[私たちの主張] 社会保障の基本理念へ立ち返りを

投稿日時 2018-06-20 | カテゴリ: 私たちの主張

時論

 

社会保障の基本理念へ立ち返りを


 引きも切らず社会保障費抑制の声が押し寄せる。6月中に閣議決定予定の「骨太の方針2018」は、過去3年間を上回る厳しい社会保障歳出抑制と患者負担を強いるものになるのは確実だ。骨子案には受診時定額負担の導入、地域別診療報酬の活用等、実に数多くの事項が並ぶことになる。
 これは一時的な財政上の辻褄合わせではなく、背景に長年にわたる政府の社会保障の理念破壊がある。
 戦後の1948年に社会保障制度審議会が設置され、50年に「社会保障制度に関する勧告」を提出したが、この中で「憲法25条により、生活保障の責任が国家にある」と明確に述べている。しかし、70年代後半から日本型福祉社会論が登場し、社会保障の柱をなすのは自己と家族そして企業であると喧伝される。80年代後半からは、企業は正規雇用を減少させ、社会保障に対する企業責任を縮小させていく。95年同審議会は「社会保障体制の再構築に関する勧告」で、社会保障制度を「個々人の社会的連帯によって成立する」と変質させた。そして2001年に同審議会は廃止され、社会保障審議会と名前を変えることになる。その後の「社会保障と税の一体改革」の進行に伴い、社会保障の公的文書には常に自助、共助が優先され、公助は最後になることが定式化されてきた。
 法令も同様である。例えば「高齢者の医療の確保に関する法律」は、第1条(目的)「…医療費の適正化を推進するための計画の作成…」、2条(基本的理念)「国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努める…」、3条(国の責務)「…医療に要する費用の適正化を図る…」としている。目的、理念としてあまりにも発想が貧しく、憲法25条との乖離は途方もなく大きい。他の社会保障関係の法律条文も同様だ。
 官僚は前例踏襲を旨とする。今後も同様の法令の連続が危惧される。医療福祉関係者の教育への影響も大きい。負の連鎖を防ぐには幅広い分野で社会保障の理念の再構築が必要だ。

 






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