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歯科診療報酬改定の留意点

 

 今次診療報酬改定の要点は、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進にある。
 改定項目を見ると、院内感染防止対策の実施を前提とした基本診療料(歯科初診・再診)が引き上げられたが、届出のない場合は減算となる。外来診療における基本診療料の減算は、医科の診療所にはなく歯科のみに導入されたもので、今後、診療報酬体系における減算(ペナルティ)の制度化への先駆けになりかねない。また、前改定で導入された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)については、外来環と歯援診の機能を併せ持つ体制があれば届出が可能であったが、今回の改定では、か強診、歯援診ともに体制の評価から地域連携に関する会議等への参加などの実績の評価へと施設基準の内容が大幅に引き上げられた。「か強診」の機能に新たに実績を課す項目を設けたことにより「か強診」とそれ以外の歯科診療所を区分する意図がさらに強まった。一方で、すでに「か強診」の届出をしている医療機関にとっても新たなハードルとなり、将来的には、医科で行われている「適時調査」が歯科でも行われ、締め付けが強化される可能性があり注視が必要である。
 さらに今次改定では、金属代替材料の普及の一環として、昨年12月からの下顎6番へのCAD/CAM冠の適用拡大に続き、高強度硬質レジンブリッジが導入された。予期せぬ脱離や破損などメタルフリーの安全性・安定性の向上は当然求められる。歯科医療の充実とそのための歯科医療費総枠拡大、診療報酬の抜本的引上げと改善は喫緊の課題である。それらを踏まえた上で、この機会にあらためてクラウン・ブリッジ維持管理料(補管)の在り方に関して十分な検討を行うべきではないか。
 4月から新たな診療報酬となるが、直近のものを除き施設基準の届出には猶予期間がある。地域における自院の立場、チーム診療で目指す歯科医療のスタンスをこの機会に検討し方向性を決めていく必要がある。


歯科新点数検討会

全道から900人以上が参加!

 歯科新点数検討会を3月18日に札幌、函館、旭川、帯広、北見、釧路の全道6カ所で同日開催し900人を超える会員、スタッフ、未入会員が参加した。各会場では支部役員の協力のもと、本会歯科部理事が詳細な解説を行った。さらに基本診療料の新基準に関連し院内感染防止に関する研修会を開催した。

 新点数検討会は、保団連発刊の「2018年改定の要点と解説」をもとに、今次診療報酬改定の各項目に関し詳細な解説と検討を行った。
 札幌会場では、野川本会副会長の挨拶に続き、保団連副会長として厚労省交渉を担当した田辺本会歯科部副部長が講師を務め「今次の歯科診療報酬改定は、新設の項目や施設基準が多いが、既存のものでも再編や変更が行われ非常に複雑で難しくなった」と強調。改定の項目に関しては、基本診療料への施設基準の導入、医学管理での口腔疾患の重症化予防や口腔機能低下への対応、か強診の機能評価の強化、周術期口腔機能管理の推進、医科歯科連携、処方料算定、在宅医療での単一建物の概念導入などについて、解説部分や改定前後の表に加え、通知の変更箇所まで詳細な説明を行った。
 今回の改定では、基本診療料の初・再診料に新たな施設基準が加わったため、新点数検討会の終了後に「院内感染防止に関する研修会」を会員を対象に開催し小堀理事が講師を務めた。受講者には後日修了証が送付される。
 また、改定に関する質問の他に、今次改定に対する「診療報酬改善 私のひと言カード」のアンケート( 保団連) を実施。多くの感想、意見が寄せられた。
 今回、全道6カ所で開催した新点数検討会のうち札幌会場での解説ならびに改定事例の説明に関する音声ファイルを本会のホームページに掲載した。質問への回答、今後出される疑義解釈、通知等もホームページや本紙「歯科保険診療研究」(4面)に随時掲載の予定でありご確認をお願いしたい。

 


歯科臨床講演会

歯科はがん患者にどう向き合うか

講師:北海道がんセンター口腔腫瘍外科 医長 上田 倫弘 氏


 2月24日、独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター口腔腫瘍外科医長の上田倫弘先生を講師に迎え、歯科臨床講演会を開催。会員・スタッフなど42名が参加した。
 講演に先立ち野川副会長は「今回の改定は医科歯科連携がキーワードになる。高齢化で病気を持った患者が増える中、歯科医師はどのように患者に接するべきか、今日の講演を今後の診療に役立てて欲しい」と挨拶した。
 講演では、がん患者の特徴や歯科治療時における注意点等を、実際の症例や手術のビデオなども交え説明。日本では、先進諸国に比べ口腔がんに対する国民の意識が低いため発見が遅れ、罹患者も増加傾向にある。そのため、担癌状態あるいは治療後に歯科を受診する患者も増えている。また、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)に対する見解もポジションペーパーに基づき述べ、歯科医師はこれまで以上に口腔を通して全身の健康管理に努めるべきとした。
 参加者からは「最新のがん治療の話を聴けて大変勉強になった」「BP系製剤を使用中の患者の治療の参考になった」「大変な治療に携わっている先生に感謝の気持ちです」などの感想が寄せられ大変好評であった。
 講演後には田辺歯科副部長より、平成30年診療報酬改定に関する直近の情報について説明があった。今回は医科歯科連携関連の新設項目等も多く「非常に複雑で難しい改定となっているため、ぜひ新点数検討会に参加して欲しい」とした。


細分化・複雑化でより難解に
厚労省が30年度診療報酬改定で説明会

 

 厚生労働省は3月5日、地方厚生局の職員等を対象に平成30年度診療報酬改定説明会を開催した。保険局の迫井医療課長は改定概要の説明で「人生100年時代を見据えた社会の実現、地域包括ケアシステムの構築、制度の安定・持続性の確保」の3つの基本認識を踏まえ、人口動態など社会環境の変化などへ必要な対応を図ったと改定目的を解説。続けて点数告示、通知をもとに個別項目に関する解説と質疑応答が行われた。

  今次改定で大幅な再編が行われた急性期の入院料では、現行の一般病棟7対1及び10対1と、新設される急性期一般入院基本料の届出要件の相違点や、経過措置等が説明された。急性期一般入院料1は現行の7対1相当とし、急性期一般入院料2から7は看護配置10対1とした上で重症度、医療・看護必要度に応じて細分化された。
 また、重症度、医療・看護必要度も現行の評価方法を気箸掘⊃靴燭烹庁丕辰裡釘禿合ファイルを用いた兇良床舛魏辰病院が任意で選択可能としている。なお、患者割合が細分化されたため「3ヵ月を超えない期間の1割以内の一時的な変動は変更不要」の規定は適用されないこととなった。基準を下回る場合は直ちに変更の届出が必要となるため、これまで以上に患者割合に関する病棟管理には注意を要する。また、気鉢兇倭択、変更ともに自由であるが、変更時期は4月か10月の年2回に限られることも示された。

オンラインの取扱はガイドラインで明示

 外来ではオンライン診療に関する説明に質疑が集中した。
 通信機器等の具体的な通信手段などは、月内に示される「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン」に沿い改めて事務連絡等で示すと説明した。その他の質疑では、同一医療機関の医師2名が交代で行う場合は算定不可となること、離島などに居る患者で30分以内に診察できない範囲も算定不可と説明した。対象者は介護施設など住宅形態を問わず可能であるが、あくまでも1対1の診療が必要で、1対多で診療するケースは不可としている。
 また、オンライン診療料の新設に伴い、電話等による再診も対象が絞られた。緊急性が求められ、定期的な医学管理を前提とするものは除外することが明文化された。
 オンライン診療を通じて慢性疾患等の指導・管理を行う、オンライン医学管理料は、特定疾患療養管理料等と併せて算定することが要件とされているが、在宅自己注射指導管理料などを算定するため、実際に特定疾患療養管理料を算定しない場合でも、相応の診療が行われていれば算定可能とした。さらに、在宅患者に算定するオンライン在宅管理料については、在宅時医学総合管理料の加算点数となるため、オンライン診療のみの月では算定できず、訪問診療料及び在医総管の算定とセットであることが改めて示された。

複数医療機関で訪問診療可能に

 在宅医療では、主治医の依頼を受けて他の医療機関が訪問診療を行う場合の点数が新設された。在(施)総管等を算定する医療機関の依頼を受けることが要件で、6ヵ月を限度に複数の医療機関から訪問診療を受けることが可能となる。依頼を受けた診療科でなければ診療が困難なケースなどは、6ヵ月終了後さらに6ヵ月間訪問診療を更新継続できる。皮膚科に褥瘡治療や泌尿器科に尿路管理を一時的に依頼する場合等が想定される。ただし、依頼を受けた医療機関側では継続的に治療を行っても在(施)医総管は算定できない。

抗菌薬の適正使用では一部緩和も

 抗菌薬の適正使用の推進として、小児科外来診療料及び小児かかりつけ診療料に小児抗菌薬適正使用支援加算を新設し、地域包括診療加算等の算定要件にも抗菌薬の適正使用の普及啓発が加えられた。
 1月に出された「個別改定項目」の中では「抗微生物薬適正使用の手引」に則した治療手順等として示される予定であったが、長崎県保険医協会はじめ保団連が、診療報酬による一律の強制は裁量権の侵害と重症化への危惧があるとし、会員に緊急アンケートを実施するとともに、その結果をもとに厚労省に要請交渉を行った。これを受け通知案では「手引を参考に」と一部表現の緩和が図られている。
                   ◇ ◇ ◇
 なお、4月からの施設基準に係る新規、変更の届出は、北海道厚生局に4月16日までに受理されれば4月1日から遡って適用となる。また、今次改定に伴うQ&A(事務連絡)は月末に発出予定となっている。


    

 真の医科歯科連携を

 

 平成30年度診療報酬改定は6年に一度の介護報酬との同時改定となる。団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向けて、道筋を示す実質的には最後の同時改定となる。医療・介護両制度にとって重要な節目と位置づけられている。重要課題に地域包括ケアシステムの構築のための取り組みの強化を挙げ、医療機関等の連携の推進を強調している。
 医科歯科連携の推進では、歯科診療を行う上で必要な患者の検査結果、投薬内容等の診療情報の医療機関への照会・返書など、診療情報共有が評価された。また、診療情報提供料(機砲痢峪科医療機関連携加算」の算定が、在宅歯科医療を行う歯科診療所に拡大された。さらには、周術期等口腔機能管理を推進するため対象患者の拡大等の見直しが行われた。
 超高齢社会が進展する中で、80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合は50%を超えた。厚労省の患者調査では、歯科診療所を受診した65歳以上の患者は平成2年の13・4%から平成26年には41%に増加している。有病者が歯科医療機関を受診する機会も増える。
 周術期口腔機能管理は、術後の感染予防や在院日数の減少につながる。周術期口腔機能管理を実施する医療機関は年々増加傾向にあるものの、施設別内訳では大部分が病院併設歯科であった。医科医療機関が周術期口腔機能管理を実施していない理由として、受け入れ態勢の問題や周術期口腔機能管理の内容と歯科の実施医療機関が分からないなどが挙げられている。
 昨年12月に本会が実施した歯科保険診療に関するアンケートでは、医科歯科連携について、連携する医科医療機関、病院歯科が「ある」は、いずれも65・1%であったが、周術期口腔機能管理を行ったことが「ある」は22%にとどまる。
 制度上では医科歯科連携の推進が行われつつあるが、連携が十分とは言えない。地域包括ケアシステムを構築する上で、求められる歯科医療のため、医科歯科連携を充実したものにしていく必要がある。


よろずトーク 骨粗鬆症に対する運動の功罪 

 2月 10日、女性部会は北海道大学大学院保健科学研究院教授の遠山晴一氏を講師に迎え「骨粗鬆症に対する運動の功罪」と題して「よろずトーク」を開催し、女性医師・歯科医師 13 名が参加した。

 学習会では、骨粗鬆症の予防と治療は、ロコモティブシンドロームの観点から女性にとって非常に重要であるとし、骨のリモデリング等の基礎的な知識から、予防可能な危険因子まで詳しく解説した。

 自らがトライアスロン競技のアスリートであることから、自身の経験や日常のトレーニングについてユーモアを交えながら紹介した。さらにスポーツ整形外科医師の立場から、女性アスリートの三主徴として、エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症を挙げ「栄養面はもちろん、運動量調節も必要」と締めくくった。

 学習会終了後に講師も交えた懇親会が行われ、講師への質問や医師・歯科医師の垣根を越えた交流が行われ、穏やかな雰囲気で終了した。


公開医政講演会 今後の日本の医療制度を外観

 公開医政講演会を2月 17日、エムスリー株式会社 m3.com 編集部編集長橋本佳子氏を講師に迎え「爍横娃械鞠〞医療の行方を占う〜2018年度診療報酬改定を踏まえて」をテーマに開催し、道内各地より多数が参加した。

 佐々木広報部長の司会のもと、はじめに加藤会長より「医療制度という大きな流れの中、我々保険医は『2025年問題』さらにはその先の『2035年問題』を見据え対応していかなければならない。本日の講演がその参考になれば幸いである」と挨拶があった。

 引き続き行われた講演で橋本氏は、昨今の医療制度改革の背景や遠隔診療をはじめとする今次診療報酬改定について概説。さらに、今回のトリプル改定から見える日本の医療制度の将来を見通すための着眼点等について解説した。

 講演後に行われた質疑応答では、参加者から「遠隔診療について、自由診療も含めて議論を進めるとしているが具体的には」「医療界ではかかりつけ医制度を推進するとしているが、患者のフリーアクセスを阻害するのでは」「現在の医療制度を存続させていくために必要な変革や改善点は」等の質問が寄せられ、大変盛況だった。


歯科診療報酬改定答申概略 窮状打開には程遠い

 歯科診療報酬本体の改定率はプラスであったが、歯科の答申をみても、歯科医院経営の厳しい現状を打開し、抜本的に改善するためには程遠い内容と言わざるを得ない。前号での医科の診療報酬改定答申の概略に続き、本号では歯科部分の概略を述べる。

 今改定の詳細な内容は、今後の告示や通知を待たなければ分からないが、現時点での主な特徴を記載する。

 地域包括ケアシステムの構築を推進

  かかりつけ歯科医機能の評価として、か強診の施設基準の見直しで「う蝕や歯周病の重症化予防に関する継続的な管理実績」「歯科訪問診療実績について、かかりつけ歯科医と歯科支援診との連携実績を選択可能な要件の一つとして」「地域連携に関する会議等への参加実績」を要件に追加し、関連要件の見直しが行われた。また医科歯科連携を推進する観点から、慢性疾患を有する患者について治療を行う上で必要な検査値や処方内容等の診療情報を歯科医療機関と医科医療機関との間で共有した場合の評価として診療情報連携共有料が新設された。 質の高い在宅医療の確保では歯科訪問診療料の引き上げ、歯科衛生士を帯同して訪問診療を行った場合の評価の充実が行われた。

  安心・安全で納得のできる質の高い医療

  歯科外来診療において、日常的に唾液や血液に触れる環境下で多くの器具器材を用いて診療を行っているという特徴をふま安心・安全で納得のできる質の高い医療え、歯科医療機関における院内感染防止対策を推進するため、歯科初診料及び歯科再診料の引き上げを行うとともに施設基準が新設された。さらにライフステージに応じた口腔機能管理の推進として、歯管の加算に口腔機能の発達不全を有する小児には小児口腔機能管理料加算、老化等に伴い口腔機能の低下を来している高齢者には口腔機能管理加算が新設された。 新規医療技術の保険導入では、口腔機能評価に関する検査として、咀嚼能力検査等三項目が新設された。 また先進医療からの保険導入としては金属代替材料としてグラスファイバーで補強された高強度のコンポジットレジンを用いた3ユニットブリッジ治療を評価し高強度硬質レジンブリッジが適応となった。

 その他の個別改定項目

 床副子に関する技術の見直しが行われ、口腔内装置1、2、3、睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置、舌接触補助床、術後即時顎補綴装置と分類が新たに変更された。が新たに変更された。 歯冠修復、欠損補綴においては、充填の準用で行われていたレジンインレー修復が非金属歯冠修復としてレジンインレー、硬質レジンジャケット冠として再編された。またポンティックについては金属裏装ポンティックが廃止となり、新たにレジン前装ポンティックが前歯、小臼歯、大臼歯に分類された。 さらに以前より問題となっていた特定薬剤料と麻酔薬剤の算定方法( 40 円ルール)が見直しされ、他の薬剤料と同じ算定方法となった。

 現時点での問題点

 改定率が、医院経営の改善には程遠い低さであることは言うまでもない。個別の問題として今改定では、継続的管理の実施実績とともに、歯援診や医科、他業種との連携の実績を施設基準に導入し、地域包括ケアシステムへの積極的な参加を要件に盛り込む等施設基準の強化が行われ、いわゆるはしご外しが行われる可能性がある。院内感染防止対策が盛り込まれたことは評価したいが、初・再診料に包括という形での、低評価で、施設基準を伴い導入されたことは問題である。施設基準未届出の医療機関は基本診療料が減算となるが、 患者のニーズに応えるために、すべての歯科医療機関が実効ある感染防止対策が行えるようにすべきであり、減算すべきではない。


新専門医荒海への船出


 4月から新専門医制度が始まる。新専門医制度は、従来各学会単位で整備した専門医制度が、認定基準等が統一されておらずわかりにくいとされ、専門医の質の一層の向上を目的に検討が始まった。そして、平成25年に「在り方検討会」の最終報告書が出されたが、その中で研修実施のハードルが高く、医師偏在をさらに助長するのではないか等、地域医療の現場から新専門医制度による医療崩壊の懸念の声が上がった。
 また、当初は原則としてすべての医師が何らかの基本領域の専門医を取得する方向で議論が進んだため、将来的には専門医の「ラベル」で国による医師の管理がなされるのではないかとの危惧が広がった。この時点で新専門医制度の議論は、当初の目的であったわかりにくさの解消や専門医の質の向上とはかけ離れたものだった。
 本会をはじめ医療団体等の疑問の声を受け、日本専門医機構の理事が刷新された上で、制度の1年延期が決まった。専門医新整備指針では、専門医取得は義務ではないことが明示され、地域の中核病院等も研修の中心であり、指導医のいない施設でも研修を行うことを認めるなど、大きな問題点は一見解決に向かったようにも見えた。
 ところが、新整備指針の発表後、厚労相は異例の談話を出し、機構や関連学会に対して応募状況や専攻医の配置状況の厚労省への報告を求めたうえで領域ごとの確認を行うとした。また、都道府県が機構に対して意見できる仕組みの法制化の動きもあり看過できない。専門医制度は医師のプロフェッショナルオートノミーに基づく制度であるべきで、国や行政による管理を許してはいけない。
 今年4月から研修を行う専攻医の一次登録では、外科の専攻医が5人以下が14県、そのうち3県は1人だった。このような状況が続けば地域医療の崩壊は必至である。また、機構からのデータの開示がほとんどなされていないことにも批判が出ており、透明性が求められる。
 多難の船出となるが、今後も注視が必要だ。


医療改善に程遠い内容

―診療報酬改定答申―

 中医協は2月7日、診療報酬改定答申書を加藤厚労大臣に提出した。新設項目や加点項目が散見されるものの、全体としてはマイナス改定を前提として急性期医療費を抑制し、在宅医療へ強引に誘導するものである。安心・安全な医療を提供するには程遠く、経営悪化も危惧される。

 2018年度の診療報酬改定率は本体がプラス0・55%(医科0・63、歯科0・69、調剤0・19%)だったものの、薬価と材料価格がそれぞれマイナス1・65%、0・09%で、全体で1・19%のマイナス改定となった。薬価の引き下げ分はまたしても本体に充当されなかった。
 領域ごとの代表的項目を記載する。

入院医療

 一般病棟入院基本料の再編・統合が行われる。現行の「7:1」「10:1」の入院基本料を、急性期一般入院基本料として7段階に細分化する。医療・看護必要度に応じた点数設定が行われるが、最も高い「入院料1」でも現行と同じ点数に据え置かれ、かつ医療・看護必要度が25%から30%に引き上げられ、非常にハードルが高いものとなる。必要度を満たせなければ低い入院料を選択せざるを得ない。そもそも、2016年から17年にかけての1年間で「7:1」を算定している病院は20病院、8200床減少している。今後の急性期の医療費削減の意図が明確に読み取れる。
 現行の「13:1」「15:1」の入院基本料は地域一般入院基本料として再編され、3段階に分類される。

外来・在宅医療

 病院は入院と専門外来、診療所はかかりつけ医機能を強化した外来・訪問診療という役割分担を一層明確にしている。
 「紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担(初診5千円以上、再診2千5百円以上)」は、現行の特定機能病院および500床以上の地域医療支援病院から、400床以上の地域医療支援病院に対象が広げられる。これにより、262病院から410病院に増加するが、この定額負担による外来患者数の抑制や医師労働軽減効果は極めて限定的とされており、単なる患者負担の増加とアクセス制限を強いるだけで終わる危惧がある。
 かかりつけ医機能の評価として「機能強化加算(80点)」が新設される。初診時において、専門機関への受診の要否の判断等の医療機能を評価する点数で、地域包括診療加算等の届け出が算定要件となる。また、地域包括診療料も若干の引き上げと、医師の配置基準の緩和(常勤医師2名以上→入 院 医 療外来・在宅医療常勤換算2名以上の医師、うち1名以上が常勤)が行われる。診療所初診料と再診料はいずれも据え置かれた。
 在宅患者が複数の疾病を抱えている状況を踏まえ、他の医療機関の依頼を受けて訪問診療を行った場合の評価も新設された。医療と介護の連携を推進するとして、在宅ターミナルケア加算も増点される。

透析医療

 腹膜透析や腎移植の推進に資する評価として、それらの取り組みの実績があれば、導入期加算に加点がある。しかし、慢性維持透析については時間数にかかわらずいずれも減点となっている。施設の効率性や包括された医薬品の実勢価格を踏まえた評価の見直しとしているが、80年代以降一貫して包括化を含む引き下げが行われてきた。また、透析液の水質確保に関する評価として、透析機器安全委員会を設置し、その責任者として専任医師又は専任の臨床工学技士1名以上の配置が義務付けられた。

遠隔医療の評価

 未来投資会議等からの圧力が強かった遠隔診療が新たな項目として評価された。オンライン診療料(70点、1月につき)およびオンライン医学管理料(100点、1月につき)の新設である。要件・基準として、初診から6月の間は同一医師が対面診療を行っている、連続する3月は算定できない、緊急時に診察可能な体制を有している等、一定の歯止めを設けているとは言えるが、今後、オンライン診療拡大の圧力は一層高まることが想定さる。対面診療の原則を守り、安易な拡大を許さない運動が必要である。また、オンライン在宅管理料や遠隔モニタリング加算も新設された。
 ICTを利用した死亡診断における連携として、死亡診断加算(在宅患者訪問診療料)の算定要件に「(前略)ICTを利用した看護師との連携による死亡診断を行い、死亡診断加算を算定する場合は、以下の要件を満たしていること(後略)」が追加され、ICTを用いた死亡診断の診療報酬上の取り扱いが明確化された。

チーム医療の推進等推進等

 医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和が行われる。医師については小児科・産婦人科・精神科・リハ科・麻酔科などの領域について、週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算が可能となる。緩和ケア診療加算、栄養サポートチーム加算
等について、専従要件が緩和される。また、医師事務作業補助体制加算の見直しが行われ、若干加点される。

   ◇ ◇ ◇

 介護報酬改定はわずか0・54%の引き上げで、介護職員の処遇改善や介護サービスの向上には全く不十分なものである。診療報酬もマイナス改定で、6年に一度の同時改定は非常に厳しい結果となった。診療報酬は、98年を基準として10%も引き下げられたままであり、
今後の改善運動の継続が重要だ。
 本会では3月18日(日)に歯科(札幌ほか5会場)、25日(日)に医科(札幌)の新点数検討会を開催する。ぜひ、多数の先生が参加され、今後の経営に役立ていただきたい

 


歯科診療報酬改定への反映

 次期診療報酬改定の概要が明らかになりつつある。

 歯科においては、か強診の施設基準の一つである訪問診療要件の緩和と施設基準要件の選択制、院内感染対策への評価、診療情報提供料における医科医療機関への「照会」の評価、特定薬剤と麻酔薬剤の薬剤料算定に係る「 40 円ルール」の見直し、機械的歯面清掃の対象拡大等が行われる予定となっている。

 これらは、これまでの本会の主張が厚労省でも一定理解され、歯科診療報酬へと反映されてきたものであると確信している。か強診施設基準の訪問診療要件や、医科への照会は、現場の実態に即したものとなるよう、また、昭和 47 年から続いてきた薬剤料の「 40 円ルール」については、医科の「 15 円ルール」との格差是正で求めてきたものである。

 前回の改定では、歯管の文書提供の別途評価、ブリッジ支台の第一小臼歯前装冠の導入、咬合挙上副子の削合調整時の評価等が行われた。これらは、本会が毎年行っている「歯科保険診療に関するアンケート」においても、多くの会員から改善要望が出されてきたものであった。次期改定を含め、ここ数回の診療報酬改定の内容を見ると、本会の主張が数多く採り入れられたものとなっている。

 超高齢社会がますます進展する中で、8020の達成率は 50 %を超え、歯科のあり方も以前とは変化してきている。地域包括ケアシステムを構築する上で、求められる歯科医療や地域連携とは何かを考えていく必要があるだろう。医療改善には学術的なエビデンスが求められているが、医療現場のデータ「生の声」の集積こそが一番のエビデンスである。今後も、国民が地域で安心して暮らしていけるような歯科医療提供体制と、それに基づく診療報酬体系を求めていくために医療現場の声を伝えていく。

 次期診療報酬改定について、本会の歯科新点数検討会が、3月 18 日に全道6ヶ所で同日開催される。ぜひご参集の上、日々の診療に役立てていただければ幸いである


タスクシフティングの推進を

 医師の働き方改革で緊急取組を要請

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」は1月 15 日、これまでの議論の中間とりまとめとして「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」と「中間的な論点整理」の骨子案を示した。医師法で定める応召義務のあり方や宿日直許可基準等について議論を進め、2018年度末に最終報告をとりまとめる。

 同検討会は昨年8月、医師の長時間労働の是正に向け、応召義務の特殊性を踏まえ対応することを目的に設置されたもの。早期の対応が求められる「緊急的な取組」の骨子案では、出退勤時間の的確な把握や36協定の点検、産業医等の活用等が示されている。特にタスクシフティング(業務の移管)の推進では、初療時の予診、薬の説明や服薬の指導、静脈採血・静脈注射、診断書等の代行入力等、実行可能なものから他職種への分担を進め医師の負担を減らすよう求めている。また、看護師に特定行為研修の受講を促し、一定の医療行為も担わせたい方針だ。

 今後の検討課題をまとめた「中間的な論点整理」では、政府の「働き方改革実行計画」を進める上で、医師の特殊性が問われる医師法第 19条(応召義務)との関係、研究業務との切り分け等医師の労働者性の問題等を議論、整理していくとした。また、この中でもタスクシフティング・タスクシェアリングの推進が掲げられており、看護師や事務職等医師以外が可能な業務の明確化や、複数主治医制の導入等も提案されている。

 両骨子案の中では、タスクシフティングについて、特に大学病院での取り組みが遅れていると指摘し、要因分析と推進方策を検討するよう求めている。こうした中、昨年末から複数の大学病院で 36協定の不備、時間外労働の賃金未払い等、長時間労働を伴う不適切な労務管理について労働基準監督署の是正勧告を受けており、安倍首相も今国会で「働き方改革」を重要テーマと位置づける等政府の本気度がうかがえる。労働法制の強化や診療報酬上での誘導等、今後の政策によっては民間医療機関でも対応を迫られてくる。


ダブル改定の骨格明らかに

 診療報酬・介護報酬3月に大臣告示

 4月1日からの診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、改定の具体項目が明らかになった。1月24日の中医協総会では「個別改定項目」が、26日の社会保障審議会介護給付費分科会では平成30年度介護報酬改定の諮問、了承が行われた。「地域包括ケアシステムの推進」を共通の視点に据え、かかりつけ機能の強化や医療機能の分化、地域連携強化へのインセンティブを強める。診療報酬は3月上旬に、介護報酬は3月中旬までに大臣告示が予定されている。

 外来 かかりつけ機能の強化とICTの活用促進

  外来では地域包括診療加算が、在宅患者への24時間対応の要件により1と2に区分される。1は24時間の「往診等の体制」で、2は24時間「連絡体制」と評価を分けた。さらに、同加算等、かかりつけ医機能に係る診療報酬の届出をしている医療機関では、専門医療機関での受診の要否を判断した場合、初診料に新たに機能強化加算が設けられる。かかりつけ医の普及に向け評価を高めた。

 ICTの活用では、オンライン診療料、オンライン医学管理料が新設される。一定期間を経過した慢性疾患患者にオンライン診療と対面診療を組み合わせて行うことが要件となる。在宅患者にも在宅時医学総合管理料にオンライン在宅管理料が新設される。これらに伴い、従来の電話再診については定期的なものは除外され、病状の急変等に限られる扱いとなる。

 在宅医療では、在宅時(施設入居時)医学総合管理料を月2回算定する患者は一定の重症者に限定されることとなった。

 美容目的の使用がメディアで報道された皮膚保湿剤の算定は、治療との関連、医師の使用判断が要件に加えられる。

  入院 急性期病床を再編し段階的評価へ

 入院医療では、7対1と10対1の一般病棟入院基本料が統合し、急性期一般入院基本料に再編される。看護配置10対1を基本とし、患者の看護必要度割合に応じて段階的に点数を引き上げ、看護配置も厚くする仕組みだ。最も高い評価は現行の7対1相当の見込みとなる。

 データ提出が算定要件となる入院料が拡大される。対象は、回復期リハビリテーション病棟入院料1、2、3(3は200床未満)、療養病床入院料(200床以上)、10対1一般病棟入院料とされ、導入に際し一定の経過措置期間が設けられる見込みだ。

  介護報酬改定

 介護報酬は「地域包括ケアの推進」「多様な人材の確保と生産性の向上」等4つの視点から改定項目が検討されている。

 医療系サービスの個別の改定項目では、居宅療養管理指導が現行の「同一建物居住者」と「同一建物居住者以外」の区分から、診療報酬の在宅時医学総合管理料の人数区分に準拠となる(1人、2〜9人、10 人以上)。なお、看護師による居宅療養管理指導は廃止となる。訪問看護では集合住宅減算が拡大される。同一・隣接敷地内の建物で利用者が50人以上の場合は現行の10%からさらに減算幅が拡大する。

 施設サービスでは介護療養病床の転換施設として、介護医療院が新設される。2つの類型に区分され、人員配置は儀燭病院における療養機能強化型介護療養病床に準拠、況燭楼綮佞般剤師は老人保健施設に準拠する。また、転換の支援策として、療養病床からの転換の場合は、大規模修繕まで療養室(病室)の床面積、廊下幅の基準が緩和される。加えて平成33年3月までの措置として、転換後のサービスの変更内容等を丁寧に説明すること等を評価した加算が、転換後1年間に 限って算定できる。介護医療院が行う居宅サービスについては、ショートステイ、通所リハビリ、訪問リハビリの3種類とし、訪問看護、居宅療養管理指導は提供できない扱いとなる。

 4月からの同時改定に伴い、本会では会員対象に改定内容の解説テキストを無償配布し、3月18日には歯科(札幌ほか5会場)、同25日には医科(札幌)が新点数検討会の開催を予定している。


新春のごあいさつ
 
新春のごあいさつ

一般社団法人 北海道保険医会
  会長 加藤 康夫
 

 平成30年の新春にあたり、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
 北海道保険医会の会員の皆様には、健やかに新年をお迎えになられたことと、お慶びを申し上げます。
 昨年9月、安倍首相は大義ないまま、臨時国会の冒頭に衆議院を解散し、総選挙に踏み切りました。「森友・加計疑惑隠し」の批判が起こる一方、これに対峙する野党側も迷走を極め、内閣支持率が上がらない中、与党圧勝という珍現象が起こり「安倍一強」体制が継続する結果に終わりました。さらに、この選挙では、医療・介護等の重要な社会保障問題も明確な争点とはなりませんでした。選挙後直ちに、75歳以上の医療費について、原則2割負担化への方針が報道されるなど、むしろ改悪路線は歩みを加速させております。高齢者の医療費負担はここ数年の相次ぐ負担増で既に限界に達しており、経済格差、貧困問題は深刻化しております。政府の進める、国民負担増に頼りきった「全世代型」の社会保障改革を勢いづかせないよう、強く反対の声を上げていく必要があります。
 今年は6年に一度の診療報酬・介護報酬同時改定の年にあたり、障害者福祉サービスを加え「トリプル改定」が行われます。政府は昨年12月、次期診療報酬の改定率について診療報酬本体部分を、0・55%引き上げることを決定しました。しかし、11月に公表された医療経済実態調査では、一般病院の赤字幅はマイナス4・2%と過去3番目の経営悪化の実態が明らかになっております。低医療費政策を脱した訳ではなく、厳しい環境に変わりありません。安定した医業経営が保障され、良質な医療が提供できるよう、真のプラス改定を求めて粘り強く活動し続けていきます。
 また、今年は第7次地域医療計画と第7期介護保険事業計画が同時改定されます。次期の計画では地域全体で切れ目なく必要な医療が提供される「地域完結型医療」が提唱されておりますが、実際に地域医療にどのような影響を与えるのか予断を許しません。入院患者の追い出しや在宅難民・介護難民を生み出さず、地域の特性に応じた患者本位の医療サービスが確保されるよう、積極的に意見を発信していく所存です。
 私ども医療者は憲法で保障された「健康で暮らす権利」を直接支える重要な責務を担っております。将来にわたり、地域住民が安心して暮らせる医療制度の確立、保険医療の充実・改善を目指し精力的に活動を進めていきますので、変わらぬご支援をよろしくお願い致します。
 また、本年が会員の皆様方にとって新たな飛躍の年になりますようご祈念申し上げ、新年のご挨拶と致します。



会員忘年会 

マジックショーで会場を笑顔に

 

 会員忘年会を12月2日に開催し、会員と家族合わせて65人が参加した。
 石塚事業部長の司会のもと、加藤会長より「来年度は診療報酬をはじめ、色々な改定が目白押しであるが、本日は新しい年に向けて英気を養っていただきたい」と挨拶があり、開宴となった。途中「緑の妖精 マジシャンやまちゃん」によるマジックショーが催され、会場を巻き込んだマジックに子どもも大人も楽した、抽選会では、豪華商品が当たる度に会場から大きな歓声があがり、終始和やかな雰囲気の中、歓談と会食を楽しんだ。
 最後に伊藤副会長から「本会は今後も会員のために色々な活動を進める予定であり、ご協力をお願いしたい」と挨拶があり会は終了した。
 参加者からは「こんなに楽しい会なら、来年は孫も連れて参加したい」など、大変好評であり、名残惜しそうに家路についた。


秋季歯科スタッフセミナー

実践を交え防犯を学ぶ

 

 11月25日、女性スタッフを対象とした「防犯セミナー」を開催した。
 講師に綜合警備保障ALSOKのスタッフを迎え「女性を対象とした犯罪から自分を守るためにできること」をテーマに、危機意識を高め、対策を講じることの重要性を学んだ。
 前半は、女性が被害に遭いやすい犯罪について、道内で起きた事例を説明。最近増えているSNSが絡んだ犯罪や、夜道で狙われやすい状況などの注意点を学んだ。また、万が一クリニックに不審者が侵入した時には、立ち向かうのではなく、まず安全に逃げることが大切であると力説した。
 後半は、二人一組となり、簡単にできる対処法を実際に学んだ。参加者からは「楽しんで学ぶことができた」などの声が寄せられた。

 

 

 


医療者不在の「遠隔診療」に懸念

 

 次年度診療報酬改定に向けた議論が大詰めを迎えている。外来診療での目玉の一つは「遠隔診療」の評価に関する議論である。今回の動きは医療界の要望ではなく、規制緩和と評価拡大を求める遠隔ビジネス業者と成長戦略の一環と位置付ける政府の思惑が一致したものと言わざるを得ない。
 そもそも医師法20条は、無診察での医師の治療を禁止している。遠隔診療に関して、国は97年厚生省健康政策局通知で、離島・へき地など対面困難、病状が安定している患者などを対象に、対面診療を補完する形で限定的に認めてきた。しかし厚労省は、平成27年6月に閣議決定された「日本再興戦略2015」を受け、従来の方針を大幅に変更する通知を示した。つまり、対象地域や対象疾患は限定されず、患者の心身への有用な情報が得られれば電子メールなどでも医師法違反ではないとした。このあと、ベンチャー企業を中心に遠隔医療関連ビジネスが活発化することになる。
 安倍首相は本年4月、政府の「未来投資会議」で「診療報酬上の評価を行うとともに、遠隔診療の推進により、かかりつけ医による日常的な健康指導や疾病管理の効率性を飛躍的に向上させていく」と宣言した。
 一方、厚労省も7月、再度「遠隔診療」の規制緩和についての周知・明確化に関する厚労省医政局長通知を発出し、すでに自由診療での「禁煙外来」が始まっている。さらに、ICTを利用した「遠隔看取り」も検討されており、まさに政権の意向を忖度した方針転換である。
 近年ICTが進歩する中、離島やへき地などの通院困難な環境や状態にある患者への活用は今後必要になると思われる。しかし、現在国が進めようとしている「遠隔診療」は、医療費削減を目的とした、公的医療保険制度を利用した新たな営利産業の推進である。
 医療の質、安全性、信頼性のエビデンスが担保されないままの、野放図な「遠隔診療」の普及はわが国の医療を変質させる危険性があり、議論の行方に十分な監視が必要と考える。


2017医療フォーラム

社会保障のあるべき姿展望

 11月25日「私たちの老後は本当に安心?〜社会保障・医療保険を中心に」をメインテーマに医療フォーラムを札幌市で開催。当日は道内各地より64名が参加した。14回目となる今回は︑鹿児島大学大学院司法政策研究科教授の伊藤周平氏が特別講演を行い、その後のパネルディスカッションでは本会の橋本副会長と戸倉理事がパネリストとして参加。日本の社会保障と医療保険制度等についてフロアを交えて活発な議論が行われた(講演要旨は別掲)。

 はじめに、主催者を代表し挨拶に立った野川副会長は「超高齢社会を迎えた我が国において、社会保障の充実に国民の関心は向いている。こうした中、安倍政権は「社会保障改革」の名のもとに社会保障費の抑制策を押し進めている。特に医療・介護においては、患者負担増の施策が次々に実施されている現状がある。本日は、社会保障のあるべき姿や今後についてともに考えたい」と述べた。

特別講演

 引き続き、伊藤氏が「社会保障・医療保険の理念と今後の展望−国民健康保険の都道府県単位化と財源問題を中心に」をテーマに特別講演を行った。
 伊藤氏は、安倍政権の社会保障改革は、日本国憲法25条1項に規定する生存権を空洞化する政策であり、これにより貧困や格差が拡大することは必至。このような政策は、貧困層の若者を自衛隊に志願させる米国のような経済的徴兵制を促し、安全保障関連法の成立とともに、日本を戦争のできる国にする基盤づくりとなっている。こうした中、2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け、医療・介護分野の改悪が加速している現状や、給付抑制が進む介護保険制度改革と国民健康保険改革を中心に、安倍政権の社会保障改革の動向等について考察。憲法に基づいたあるべき「税制改革」「社会保険改革」の方向を提示し、その実現に向けた課題等について解説した。

医療制度改革に活発な議論

 その後のパネルディスカッションでは、橋本副会長が「医療政策と都道府県の役割」と題し、都道府県において医療費が「適正」となるように計画を策定させ、地域差解消のため県単位でのレセプトデータの迅速な提供が行われることや、都道府県別診療報酬点数が設定される危険性等について触れ、政府が推し進める医療費抑制策の狙いと問題点について解説した。続いて、戸倉理事は「口から始める健康づくり」をテーマに、8020運動・歯と全身の健康に関する実態調査等のデータを示し、歯科医療と全身の健康との関係や医療費抑制につながる可能性について述べるとともに、長寿社会における歯科医療の役割、保険と自費の関係等について説明した。
 また、フロアからは「今までは各市町村で特別会計からの繰り入れを行う等で保険料を抑えてきたが、都道府県単位になると国・都道府県・市町村・被保険者の保険料負担割合はどうなるのか」「国保の広域化による道と各市町村の関係性は」「諸外国で実施されている有効と思われる介護サービスは」等、多岐にわたる質問や意見・感想が寄せられ、活発な議論が行われた。
 最後に、司会の佐々木理事は、われわれにとって身近である社会保障・医療保険制度は大変難しいが重要な問題である。本会は、今後もこのような活動を通じ多くの国民の理解を深めるための取り組みを続けていくと述べ、医療フォーラムを終了した。

 


 

2017 医療フォーラム[特別講演要旨]

 

 

社会保障・医療保険の理念と今後の展望

−国民健康保険の都道府県単位化と財源問題を中心に

鹿児島大学大学院司法政策研究科

教 授 伊藤 周平 氏

 

 

 

問題の所在−安倍政権のもとで進む社会保障削減

 安倍政権は、社会保障改革の名のもと、社会保障費の抑制や削減(以下「社会保障削減」という)を進めている。2017年度予算でも、社会保障費の自然増部分が1400億円(概算要求時点6400億円→5000億円)削減されている。
 こうした中、2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け、医療・介護分野を中心に改革(悪)が加速している。ここでは、給付抑制が進む介護保険制度改革と国民健康保険改革を中心に、安倍政権の社会保障改革の動向とゆくえを考察し、憲法に基づいた税制改革・社会保険改革の方向を提示し、その実現に向けた課題を展望する。

介護保険制度改革の動向とゆくえ

 介護保険については、介護保険自体が社会福祉改革の先駆けと位置づけられ、それをモデルとして社会福祉法制の再編が行われてきた経緯があり、また、介護分野では、医療分野の日本医師会のような強力な圧力団体がなく、当事者団体も脆弱なことから、制度の見直しのたびに、徹底した給付抑制と負担増が進められてきた。
 とくに、2015年の介護報酬改定は、全体で2・27%のマイナス改定、介護職員処遇改善加算の拡充分(プラス1・65%)などを除けば、基本報酬は4・48%のマイナス改定で、過去最大の引き下げ幅となった。介護職員の処遇改善加算の増額がなされたが、基本報酬の引き下げで、多くの介護事業者は軒並み減収となり運営が苦しくなり、平均月収が全産業の平均よりも約10万円も低い介護職員の賃金がさらに低下し、介護現場の深刻な人手不足を加速させ、2016年の介護事業者の倒産は108件と過去最多を記録した(東京商工リサーチ調べ)。 介護保険は、介護保険料と介護給付費が直接に結びつく仕組みであり、制度が理念として掲げている「介護の社会化」が進んで、介護保険施設や高齢者のサービス利用が増え、また、介護職員の待遇を改善し、人員配置基準を手厚くして、安心できる介護を保障するため介護報酬を引き上げると、介護給付費が増大し、介護保険料の引き上げにつながる仕組みになっている。介護報酬単価の引上げは、1割の利用者負担の増大にもはねかえる。しかし、現在の介護保険の第1号被保険者の保険料は、定額保険料を基本とし、低所得の高齢者ほど負担が重いうえに、月額1万5000円以上の年金受給者から年金天引きで保険料を徴収する仕組みで(特別徴収)、保険料の引き上げには限界がある。結果として、給付抑制が政策的にとられやすく、現にこれまでもとられてきた。介護保険のジレンマである。

国民健康保険の都道府県単位化の問題

 医療保険では、2018年度から、国民健康保険の都道府県単位化が実施される。
 しかし、そもそも、国民健康保険財政の赤字問題は、加入者に高齢者や低所得者、無職者が集中していることによる構造的問題であり、保険規模を大きくしたところで、赤字が解消されるわけではない。国民健康保険の都道府県単位化の本当の目的は、市町村の法定外繰入のような財政補填のための公費支出を廃止し、都道府県ごとに保険料負担と医療費が直結する仕組み、つまり介護保険や後期高齢者医療制度と同様の仕組みをつくりあげることにある。
 かりに、法律上、都道府県の税支出による財政補填が可能になっても、各都道府県は、その域内に医療提供水準などが異なる多くの市町村を抱えているため、支出に対する政治的合意を得ることは難しく、都道府県としては医療費抑制を図らざるを得ない。
 そして、医療費抑制を図るため、都道府県は医療費適正化計画とともに地域医療構想を策定することとされており、病床削減などについての都道府県知事の権限を強化し医療供給体制をコントロールする仕組みが構築されている。
 国民健康保険の都道府県単位化は、保険料の引き上げを抑制するため、いわば都道府県間で医療費削減を競わせる仕組みを構築することを意図しているといえる。

税制改革と社会保険改革の方向

 一方、社会保障財源については、現在のように、その主要財源を消費税に求めるかぎり、貧困や格差の拡大に対処するために、社会保障支出の増大が不可避となり消費税を増税し続けなければならなくなる。増税ができなければ、社会保障を削減し、貧困と格差の拡大を放置するかしかない。消費税は、社会保障の財源として最もふさわしくないのである。
 現在の消費税中心の税制の歪みを是正し、税の所得再分配機能を強化するには、憲法の原則にもとづいた税制改革が必要である。具体的には、所得税を基幹税として再構築し、大企業や富裕層への課税を強化すべきである。ついで、法人税については、法人税率の引き下げをやめると同時に、大企業の優遇税制を見直し、課税ベースを拡大する必要がある。
 また、日本は社会保障給付費の9割以上を社会保険方式で実施している社会保険中心の国であり、社会保障財源の中では社会保険料収入の占める比重が大きい。実際に、社会保険料の負担は、先進諸国ではトップレベルとなっており、個人の所得税負担より社会保険料負担の方が大きいのは、主要国中では日本だけである。しかも、社会保険料は、給付を受けるための対価とみなされているため、所得の低い人や所得がない人にも保険料を負担させる仕組みをとることが多く、社会保険料は、低所得の人ほど負担が重く逆進性が強い。
 こうした逆進性の強い社会保険改革が必要となる。具体的には、社会保険料について減免措置の拡大、他の国に比べて社会保険料負担に占める割合が低い事業主負担と公費負担を大幅に増大させるべきである。介護保障については税方式への転換も課題といえる。

今後の課題

 安倍政権の社会保障改革に対峙し、どのような対案を提示していくべきか。
 まず、医療提供体制改革に対しては、地域医療の実態を無視した、病床の機械的な削減をさせないため、自治体レベルで、地域医療構想に医療機関や住民の意見を反映させること、医療関係者が中心となって、どのような医療需要があり、どの程度の病床が必要かを具体的に提言していく運動が必要であろう。そもそも、稼働していない病床が多数存在しているのは、病床自体が過剰というより、必要な医師・看護師が確保されないことに原因があるとの指摘もある。まずは、医師・看護師の確保を図る施策が求められる。
 将来的な医療保険の制度設計については、当面は、現在の国民健康保険、被用者保険の並列状態を維持しつつ、老人保健制度や国民健康保険への公費投入を増やしていくべきと考える。まずは減らしつづけてきた国民健康保険の医療費国庫負担を元の水準、少なくとも、1984年改正前の40%にもどすべきだろう。
 また、70歳以上の高齢者と乳幼児については医療費の無料化を、国レベルで実現する必要がある。そして、将来的には、政府を保険者とし、すべての国民を被保険者とする医療保険制度を構築し、収入のない人や生活保護基準以下の低所得者については保険料を免除し、国際的にも水準の低い公費負担と事業主負担を増大させることで10割給付の医療保障(つまり、すべての被保険者について医療費負担なし)を実現すべきであろう。


第7回 歯科市民集会

口から幸せになろう!

保険で良い歯科医療を目指して

 11月18日「口から幸せになろう!」をテーマに、第7回歯科市民集会を札幌市で開催し、一般市民や医療関係者等114人が参加した。基調講演には北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系小児歯科学分野教授の齊藤正人氏を招き、札幌歯科技工士会、北海道歯科衛生士会の協力のもと、定期的な検診による予防の重要性、歯科技工士の現状と口腔ケアの大切さを伝えると共に、保険で良い歯科医療を求める本会の活動を紹介した。

  石塚理事の司会のもと、主催者を代表して野川副会長が「今日は、お口の健康を良い状態で維持することの大切さについて知っていただき、皆様のお口の健康についての認識を高めていただきたい」と挨拶した。 基調講演では、齊藤正人教授が「お口の健康をめざして〜よくあるお口の疑問・質問にお答えします」と題し、むし歯や歯周病、口臭やインフルエンザ等との関わり等について、一般市民にわかりやすく丁寧に講演した。歯ぐきみがき、糸ようじや歯間ブラシ等を使ったケアの重要性、予防の大切さについて説明。むし歯や歯周病には自覚症状のないものもあり、早期発見・早期治療につながる定期的な検診の重要性を説いた。

 続いて、札幌歯科技工士会の道垣内(どがいと)茂樹会長が「歯科技工士の仕事 今〜未来」をテーマに、歯科技工士の仕事や現状について説明した。歯科技工士の業務や冠、ブリッジ、義歯の作業工程を写真を交えて詳しく紹介し、歯科技工士に対する理解を求めた。また、別室では技工士会役員による歯科技工物の展示も行われ、多くの市民が説明に熱心に耳を傾けた。

 後半は、北海道歯科衛生士会札幌支部役員の松岡円氏が「お口の健康を守ろう!〜セルフケアのポイントと健口体操」をテーマに講演した。口腔内の健康を保つために重要な「唾液腺マッサージ体操」や、口呼吸を鼻呼吸に改善しアレルギー改善やインフルエンザ予防に役立つ「あいうべ体操」を紹介。また、歯間ブラシの使い方や、入れ歯のお手入れポイントについても解説した。さらに、歯科衛生士会マスコットの「歯ットくん」人形を使って、参加者全員で「むすんでひらいて・健口体操」を楽しく行った。

 引き続き、本会の今上理事が、保険医の立場から「保険で良い歯科医療のはなし」をテーマに講演した。わが国の国民皆保険制度に関して、医療保険制度の歴史的経緯、医科と異なる歯科の「保険診療と自費診療」の問題点、国民医療費に占める歯科医療費の割合、政府の医療費抑制政策による歯科医療の厳しい現状や問題点を説明。また、保険で良い歯科医療を求める本会の活動を紹介し、窓口負担の軽減、保険の適応範囲の拡充を求める署名活動への協力を呼びかけた。

 最後に、三浦理事が「保険で良い歯科医療の実現を目指し、今後も皆さんにこのような機会を提供していきたい。今日の講演会をきっかけに口から幸せになりましょう」と会を締めくくった。

 参加者には歯科関連グッズが無料配布され「予防の大切さを感じ、定期的に検診に行こうと思った」「技工士さん の仕事がこんなに大変だとは思わなかった」「衛生士さんにもっと気軽に相談できる場があってほしい」等の感想が寄せられた。


 文化講演会 音楽の魅力に酔いしれる 

 文化講演会を 11月11日、札幌市内で開催し、当日は道内各地より136名が参加した。

 石塚理事の進行のもと、第一部ではみべ音楽院院長の三部安紀子氏が「音楽に生きる」と題して講演。三部氏は海外生活の実体験を紹介しながら、音楽への思い、音楽が持つ魅力や可能性について熱く語った。さらに、来年10月にオープンする札幌文化芸術劇場について説明し「我々は北海道の若き世代のために、この劇場を市民と共に育てていかなければならない」と協力を呼びかけた。

 第二部では、ソプラノ佐々木アンリ氏とピアノ新堀聡子氏によるミニコンサートを開催。ビゼー作曲 オペラ「カルメン」より「ハバネラ」やプッチーニ作曲 オペラ「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」など6曲が披露され、佐々木氏の美しい歌声と圧倒的な歌唱力に聴衆は酔いしれた。

 参加者からは「三部先生の音楽への情熱、芸術の大切さや必要性を感じるお話で大変良かった」「三部先生が携わっている劇場の完成が待ち遠しく感じられる、大変素晴らしいお話とコンサートだった。」「こんな近い距離でオペラを聞けて感動した」などの声が多数寄せられ、大変好評だった


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