会長あいさつ
私たちの主張
医療運動
報道関連
共済制度
入会案内
リンク
ご意見・お問い合わせ

北海道保険医会事務局

〒060−0042
札幌市中央区大通西6丁目
6番地 北海道医師会館3階
TEL(011)231−6281
FAX(011)231−6283

 アクセスマップ


Adobe Flash Playerはこちらからダウンロードしていただけます


Adobe Readerはこちらからダウンロードいただけます

アクセスカウンタ

今日 : 33
昨日 : 104
今週 : 517
今月 : 2093
総計 : 1083118
平均 : 339
活動の紹介
活動の紹介 : [2017医療フォーラム] 社会保障のあるべき姿展望

2017医療フォーラム

社会保障のあるべき姿展望

 11月25日「私たちの老後は本当に安心?〜社会保障・医療保険を中心に」をメインテーマに医療フォーラムを札幌市で開催。当日は道内各地より64名が参加した。14回目となる今回は︑鹿児島大学大学院司法政策研究科教授の伊藤周平氏が特別講演を行い、その後のパネルディスカッションでは本会の橋本副会長と戸倉理事がパネリストとして参加。日本の社会保障と医療保険制度等についてフロアを交えて活発な議論が行われた(講演要旨は別掲)。

 はじめに、主催者を代表し挨拶に立った野川副会長は「超高齢社会を迎えた我が国において、社会保障の充実に国民の関心は向いている。こうした中、安倍政権は「社会保障改革」の名のもとに社会保障費の抑制策を押し進めている。特に医療・介護においては、患者負担増の施策が次々に実施されている現状がある。本日は、社会保障のあるべき姿や今後についてともに考えたい」と述べた。

特別講演

 引き続き、伊藤氏が「社会保障・医療保険の理念と今後の展望−国民健康保険の都道府県単位化と財源問題を中心に」をテーマに特別講演を行った。
 伊藤氏は、安倍政権の社会保障改革は、日本国憲法25条1項に規定する生存権を空洞化する政策であり、これにより貧困や格差が拡大することは必至。このような政策は、貧困層の若者を自衛隊に志願させる米国のような経済的徴兵制を促し、安全保障関連法の成立とともに、日本を戦争のできる国にする基盤づくりとなっている。こうした中、2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け、医療・介護分野の改悪が加速している現状や、給付抑制が進む介護保険制度改革と国民健康保険改革を中心に、安倍政権の社会保障改革の動向等について考察。憲法に基づいたあるべき「税制改革」「社会保険改革」の方向を提示し、その実現に向けた課題等について解説した。

医療制度改革に活発な議論

 その後のパネルディスカッションでは、橋本副会長が「医療政策と都道府県の役割」と題し、都道府県において医療費が「適正」となるように計画を策定させ、地域差解消のため県単位でのレセプトデータの迅速な提供が行われることや、都道府県別診療報酬点数が設定される危険性等について触れ、政府が推し進める医療費抑制策の狙いと問題点について解説した。続いて、戸倉理事は「口から始める健康づくり」をテーマに、8020運動・歯と全身の健康に関する実態調査等のデータを示し、歯科医療と全身の健康との関係や医療費抑制につながる可能性について述べるとともに、長寿社会における歯科医療の役割、保険と自費の関係等について説明した。
 また、フロアからは「今までは各市町村で特別会計からの繰り入れを行う等で保険料を抑えてきたが、都道府県単位になると国・都道府県・市町村・被保険者の保険料負担割合はどうなるのか」「国保の広域化による道と各市町村の関係性は」「諸外国で実施されている有効と思われる介護サービスは」等、多岐にわたる質問や意見・感想が寄せられ、活発な議論が行われた。
 最後に、司会の佐々木理事は、われわれにとって身近である社会保障・医療保険制度は大変難しいが重要な問題である。本会は、今後もこのような活動を通じ多くの国民の理解を深めるための取り組みを続けていくと述べ、医療フォーラムを終了した。

 


 

2017 医療フォーラム[特別講演要旨]

 

 

社会保障・医療保険の理念と今後の展望

−国民健康保険の都道府県単位化と財源問題を中心に

鹿児島大学大学院司法政策研究科

教 授 伊藤 周平 氏

 

 

 

問題の所在−安倍政権のもとで進む社会保障削減

 安倍政権は、社会保障改革の名のもと、社会保障費の抑制や削減(以下「社会保障削減」という)を進めている。2017年度予算でも、社会保障費の自然増部分が1400億円(概算要求時点6400億円→5000億円)削減されている。
 こうした中、2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け、医療・介護分野を中心に改革(悪)が加速している。ここでは、給付抑制が進む介護保険制度改革と国民健康保険改革を中心に、安倍政権の社会保障改革の動向とゆくえを考察し、憲法に基づいた税制改革・社会保険改革の方向を提示し、その実現に向けた課題を展望する。

介護保険制度改革の動向とゆくえ

 介護保険については、介護保険自体が社会福祉改革の先駆けと位置づけられ、それをモデルとして社会福祉法制の再編が行われてきた経緯があり、また、介護分野では、医療分野の日本医師会のような強力な圧力団体がなく、当事者団体も脆弱なことから、制度の見直しのたびに、徹底した給付抑制と負担増が進められてきた。
 とくに、2015年の介護報酬改定は、全体で2・27%のマイナス改定、介護職員処遇改善加算の拡充分(プラス1・65%)などを除けば、基本報酬は4・48%のマイナス改定で、過去最大の引き下げ幅となった。介護職員の処遇改善加算の増額がなされたが、基本報酬の引き下げで、多くの介護事業者は軒並み減収となり運営が苦しくなり、平均月収が全産業の平均よりも約10万円も低い介護職員の賃金がさらに低下し、介護現場の深刻な人手不足を加速させ、2016年の介護事業者の倒産は108件と過去最多を記録した(東京商工リサーチ調べ)。 介護保険は、介護保険料と介護給付費が直接に結びつく仕組みであり、制度が理念として掲げている「介護の社会化」が進んで、介護保険施設や高齢者のサービス利用が増え、また、介護職員の待遇を改善し、人員配置基準を手厚くして、安心できる介護を保障するため介護報酬を引き上げると、介護給付費が増大し、介護保険料の引き上げにつながる仕組みになっている。介護報酬単価の引上げは、1割の利用者負担の増大にもはねかえる。しかし、現在の介護保険の第1号被保険者の保険料は、定額保険料を基本とし、低所得の高齢者ほど負担が重いうえに、月額1万5000円以上の年金受給者から年金天引きで保険料を徴収する仕組みで(特別徴収)、保険料の引き上げには限界がある。結果として、給付抑制が政策的にとられやすく、現にこれまでもとられてきた。介護保険のジレンマである。

国民健康保険の都道府県単位化の問題

 医療保険では、2018年度から、国民健康保険の都道府県単位化が実施される。
 しかし、そもそも、国民健康保険財政の赤字問題は、加入者に高齢者や低所得者、無職者が集中していることによる構造的問題であり、保険規模を大きくしたところで、赤字が解消されるわけではない。国民健康保険の都道府県単位化の本当の目的は、市町村の法定外繰入のような財政補填のための公費支出を廃止し、都道府県ごとに保険料負担と医療費が直結する仕組み、つまり介護保険や後期高齢者医療制度と同様の仕組みをつくりあげることにある。
 かりに、法律上、都道府県の税支出による財政補填が可能になっても、各都道府県は、その域内に医療提供水準などが異なる多くの市町村を抱えているため、支出に対する政治的合意を得ることは難しく、都道府県としては医療費抑制を図らざるを得ない。
 そして、医療費抑制を図るため、都道府県は医療費適正化計画とともに地域医療構想を策定することとされており、病床削減などについての都道府県知事の権限を強化し医療供給体制をコントロールする仕組みが構築されている。
 国民健康保険の都道府県単位化は、保険料の引き上げを抑制するため、いわば都道府県間で医療費削減を競わせる仕組みを構築することを意図しているといえる。

税制改革と社会保険改革の方向

 一方、社会保障財源については、現在のように、その主要財源を消費税に求めるかぎり、貧困や格差の拡大に対処するために、社会保障支出の増大が不可避となり消費税を増税し続けなければならなくなる。増税ができなければ、社会保障を削減し、貧困と格差の拡大を放置するかしかない。消費税は、社会保障の財源として最もふさわしくないのである。
 現在の消費税中心の税制の歪みを是正し、税の所得再分配機能を強化するには、憲法の原則にもとづいた税制改革が必要である。具体的には、所得税を基幹税として再構築し、大企業や富裕層への課税を強化すべきである。ついで、法人税については、法人税率の引き下げをやめると同時に、大企業の優遇税制を見直し、課税ベースを拡大する必要がある。
 また、日本は社会保障給付費の9割以上を社会保険方式で実施している社会保険中心の国であり、社会保障財源の中では社会保険料収入の占める比重が大きい。実際に、社会保険料の負担は、先進諸国ではトップレベルとなっており、個人の所得税負担より社会保険料負担の方が大きいのは、主要国中では日本だけである。しかも、社会保険料は、給付を受けるための対価とみなされているため、所得の低い人や所得がない人にも保険料を負担させる仕組みをとることが多く、社会保険料は、低所得の人ほど負担が重く逆進性が強い。
 こうした逆進性の強い社会保険改革が必要となる。具体的には、社会保険料について減免措置の拡大、他の国に比べて社会保険料負担に占める割合が低い事業主負担と公費負担を大幅に増大させるべきである。介護保障については税方式への転換も課題といえる。

今後の課題

 安倍政権の社会保障改革に対峙し、どのような対案を提示していくべきか。
 まず、医療提供体制改革に対しては、地域医療の実態を無視した、病床の機械的な削減をさせないため、自治体レベルで、地域医療構想に医療機関や住民の意見を反映させること、医療関係者が中心となって、どのような医療需要があり、どの程度の病床が必要かを具体的に提言していく運動が必要であろう。そもそも、稼働していない病床が多数存在しているのは、病床自体が過剰というより、必要な医師・看護師が確保されないことに原因があるとの指摘もある。まずは、医師・看護師の確保を図る施策が求められる。
 将来的な医療保険の制度設計については、当面は、現在の国民健康保険、被用者保険の並列状態を維持しつつ、老人保健制度や国民健康保険への公費投入を増やしていくべきと考える。まずは減らしつづけてきた国民健康保険の医療費国庫負担を元の水準、少なくとも、1984年改正前の40%にもどすべきだろう。
 また、70歳以上の高齢者と乳幼児については医療費の無料化を、国レベルで実現する必要がある。そして、将来的には、政府を保険者とし、すべての国民を被保険者とする医療保険制度を構築し、収入のない人や生活保護基準以下の低所得者については保険料を免除し、国際的にも水準の低い公費負担と事業主負担を増大させることで10割給付の医療保障(つまり、すべての被保険者について医療費負担なし)を実現すべきであろう。


印刷用ページ