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活動の紹介
活動の紹介 : [事業・報告]  2016公開医政講演会

公開医政講演会 
金子 勝氏が講演
アベノミクスの問題点が浮き彫りに

 公開医政講演会を3月19日、TBS系「サンデーモーニング」でお馴染みの慶応義塾大学経済学部教授の金子 勝氏を講師に迎え、「アベノミクスは社会保障を破壊する」をテーマに開催し、道内各地より多数が参加した。

 
 当日は、立花政策部長の司会のもと、はじめに小笠原会長より「今回、金子教授にアベノミクスの色々な問題点を浮き彫りにしていただく予定である。この機会に社会保障について皆さんと考えてみたい」との挨拶があった。
引き続き講演が行われ、金子氏は「アベノミクスはこれまで何一つ目標が達成されていない」と最初に言及し、安倍政権が推し進める政策の問題点を解説した。

 アベノミクスについて、「『3本の矢』が検証されないまま、安倍首相は『新3本の矢』を打ち出した」と説明。「日本銀行が2%の物価上昇を保障するとしていたが、3年が経ち、大手企業の内部留保は年率8%伸びて300兆円を超えた。しかし、実質賃金は低下し続け、家計消費は低迷している。所得が上昇しなければ消費は増えない」と、アベノミクスの失敗を指摘した。

 社会保障については、「削減方法について、これまでと違うのは地域包括ケアと称して、財源や権限を渡さないまま、地方に負担だけを押し付けようとしている。このままでは家族と地方自治体に負担が全部押し付けられるだけである」と説明した。

 最後に、「混合診療とTPPが結びつき、保険財源の健全化のために患者負担を増やして診療報酬を削減していくことは医療崩壊に繋がることは明らかだ。いま医療現場で何が起きているのか、医療提供者側から問題提起をしないと新しいシステムは生まれてこない」と述べた。

 参加者からは、「日本経済をタイムリーに解説され、大変面白かった」「非常に刺激的な内容ばかりで、アベノミクスの破綻が良くわかった」などの声が寄せられ、大変好評だった。

 


 【講演要旨】

「アベノミクスは社会保障を破壊する」
      

 慶應義塾大学経済学部

     教授 金子 勝 氏

 今の安倍政権は「息を吐くように嘘をつく」という手法を使っている。良い政策を言って実現できそうもないと次の噓をつく。メディアはそれを追いかけていくので、前の噓が検証されないまま忘れ去られていく。安倍政権の「3本の矢」がどうなったかなど、今は誰も言わない。原発問題もTPPも検証する間もなく、ころころと言う事を変えていく。

 その中で、最大のタブーはアベノミクスである。2012年12月の総選挙も2013年7月の参議院選挙も2014年12月の衆議院選挙も、全て経済最優先の「アベノミクス」でやってきた。ところが、何一つ目標が到達されていない。この3年間で大手企業の内部留保は年率8%伸びて300兆円を超えたが、実質賃金は低下し続け、家計消費は低迷している。所得が上昇しなければ消費は増えず、そこで「新3本の矢」を打ち出してきた。

 そもそも、「新3本の矢」の「名目GDP600兆円」を2020年までに到達しようとすると、年率で名目GDPが3・1%の成長を続けなければ達成できない。ところが、バブル崩壊以降、3%を越えたことはただの一度もなく、奇跡的な事が起こらないと達成しない。そして、「新3本の矢」がどうも無理だとなると「新々3本の矢」が出てくると思う。
さらに、「新3本の矢」で上げられている「名目GDP600兆円」「介護離職ゼロ」「希望出生率1・8」は「矢」ではなく「的」である。当初の「3本の矢」は、「異次元の金融緩和」、「機動的財政政策」、「成長戦略」で、「的」が「物価上昇率2%」「名目GDPが3%以上」だったが、今度は「的」が「矢」になっており、「矢」が見当たらない。法人税減税くらいしかないというのが今の状態である。


会保障に回らない消費税増税
 「聖域なき財政改革」と称して、財政諮問会議では社会保障の自然増の抑制に踏み込んできた。消費税が5%から8%に引き上げられたときも、結局は社会保障には5分の1しか回さなかった。安倍政権は、「消費税を上げなければ社会保障の財源は出ない」、そして次に「消費税を上げれば景気が悪くなる」、さらに「法人税減税と公共事業投資で景気を良くしなければいけない」と言うが、法人税を減税しても内部留保に回るだけで、公共投資も波及効果がない。結果的に景気は良くならないので財源が足りなくなり、「増税しよう」と言う。こうした永遠の噓のサイクルに国民が気付かない。国民全体で振込み詐欺にあっているようなものだ。

 社会保障問題も、厚労省は健康保険について、医療や介護のニーズをどう満たすかなど一切考えていない。お役所の目的は健康保険財政をどう健全化できるかの一点であり、彼らにとって健康保険財政を抑える手法は簡単である。医療費が高いのは、実は高齢化自体ではなく、高齢者の終末期に先端医療が入ってくるためであり、この部分に先端医療が入らないよう、混合診療で切り離してしまえば保険財政は悪くならない。もう一つは診療報酬を抑える、さらに保険料や一部負担など患者負担を増やす政策で健全化を図ろうとしている。

 

財源も権限も渡さない日本の地域包括ケアシステム
 根本的に医療や介護のシステムを変えるとなると、相当ドラスティックな改革をやらなければいけない。ヨーロッパがEU統合の際に国の財政赤字に上限が設けられたため、地方にどんどん財源を移譲し、地方にイニシアティブを委ねた。その結果、生まれたのが地域包括ケアである。かかりつけ医やケースワーカーが患者一人ひとりに寄り添って、医療と介護が連携してネットワークを形成し、効率的にサポートする体制を整えた。2000年代の初めにヨーロッパ地方自治憲章というのが決まり、地方でできることは地方で行う、出来ないことは上の自治体で行う。

 例えば、市町村レベルで出来ない大規模な介護施設は都道府県レベルで行うなど、下から業務を積み上げるといった考え方を大胆に推し進めた。ところが、日本は財源も権限も一切地方に渡さない。その結果何が起きているかというと、地方包括ケアという名目で、単に地方に負担を押し付けている。昨年の医療・介護総合確保推進法によって、改正介護保険法で要介護3以上は特養の入所が制限された。そして、介護の場を在宅に移すと言いながら介護報酬を削っている。しかも要支援者の訪問介護などの介護予防事業は市町村に丸投げしている。その結果、地方の町村では対応できないため、都市部に高齢者が集まってくるということが起きている。

 その一方で、病院のベッド数を2020年までに最大20万床削減し、在宅への追い出しを始めている。在宅で診るとなると24時間対応でプライマリケアや緩和ケアが必要であるが、追い出した患者をどこで受けるかははっきりと示していない。しかも介護報酬を下げておいて、介護職員の賃金を上げろと言っており、大企業の内部留保を増やす一方で、小さな介護事業所の内部留保を吐き出させるようなことをしている。

 

医療崩壊を招くTPPと成長戦略
 医療問題では、さらにTPPが追い討ちをかけることになる。TPPでは先ず医薬品の特許期間が延長され、バイオデータに8年間の保護期間が設けられる。アメリカで強い産業というと医薬品、医療機器、医療保険の3大産業をサポートしていくことによって、時間をかけて日本の国民皆保険制度を空洞化させていくといった道筋が考えられるが、安倍政権は地域医療や救急医療が壊されていく混合診療に自ら踏み出そうとしている。

 成長戦略では、民間病院をどんどん増やす。日本の場合、これまで民間の大規模病院が準公立的な働きをして、地域医療などを支えてきた側面があるが、今後は救急医療など一切やらないで、高い報酬が得られる保険外診療しか扱わない儲け主義の民間病院が増える。保険外診療で病院経営が潤えば、小泉政権時のように診療報酬がガタガタに下げられてしまい、標準的な医療に携わる医師が生き残れなくなり、お金の儲かる病院に医師が集っていく一方で、地域の中核病院が無くなっていき、医療崩壊が進んでいくことになる。

 このようなヨーロッパ型に似せた、実態としてはぜんぜん違う地域包括ケアみたいな仕組みをつくり、地方と家族に負担を担わせる。さらに、医療保険支出を抑えるために混合診療の導入とTPPを結びついた形で進んでいくと、医療も介護も崩壊する以外にない。直ぐにそうなるわけではないが、少しずつ段階的に進められていく。重い病気に罹ったときに診てもらえる中核病院が消えることは地域医療の崩壊の始まりである。アベノミクスは絶対にうまくいかない。うまくいかないと、必ずしわ寄せが社会保障にやってくる。こうした事態に備えて、医療現場で今何が起きているのか、医療提供者側が反論や対抗策を短期的なものから長期的なものまで組み立てて準備しておかないと、新しいシステムを生まれず、社会保障は保てなくなるであろう。                     


 


 

 


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