走ろうとしている。 ヘルスケアポイントや保険料への支援となるような、個人へのインセンティブ付与による健康づくりや適切な受診行動の促進も謳っている。

 診療報酬・介護報酬改定

 「人口・高齢化の要因を上回る医療費の伸びが大きいことや、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療費の増加に伴う医療機関の収入や経営状況、保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえつつ、診療報酬改定の在り方について検討する」と述べ、マイナス改定への誘導と読み取れる。 内容としては^緡典ヾ悗涼楼莽携強化に向けたこれまでの改定内容の検証病床の機能分化・連携を更に後押しするため、入院基本料(報酬水準、算定要件など)の検討2雜邂緡撤,硫雜酳鷭掘施設基準のあり方等について検討し、介護施設や在宅医療への転換などの対応を進めるなどと述べている。

 その他

 薬価制度の抜本的改革について、素案に盛り込まれていた参照薬価制度に関する記述は削除されたが、かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局の機能強化、リフィル処方の推進は明記された。 人生の最終段階における医療についても記述があり、普及啓発の推進や、関係者の連携、人材の育成を図り、先進事例を全国展開するとしている。 「骨太の方針」と一緒に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、効果的・効率的な医療の提供に資するとして、遠隔診療を次期診療報酬改定で評価するとしている。厚労省は既に7月に「保険者が実施する禁煙外来は遠隔診療のみで完結しても可」とする通知を発出しており、今後の拡大に注視しなければならない。   

◇ ◇ ◇  

 「骨太の方針」は政府の基本方針であり、中医協の議論・決定の上位指針である。社会保障費の伸びにも枠が設けられ、診療報酬改定の議論に大きな制約が加えられるが、これでは国民の健康は守れない。まずは国家予算の組み方の議論の中で、国民が安心して暮らしていくための基本的なインフラとして、医療・社会保障を充実させるという国民合意形成が必要である。改定率についても、薬価・材料の引き下げ財源を診療報酬本体に回すことなどで、プラス改定を目指すべきである。社会保障費の削減に反対し、診療報酬の引き上げを求める運動を進めていく。

 


   ビッグデータの利活用優先 医療情報が危ない  


 5月30日に改正個人情報保護法が施行された。次世代医療基盤法も4月に成立し、1年以内に施行される。


 この改正個人情報保護法の大きな改正点は、5千人以下の個人情報を扱う事業者にも対象が拡大したこと、 「個人識別符号の概念」「要配慮個人情報」における本人同意、「匿名加工情報」と「匿名化」の違いが挙げられ、より一層厳格化が求められる。


 「要配慮個人情報」とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要する個人情報をいう。医療情報はこれに該当し、患者の同意なしに収集できないとあるが、患者の医療に必須な情報や病医院の運用に必要な利用は「黙示の同意」という考え方で従来通りである。また利用目的の変更が認められない、オプトアウト(明確に拒否しない限り、同意したとみなす)による第三者提供ができないことになる。


 しかし次世代医療基盤法においては、高い情報セキュリティを確保するなど一定の基準を満たした上、医療情報などの管理や利活用のために、国が「認定匿名加工医療情報作成事業者」を認定し、オプトアウトで第三者提供ができるとした。


 「匿名加工情報」は、特定の個人を識別できないように加工して得られた個人に関する情報であって、当該個人情報を復元して特定の個人を再識別できないようにするものであるが、依然としてこの加工基準が曖昧なままである。


 また外国にある第三者への提供では、OECD8原則に照らし合わせて国際的なハーモナイゼーションが要求されることとなる。


 個人情報保護法の施行状況調査に寄せられる苦情では、不適切な取得が毎回第1位を示している。


 医師・歯科医師が医療情報を提供するに当たり、患者との信頼関係と生涯にわたる健康を支えるという観点から、職業倫理による患者のプライバシーや尊厳を守る砦として、本人同意の矛盾を払拭するためにも不正な手段による取得にならないように注視していかなければならない。


  暑中お見舞い申し上げます

          

          一般社団法人北海道保険医会

                 会長 加藤 康夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年も暑いです。

 七月上旬から、北海道各地で夏日が続き、特に道東では連日記録的猛暑に見舞われました。沖縄から来られた演者が、さぞ涼しいだろうと新千歳空港に降り立ったら、沖縄と変わらないので驚いていました。

 海水温も上昇し、イカは昨年よりさらに不漁です。先日、函館で居酒屋に入ると、「活イカあります」とオススメメニューに載っていたので、早速注文しました。出て来たのは、全長が15cmほどしかなく、山盛りの大根の千切りの上に、ペラッとしたイカ刺しがのっている代物でした。しかも1000円も請求されました。

 来年度の医療・介護診療報酬同時改定の検討がすでに進められています。この中で、とくに注目されている項目のひとつが、遠隔診療です。

 安倍首相や塩崎厚労大臣の未来投資会議での「次回診療報酬改定で手当てする」という遠隔診療推進発言を受けて、中医協では二月から議論が開始され、来年は「遠隔診療元年」とされそうです。

 初診料の取り扱い、生活習慣病・禁煙治療・在宅医療への導入、処方薬の郵送などが主な論点となっています。

 平成9年健政局長通知では、遠隔診療の対象は離島、へき地等の通院困難な患者と明記されていました。広域をカバーしなければいけない本道の医療にとっては、一見有用な手段のように思われました。

 しかし、規制改革推進会議は「医療ICT化の推進」の名のもとにこれを逆手にとって、営利企業のICTを活用した医療分野の新規産業化を後押ししています。実際既に遠隔診療ツールのダイレクトメールが発送されています。もちろん、対面診療を非対面診療に置き換える最大の狙いは医療費抑制策の実現です。

 現在、遠隔診療により患者サービスの質が上がるという科学的データは不足しており、さらに医療費抑制効果は国際的にも実証されておりません。実現に向けては、より真摯で詳細な検証が必要です。

 来年は、様々な医療改革が一度に行われる「惑星直列」の年と言われています。

 本会はこれからも、保険診療の充実と国民会保険制度の堅持、地域医療を担う保険医の生活安定を図る活動を、さらに熱く進めて参ります。

 


これでいいのか新専門医制度

 

  新専門医制度が未だに迷走している。今春の始動の予定が、一年先延ばしとなったうえ、制度の根幹となる部分の改定が続いている。本会では、これまで同制度の問題点として、医師の偏在、自由標榜制の制限、非専門医への差別化などを指摘してきた。総合診療専門医については、そのゲートキーパー機能によるフリーアクセスの制限や、包括・定額払いの拡大につながる懸念を示してきた。
 各学会や各関係医療団体からは、日本専門医機構のガバナンスに対する不信感を背景とした反発が続いていた。同機構は、昨年12月に地域医療への配慮を盛り込んだ「専門医制度整備指針」を策定。大学病院以外も研修基幹施設になれることを明記していたが、地方の医師不足の加速と若手医師のキャリアへの悪影響を指摘されていた。「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(5月25日)では、研修基幹施設の条件を緩和し、全国に手挙げを促した結果、基幹施設と連携施設の総数が現行の2.4倍(2,937施設)と報告された。基幹施設のうち8割を市中病院が占めており、都市部に集中することにより、へき地医療の崩壊につながりかねない。
 6月2日「専門医制度整備指針」が改定され、研修はすべての医師にとっての義務ではなく「自律的な取り組み」と位置付けられると記載。基本領域学会の専門研修は研修プログラム制を原則としつつ、留学した医師や女性医師のライフイベントなどに配慮し「介護、留学など相当の合理的理由がある医師等は研修カリキュラム制による専門研修を行う等、柔軟な対応を行う」となっている。また、「新専門医制度概略とQ&A」(5月12日)では、総合診療専門医について、最も基本領域となる内科を1年間、新内科専門研修と同等の研修を内科専門医の指導の下で研修することとしか示されておらず、研修の大枠しか決まっていない。拙速に制度を推し進めることなく、我が国の医療制度と地域医療の将来を見据えた議論を積み重ねていく必要がある。


患者負担の引き下げ、診療報酬の大幅引き上げを決議


・・・ 保団連第3回代議員会に287名が参加

 

 保団連の2016〜17年度の第3回代議員会が6月25日、51保険医協会・医会から、代議員、理事、事務局など287名が参加し、東京都内で開催された。前回代議員会以降の会務報告、決算報告、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向けた改定要求など、全ての議案が全会一致で議決された。本会からは代議員として加藤康夫会長、野川哲義副会長、小笠原俊一顧問、執行部として田辺政策部長(保団連副会長)、下出監事(保団連組織部長)が参加した。最後に「患者負担の大幅引き下げ」「診療報酬の10%引き上げ」などを盛り込んだ決議が採択された。

 開会に先立ち挨拶した住江会長は、国会情勢について「安倍政権の政治・行政の私物化、国民を愚弄する国会運営に怒りを禁じえない」と厳しく批判。「共謀罪」法案の成立にも強く撤回を求めていく姿勢を示した。一方、社会保障面では、更なる抑制を目的に3つの世論操作が進められているとし「1つ目に自己責任論、2つ目に財源論、3つ目に社会保障概念そのものの破壊」と強調。また、一連の社会保障改悪メニューに対し「真の狙いは何か、誰が利益を得て、誰が被害を受けるのかを明らかにしつつ運動を進めることが重要」と訴えた。
 会務報告では、保団連が全国の保険医協会と共に取り組んだ「今こそストップ!患者負担増」運動の成果について、クイズハガキなどの工夫により署名活動の参加率向上が達成でき、3,686の医療機関から12万筆を超える集約が得られたと報告された。歯科分野でも「保険で良い歯科医療を」の署名活動を全国で展開。また、歯科技工問題についても「歯科技工士アンケート」の結果を踏まえ、保団連内部でも集中的な討議を行い、解決に向けた積極的な取り組みを全国的に拡げていく方針が示された。
 来年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けた要求では、医療費の総枠拡大を前提に、医科では入院患者の他医療機関受診の制限緩和、基本診療料の大幅引き上げ、施設入所者への不合理な給付調整等の改善を求めるとし、歯科でも基本技術料の適正評価や麻酔薬剤等の算定方法の改善等が要求された。一方、補綴物維持管理に関する要求は全国的な一致点が見出せず、今回は要求項目として見送ることが説明された。

 

本会から5つのテーマで発言

 討論では、各保険医協会から合計137の発言が行われ、北海道からは5題の発言を行い、執行部から答弁がされた。
 加藤会長は「国保の都道府県化について」のテーマで「国保の保険者機能強化による国保給付抑制、保険料引き上げ、過酷な保険料徴収、徹底した医療費抑制と、それに伴う受診抑制誘導が始まる」とし執行部の考えを質した。これに対し、保団連の担当理事は「都道府県を医療費抑制の司令塔とする仕組み作りが進められている」と述べ、地域医療を守る立場から「都道府県に対しては納付金など資産結果の公表、市町村に対しては市町村の裁量による一般会計からの繰り入れや法定外繰り入れの継続等、国に対しても国庫負担の増額等を求めていく」と答弁した。
 野川副会長は「地域特性を加味した施設基準の在り方について」のテーマで、歯科分野で施設基準が設定された保険点数が増えることによる弊害を訴えた。とりわけ「人員基準が設けられる点数は地域の雇用事情に大きく左右され、都市部と郡部で医療提供体制に格差が生じ、結果的に地域住民に不利益をもたらす」と指摘。保団連執行部も「施設基準による地域格差は医療機関のみならず、患者国民にとっても大きな問題」との見解を示し「保団連としても地方の状況を鑑みた施設基準の内容とするよう厚労省等に交渉しており、次期改定に向け引き続き強く要求していきたい」との方針が示された。
 小笠原顧問は「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部改正法」について、介護給付費の削減目標を市町村間で争わせる仕組みが導入されるなど、保険者機能の強化を危惧。「厚労省は地域包括ケアの見える化システムを展開し、アウトカム指標と地域ケア会議の開催状況を評価した成果指標に基づき、財政的インセンティブを付与する考え」と指摘し、経済効果最優先の安上がりなサービス体制へと置き換えられる危険性について質した。これに対し執行部は同法の狙いについて「共生型サービスを謳い文句に、本来の公助を自助と称し、安価なサービス体制で地域に丸投げする構図」と問題視。「国の責任を明確にし、地方任せの体制阻止へ声を上げていく」と回答した。
 その他「介護医療院創設」「混合介護の導入」についても質問を行い、改悪阻止に向け働き掛けを求めた。
 代議員会では議事の最後に14項目のスローガンを掲げた決議が提案された。その中では、診療報酬の大幅引き上げ、患者負担の削減のほか「地域医療構想に伴う病床削減の阻止」「国保の都道府県化への反対」「社会保険診療の消費税ゼロ税率の適用による損税問題の解消」等の項目が盛り込まれ、満場一致で採択された。

 

 


これ以上社会保障の切捨てを許すな

 財務省の財政制度等審議会は5月25日「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」を発表した。「建議」では「社会保障の適正化」を名目とした徹底的な給付削減を求め、プライマリーバランスの黒字化の重要性を改めて強調した。社会保障費は、平成25年度から29年度まで自然増分だけで1兆4600億円、自然増に含まれないカット分を含めると3兆円以上が削減されてきており、これ以上の切り捨ては断じて容認できない。


 また、6月9日には「骨太の方針2017」が閣議決定された。その中には「入院医療費については地域医療構想の実現によりどの程度の縮減が見込まれるかを明らかにする」と明記され、地域医療構想を医療費削減の手段とすることが示された。


 さらに「地域別の診療報酬の特例」の実施による、点数単価の切り下げの可能性についても触れた。医療崩壊が現実のものとなっている今、地域の実態を無視した暴挙である。


 最終的には削除されたが「骨太」の素案の段階では、いわゆる参照価格制度の記述があった。参照価格制度は、これまで再三議論の俎上に上がったが、我々がその都度反対の声を上げ、廃案にしてきた。何度も「亡霊」のように甦るこのような医療費抑制策には、粘り強くノーを突きつけていかなければならない。


 「建議」では、消費税の10%への引き上げの実施を求めている。「骨太」では、消費税の増税の記載はないが、閣議決定後の記者会見で、石原経済財政政策担当相は、消費税の増税の必要性を強調した。本会は、逆進性の強い消費税の増税に一貫して反対し、医療へのゼロ税率の導入を求めてきた。所得税の累進制、さらに、大企業、特にグローバル企業で実効税率が著しく低い法人税を見直すことを考慮すべきである。


 国民の健康なくして経済の発展はありえない。これ以上の社会保障の削減と地域医療の切り捨ては医療を崩壊へと導く。


 本会は、道民と保険医の双方が安心できる医療を守るために、活動を継続していく。


次期診療報酬改定 中医協で歯科の議論スタート 


 中医協は5月31日に総会を開き、平成30年度診療報酬改定に向けて歯科の議論を本格的に開始した。「歯科医療(その1)」が示され、歯科医療を取り巻く状況等の概況や地域包括ケアシステム構築の進捗状況︑口腔疾患の重症化予防への対応について、厚労省から報告があった。
  
 平成27年の中医協では7月22日に「歯科医療(その1)」が示されたのに比べ約2か月早い提示である。歯科医療を取り巻く現状を厚労省が説明し|楼菠餝腑吋▲轡好謄爐旅獣曚鮨篆覆垢襪Δ┐如△かりつけ歯科医機能やチーム医療の推進等の観点から医科歯科連携についてどのように考えるか患者にとって安全で安心でき、より質の高い適切な歯科医療を提供できるよう、口腔機能の評価・管理や、口腔疾患の重症化予防や生活の質に配慮した歯科医療の提供等について、どのように考えるかを論点案として提示した。
 
歯科医療を取り巻く状況


 歯科診療所の推計患者数について、ここ約10年間は増加傾向にあり、年齢階級別にみると特に75歳以上の患者の増加が著しいこと、歯科外来受療率は、学齢期以降で年齢の上昇に伴って受療率が上昇していくが、高齢者になると受療率が減少すること等が説明された。


 小児の1人平均う蝕歯数は減少傾向にある一方で、高齢者の現在歯数は増加傾向にあると説明。歯科診療医療費の動向では、14歳未満と65歳以上で増加し、全体として微増傾向で、1日当たりの点数は増加するも、レセプト1件当たりの点数は減少しているとした。
 
地域包括ケアシステム構築の推進


 平成28年度改定で導入した「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)は、今年4月時点で7031施設となり、歯科診療所の約1割を占めた。医療機関(医科・歯科)との連携は、か強診で約9割、一般の歯科診療所では約7割、介護保険施設等や在宅医療等を行う医療機関等との連携では、か強診でともに約6割を占めたのに対し、一般の歯科診療所ではそれぞれ約2割、約3割であった。


 周術期口腔機能管理の状況は、平成27年と28年を比較すると、算定医療機関は全体的に増加傾向にあり、実施しているのは全体でみると約3割だが、病院併設の歯科を中心に算定されており、300床以上の病院では約半数で実施されていた。


 平成28年度改定で新設の歯科医師連携加算(栄養サポートチーム加算)は、同加算を算定している病院のうち約3割が算定していて、病床規模でみると500床以上で、算定施設の約半数、算定回数では4割弱が算定していた。

口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応


 小児の口腔機能管理について、子供の食の問題は成長とともに解決するものと、専門家の介入が必要なものがあり、歯科医療関係者による適切な評価・対応が必要な場合があると指摘した。また、70歳以上の高齢者の口腔機能について、約4割が何らかの問題を感じているとした。

要介護高齢者における歯科的対応の必要性

 参考として示された「地域の要介護高齢者に対する悉皆研究調査」結果は「A県O町圏域の要介護高齢者416名(悉皆)に対する調査結果。義歯治療、抜歯、う蝕治療、歯周病の治療が必要な者の割合は、それぞれ、54.8、43.5、18.5、32.0%であった」とし「要介護高齢者の約7割が何らかの歯科治療を必要としていた。また、そのうち早急な対応が必要と判断された者は52名(12.5%)であった」。このことは保団連の要介護高齢者の口腔内状況調査結果とも符合し、潜在的歯科治療の需要の高さを示すものといえる。 この間厚労省から示され続けている「歯科治療の需要の将来予想(イメージ)」が実態を踏まえた想像図でないことは明らかである。
  

かかりつけ歯科医機能の評価

 平成28年度改定で導入した「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)については、今年4月時点で7031施設となり、歯科診療所の約10%である。エナメル質初期う蝕管理の算定回数は、「か強診」のみ算定可能な「エナメル質初期う蝕管理加算」の方が多いが、歯周病安定期治療については、すべての歯科医療機関が算定可能な歯周病安定期治療(機砲諒が多いことが示された (図1 )。


 また、今年秋頃の取りまとめを目指して、かかりつけ歯科医機能の評価に係るイメージ等の整理を進めること、か強診以外の歯科診療所と比較して、か強診では他医療機関及び介護施設等との連携が実施されていること等が報告された。


 しかしこれらの報告に対して、支払側から、「改定では、この間の歯科医療の取り組みの成果を踏まえて、歯周疾患の重症化予防、多職種との連携、高齢者医療の評価に重点を置くべきで『かかりつけ歯科医』のイメージの明確化ではなく、重点を医療連携において高齢者への対応を推進するのが喫緊の課題ではないか」「今更ながら『かかりつけ歯科医』のイメージを議論するのは、後付けの議論だ。評価が先で、イメージを後で議論するのは順番がおかしい」「患者が率先してか強診を選択したと思わせる資料提供がされているが、実際はたまたま通院している歯科診療所がか強診だったという感想を持っている。こうした医療機関の差別化が必要かは疑問だ。慎重に対応すべき」「か強診のうち約6割強が連携しているとの調査結果が示されているが、反対に約3割のか強診では連携できていないこと、先の連携しているか強診のうちでも地域ケア会議等への参加割合は約4割弱と、まだまだ不十分。例えば、介護施設等との連携を要件化する等の検討が必要ではないか」など、「か強診」に対する疑問が再燃する格好となった。

周術期口腔機能管理等の医科歯科連携推進

 周術期口腔機能管理の算定回数は増加しているが、その施設別の内訳をみると病院併設歯科が大部分であった (表) 。 

 

 また、都道府県別の周術期口腔機能管理計画策定料の算定状況は、保険医療機関数に対する算定医療機関数の割合が約1%〜10%と地域差がみられ、広島県が約10%と最高であった。平成27年と平成28年を比較すると、算定医療機関は全体的に増加傾向にある。


 医師と歯科医師の連携状況について、全体では「院内又は院外の歯科医師と連携して周術期口腔機能管理に関する情報提供を行っている」医師の割合は約30%であるが、病床数が多いほど周術期口腔機能管理に関する連携を行っている割合は高くなっている (図2) 。


 栄養サポートチームにおける歯科医師の参加状況では、歯科医師が栄養サポートチームに参加している施設は、病院内の歯科医師が参加している場合と院外の地域の歯科診療所の歯科医師が参加している場合をあわせて、全体で約20%であった。病床規模別にみると、病床数が多いほど栄養サポートチームに歯科医師が参加している割合が高かった。これについては、「栄養サポートチーム等が大病院で進んでいるが、中小規模の病院で進んでいないのは、病院歯科が自院にないからだ。外部の歯科診療所の参加についても、歯科診療所側に連携時の点数評価の整備が進んでいないことも課題。嚥下では、内科・神経科、歯科の連携が必要で、こうした認識の共有も必要。こうした地道な取り組みに光が当たってもいいのではないか」との発言があった。

その他の医科歯科連携


 歯周病と糖尿病の関連では、糖尿病診療ガイドライン2016(日本糖尿病学会)と糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン改訂2版(日本歯周病学会)の内容を示したうえで、糖尿病性腎症重症化予防プログラム(平成28年4月20日)の医科歯科連携の部分で、必要に応じてかかりつけ医と専門医の連携、医科歯科連携ができる体制をとること、臨床における検査値(血圧、血糖、腎機能等)を把握するに当たっては、糖尿病連携手帳等を活用し、本人ならびに連携機関と情報を共有できるようにすることが望ましいとした。


 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理については、顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016の歯科治療を行う上での注意では、骨吸収抑制薬の投与予定患者は投与前に口腔内衛生状態を改善、骨吸収抑制薬治療中は歯科医師による定期的な口腔内診査、骨吸収抑制薬投与中の侵襲的歯科治療に際しては、徹底した感染源の除去と感染予防、計画に基づいた治療、侵襲は最小限を示し、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死は医科と歯科にまたがる疾患であり、医師と歯科医師の緊密な連携で予防、治療するチーム医療体制の構築、整備が望まれるとした。平成30年度改定は、医科歯科連携がポイントになると思われる。


中医協総会開催 次期診療報酬に向けて

 中医協は5月31日、第352回総会を開催した。総会では、費用対効果評価専門部会、薬価専門部会で議論があった。また歯科医療について、次期改定に向けた意見交換があった。

■ 費用対効果評価専門部会

 費用対効果評価専門部会では、費用対効果評価を医薬品、医療機器について、2018年度診療報酬改定時に試行的導入し、その検討結果を踏まえ、制度化の検討を進めることとしている。当日は「総合的評価(アプレイザル)について」との議題で、増分費用効果比(ICER)とICER以外に考慮すべき要素や評価項目についてを中心に議論された。
 アプレイザルの過程は(1)分析結果の妥当性を科学的な観点から検証(2)倫理的、社会的影響等に関する観点からの検証、それらを踏まえた総合評価となる。
 (2)の際に考慮すべき要素として、ICERの分析結果のみでは評価が困難と考えられる要素(例えば感染症対策といった公衆衛生上の課題等)を考慮する必要があり、今後の議論として六つの要素が挙げられた。<ICERによる分析の特性を踏まえた要素>ヾ鏡症対策といった公衆衛生的観点での有用性公的医療の立場からの分析には含まれない追加的な費用D拘にわたり重症の状態が続く疾患での延命治療<その他の要素>ぢ綢惻N鼎十分に存在しない疾患の治療ゥぅ離戞璽轡腑鶚小児の疾患を対象とする治療である。
 総合評価のICERの評価軸として「支払い意思額」(一定の割合の人が1QALYを獲得するために支払うことを許容する額)を基本とし、五段階で評価することが提案された。
ただし評価が悪くとも倫理的、社会的影響等に関する観点から考慮すべき要素がある場合には「費用対効果は受け入れ可能である」とするなど一定の配慮をすることとした。

■ 薬価専門部会

 薬価専門部会では▽先発医薬品価格のうち後発品に係る保険給付額を超える部分の負担▽後発品への置き換えが進まない既収載品薬価改定特例(Z2)を中心に議論が行われた。
 第105回社会保障審議会医療保険部会で\菷品と後発品の差額を患者負担(選定療養)とする∪菷品の薬価を後発品まで引き下げ同一薬価とする二つの考え方が示され、議論では^討法⊃芭殿Α支払い側とも強く反対意見が続出した。
案については、スペインの事例のもと、長期収載品の後発品への置き換え率が激減し、長期収載品市場の成長により医療費が増加したとする資料が示され、慎重とするべきとした。二つの案で結論を得るのは難しく、これ以外の案として後発品が出た段階で先発品の価格を後発品のプラス10%や20%の薬価とするなども検討する案について厚労省は「検討する価値はある」と述べ、今後様々な検討を行っていくとした。
 後発品への置き換えが進まない先発品の薬価の特例引下げ(Z2)については、引き下げまでの期間5年は妥当なのか、新薬創出加算を認める代わりに長期収載品の薬価切り下げまでの期間を厳しくするべきとの見直しを求める声が支払側から出された

■ 歯科医療について考え方を意見交換

 次期改定に向けて、歯科医療を取り巻く状況等の概況や地域包括ケアシステム構築の進捗状況、口腔疾患の重症化予防等への対応について、厚労省から報告がされた。
 上記の厚労省からの報告を踏まえて、支払側から「患者が率先してか強診を選択したと思わせる資料提供がされているが、実際はたまたま通院している歯科診療所がか強診だったという感想を持っている。こうした医療機関の差別化が必要かは疑問だ。慎重に対応すべき」とした上で「高齢化社会への対応等での活躍を見据えて、医療・介護の連携を小規模の歯科診療所でも取り組めるような評価をしていくべきで、施設形態での差別化ではなく、う蝕から口腔機能の回復や重症化予防に取り組んでいるかによる差別化(重点化)をしていくべき」との意見があった。


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